燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医Dr徳田安春の最新医学情報集

腹部のフィジカル:特別手技編

2015-06-26 | 養生訓

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今回は、先日医学書院で行った「フィジカルセミナー」での腹部特別手技編を公開します。時間切れで、説明出なかった項目です。腹部の診察で、参考になれば幸いです。

           20秒間Valsalvaテスト

腹痛患者で部位が特定困難なときに、20秒間「息こらえ」を行うと、患者さんが腹痛部位を自己認識できることがある。

           Obturator sign:閉鎖筋徴候

股関節と膝関節をそれぞれ90度に屈曲位とし、股関節を内旋させて、痛みの増強をみる。陽性であれば(虫垂炎などで)閉鎖筋に炎症がおきていることを示唆する。

           Iliopsoas test of Cope (reverse psoas sign):コープ先生が提唱した逆腸腰筋徴候

側臥位として股関節を伸展させて、痛みの増強をみる。陽性であれば(虫垂炎などで)腸腰筋に炎症がおきていることを示唆する。コープ先生が提唱した逆腸腰筋徴候は、仰臥位で股関節を自然に屈曲外旋位をとっていること。

           Hernia detection by induced guarding:故意の筋性防御によるヘルニア検出法

患者に筋性防御を行ってもらうと、鼡径や瘢痕ヘルニアなどが観察できること。

           Succussion splash:振水音

腹水や胃内大量液体貯留では、立位で体を揺さぶると、「ピチャピチャ」振水音が、耳で直接聴かれることがある。

           Hannington-Kiff sign of obturator hernia

閉鎖筋反射は消失しているが、膝蓋腱反射は保たれていること。閉鎖孔付近の病変(ヘルニアなど)を示唆する。

           Howship-Romberg sign of obturator hernia

閉鎖神経刺激で大腿内側の痛みやしびれを訴えること。閉鎖孔ヘルニアを示唆する。

           Bulging flanks

両側腹部の膨隆。腹水を示唆する。

           Flank dullness with periumbilical hyperresonance

打診にて、臍部に鼓音、側腹部に濁音を認める。腹水を示唆する。

           Fluid wave

一側の側腹部を打診し、反対の側腹部で波動を感じる。腹水を示唆する。皮下脂肪の揺れを抑えるために、患者さんまたは助手に腹部正中線上に手刀を立ててもらうとよい。

           Shifting dullness

移動する濁音界。重力の影響で腹水が移動することで濁音界が移動するもの。

           Puddle sign:パドル徴候

四つん這い姿勢を3分間行い、側腹部を打診しながら、腹部最下面に聴診器を当てて聴く。その聴診器を徐々に反対側の側腹部へ移動させ、聴診での音の大きさの変化を聴く。腹水があると、水面レベルから急に音が大きくなる。

           Guarino sign of 3-min upright auscultatory percussion:グアリノ徴候

3分間立位として、恥骨結合に聴診器を当てながら、臍の上部付近から指で軽く打診する音を聴く。腹水があると、水面レベルで音が急に大きくなる。

           Blaxland sign of massive ovarian cyst:ブラックス徴候

巨大卵巣腫瘍があると、その表面に定規を押し当てて大動脈の拍動を感じることができる。

           Litten sign of diaphragmatic movement:リッテン徴候

胸壁が痩せていると、横隔膜の呼吸性の動きが波を打つように観察できるもの。

           Poking or Hooking palpation of liver

肝臓の触診法の種類。ポーキング法は、両手を揃えて指先を肝臓(頭部方向)に向けて触診する方法。フッキング法は、両手の指のPIP関節を屈曲させて、肝臓から尾部方向にめけて吸気に合わせて触診する方法。

           Feeling tumors like mountains on a plateau

肝臓の触診で、山脈の頂上を触れている感触のこと。肝臓の腫瘍を示唆。

           Feeling cirrhosis like rivers on a plain

肝臓の触診で、草原のなかの川河を触れている感触のこと。肝硬変を示唆。

           Expansive systolic hepatic pulsations

心臓の収縮に合わせて、肝臓の拍動を触れること。三尖弁閉鎖不全症を示唆。

           Percussion tenderness of hepatitis/abscess

打診による肝臓の圧痛。急性肝炎や肝膿瘍を示唆する。

           Percussion dullness of liver size by hard note

右の鎖骨中線上の強い打診による肝臓の濁音界の幅。体格にもよるが、正常は8~12センチ。

           Williamson soft percussion method of liver size

軽い打診による肝臓の濁音界の幅。ただし、正常値の基準が不明確。

           Scratch test:スクラッチテスト

剣状突起に聴診器を当てて聴診しながら、右の下腹部から徐々に頭部方向へ移動しながら、指で軽く「こする」。肝臓の下縁になると、こすった音が急に大きくなる。肥満などで打診音のみで肝臓の下面が特定しにくいときに有用。

           Palpation of spleen tip

脾臓の触診。脾臓の先端を触れるときは脾臓腫大を示唆する。

           Castell method (splenic percussion sign):キャステル法(脾臓打診徴候)

左前腋窩線のライン上で最下肋間スペースを打診する。濁音のときは脾腫を示唆する。深吸気させて打診するとよい。

           Nixon method:ニクソン法

右側臥位で、左の肋骨弓線の中点から垂直方向に打診する。8センチ以内に濁音界があれば陽性で、脾腫を示唆する。

           Kehr sign of splenic rupture:カール徴候

脾臓破裂で左肩に関連痛をきたすもの。

           Murphy sign:マーフィー徴候

肝下面から肝臓に向かって揃えた指先を差し込みながら吸気をしてもらい、深吸気が制限すれば陽性。急性胆嚢炎を示唆する。

           Moynihan thumb modification of Murphy sign:モイニハン変法

左手の指を横方向に揃えて肝臓の表面に当て、第一指(親指)を外転させて肝臓下面に差し込む。上記のように、吸気をしてもらい、深吸気が制限すれば陽性。急性胆嚢炎を示唆する。

           Courvoisier sign:クルボアジェ徴候

無痛性の胆嚢腫大を触れるもの。膵頭部付近の腫瘍による閉塞性黄疸を示唆。

           Bimanual palpation of kidneys:双手触診

左手で背部から腎臓部分も持ち上げて、腹部前方から右手で触診しながら、患者さんに深呼吸してもらう。腫瘤や圧痛、腫大の有無を診る。

           Punch tenderness:パンチ圧痛

CVA部をパンチの尺側部分でやさしく巧打する。圧痛があれば腎盂腎炎などを示唆する。

           Thumb pressure test:親指圧痛

CVA部を親指でゆっくりと押して圧痛をみる。腎臓ではなく、筋肉に病変があることを示唆。

           Mallet-Guy sign:マレット・ガイ徴候

右側臥位で、心窩部~左上腹部を触診し圧痛を診る。右側臥位では、膵臓以外の臓器が右側腹部に移動するので、膵臓の診察が可能となる。陽性であれば、急性膵炎を示唆。

 今回は以上です、話変わって、女子W杯サッカーは決勝トーナメント初戦のオランダ戦では辛くも2-1で勝ちました、次はベスト4をかけて強豪オーストラリアとの対戦です、なでしこジャパン頑張れ!では次回に。

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こんなとき、フィジカル: 超実践的! 身体診察のアプローチ
徳田安春
金原出版

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