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施設からの患者さんで感染症での入院死亡率の危険因子について、ケースで考える

2018-03-13 | 勉強会
 
みなさん、こんにちは。

マラリア耐性をもたらす鎌状赤血球症の遺伝子変化が起こったのは、7200年前であったことがわかりました。

このような研究の進歩のおかげで、遺伝子進化の過程がこれからどんどん明らかになると思います。



では、今回も施設からの患者さんで感染症ケースです。
 
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症例 95歳女性
 
主訴 発熱
 
現病歴 認知症にて2年前より老健施設入所中。
 
今回は2日前より38度台の発熱にてER受診。
 
既往歴 アルツハイマー型認知症
 
右大腿骨頚部骨折で1年前に手術(関節置換)
 
身体所見 血圧 90/40 mmHg 心拍数120/min呼吸数 35/min 体温38.6
 
貧血、黄疸なし。咽頭発赤なし。リンパ節腫脹なし。頚部硬直なし。
 
呼吸音では、左下肺野に汎吸気性クラックルHolo-inspiratory cracklesが聴かれた。
 
心音正常。心雑音なし。腹部は軟かく圧痛なし。四肢に浮腫なし。褥瘡なし。皮膚に異常なし。
 
検査所見 胸部X線写真にて、右下肺野に浸潤影を認めた。
 
吸引喀痰での、Geckler分類5群(細胞数/1 視野(100 倍)で好中球>25・扁平上皮<10の良質な膿性喀痰)のグラム染色で、ランセット型配列のグラム陽性球菌lancet-formed Gram-positive cocci (GPC)(グラム染色的にはグラム陽性球菌のうちの肺炎球菌を示唆)を認めた。
 
血清クレアチニンは1.6 mg/dlであった。
 
動脈血ガス分析では、pH 7.40 pCO2 30 mmHg pO2 65 mmHg HCO3 22 mEq/L
 
検尿にて尿沈渣に異常なし。
 
その後の経過 「肺炎球菌性肺炎による敗血症疑い」の診断で、静注抗菌薬(セフトリアキソン)と補液を開始したが、「高齢者における敗血症疑い」なので、予後は不良なのかどうか考えて悩んだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 
 
ここでまた、下記論文のfigure 2をみてみましょう。
 
 
 
 
 
 
この症例の臨床所見に当てはめてみると以下となります。
 
 
感染巣が肺炎
 
大腿骨頚部骨折の既往あり
 
来院時収縮期血圧 90 mmHg  (
 
血清クレアチニン1.6 mg/dl  (>1.5 mg/dl)
 
 
 
ということで、今回の症例は入院死亡のハイリスク症例です。
 
 
患者さん家族に説明するためには、入院時にある程度入院中の予後を推定することができるとよいと思います。
 



写真   上海にある橋

 

 

 

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