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硝子の葦 桜木紫乃

これまでに読んだ著者の作品に比べると、かなりミステリー色の強い本書だが、やはり際立っているのは、北海道の風土が作品全体を覆っていて、すとーりーに独特の重さを感じさせるという点だ。東北の人々の粘り強さとはまた違う、人々の自然との折り合いのつけ方のようなものが、文章から立ち上ってくる。自然の厳しさに耐えるというのではなく、ある種のあきらめのような感覚と、そこからくる突き抜けたような明るさ、達観が垣間見えるような気がする。最後のどんでん返しには驚かされるが、そこだけに気をとられてはいけない、ミステリーとして読むにはもったいないという感じすらしてしまう作品だ。(「硝子の葦」 桜木紫乃、新潮文庫)

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