燃えるフィジカルアセスメント

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副鼻腔炎に抗生物質は効くのか?

2015-10-07 | 総合診療ニュース

 風邪をこじらせた際に鼻が重苦しくなり、どろっとした鼻水と頭痛、そして微熱などの不快な症状が続く急性副鼻腔炎。

 よくある病気ですが、抗生物質が使われることが多く、多くの医師も特に疑問を抱くことなく処方してきました。

 しかし、2014年2月に掲載された論文では、そうした抗生物質使用の効果に疑問が投げかけられています。

 

Ahovuo-Saloranta A, et al. Antibiotics for acute maxillary sinusitis in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Feb 11

こちらです。

http://www.cochrane.org/CD000243/ARI_antibiotics-for-acute-maxillary-sinusitis

 

 急性副鼻腔炎と診断された成人患者に対し、抗生物質もしくは偽の薬(プラセボ薬)を割り当て、症状の程度を3日後、7日後、10日後に調べても、ほとんど違いがなく、あっても意味がないほど小さいものでした。

 

 もちろん、これで抗生剤が無効と結論づけられるわけではありませんが、改めて抗生物質を使うべき場面に関して慎重な判断が必要なことを教えてくれました。

 

 日本でも抗生物質については、「強くて効く薬」というイメージが強いのですが、副作用のリスクとコストを考えると、アウトカムで効果のない薬剤の使用は控えたほうがよいと思います。

 

 この研究では、免疫不全者や10日以上症状が続いている患者は除外されていますので、そのような患者さんにはあてはまりませんので注意は必要です。

 

それでも、私が観察している限り、風邪や軽い副鼻腔炎で抗生物質がよく処方されているようです。

 

 くすりの効果についての、こうした事実をもっと多くの皆さんに知ってもらい、医師と患者が賢く適切な治療を一緒に選んでいきたいものです。

 

今回は以上です、台風23号は明日には日本の東海上に近づき、あさってには北海道に最も近づく可能性が出てきているそうです、今も発達しているということで北日本や北海道の皆さんは気象情報に注意して下さい、では次回に。

 

こんなとき、フィジカル: 超実践的! 身体診察のアプローチ
徳田安春
金原出版
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