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宇宙論と神 池内了

本書は、各宗教的宇宙観から現在の最先端の宇宙観までを外観してくれる啓蒙書だ。宇宙の構造の科学的な探求にあたって、宗教がどのように探求の熱意の源泉になったり妨げになったりしたのかが判るし、新しい宇宙観を考える人が、「神様はどこにいるのか」「神様がそのような宇宙にした意図は何か」を意識せざるを得なかったというところが大変面白い。特に面白かったのは「人間原理の宇宙論」のくだりだ。宇宙の原則ともいうべき、「重力の強さ」「次元の数」「光の速度」といったものが、どうしてその数字になっているのか、そこに神の意志はあるのかという問いかけに対する1つの考え方を今の宇宙論は提示してくれるという。要するにそれらの値がその数字でない宇宙の可能性は無限にあるのだが、その数字(の組み合わせ)でないと観察者たる人間が「発生」しないのだという考え方だ。そういう意味ではこれらの数字は偶然ではなく必然と言うことになる。いわば究極の無神論をみたような気がする。最高に面白い1冊だった。(「宇宙論と神」 池内了、集英社新書)

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