みなさん、こんにちは。
前回のA子さんについて考えてみよう。
高LDLコレステロール血症を有する60歳代の日本人女性において、10年間における心血管イベントのリスクは約3%である。
スタチンを内服すると約30%程度「相対」リスクは低下する。
ここで、
3%×30%≒1%
より、絶対リスクは1%低下する。
10年間での絶対リスク低下(absolute risk reduction: ARR)は1%であることから、この逆数を取り、10年間でのNNTは100人となる。
100人を10年間治療して、1人のイベントを減少させる予測となるのだ。
多くの外来患者をフォローしている医師でも、100人を10年間治療するというのはかなりの診療負担である。
スタチンの安全性の検討も重要。
横紋筋融解などの筋障害や耐糖能障害は有名である。
有害事象のリスクを示す指標としてはNNH (number needed to harm)がある。
これは、副作用が1例出るときにその薬剤を何人に処方したかを示すものである。
過去の研究からの統合データを用いて、スタチンの副作用に関するNNH (number needed to harm)を分析している独立系研究グループのアップデート情報(The NNT)によると、筋障害では10、耐糖能障害は100程度と分析している。
長期内服による認知症のリスクもいまだ未解決である(逆に認知症リスクを低下させる作用があるかもしれないが)。
BMJの編集長のFiona Godlee氏も、過去施行された全ての臨床試験での副作用情報の公開を呼びかけている。
目の前の患者背景を考え、NNTとNNHを考慮した医療は、理想的な個別化医療である。
これは、個別の患者に対しての臨床的洞察で行うものである。
添付文書に書かれてはいない。
製薬会社は「相対」リスク低下の数値をチラシなどによく使用する。
30%のイベントリスク低下です、というように。
もちろんそれは正しい。
しかし、担当医が行うべき作業は、これを絶対リスクに解釈し、個別医療を行うことなのだ。
写真:与那原海岸
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