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たいまつは燃え続ける『日本で100年、生きてきて』

2017年02月24日 | 読書

昨年101歳まで生きて亡くなった、むのたけじ氏については経歴をはじめ独特の語り口、風貌が印象にあり、長いこと頭の片隅にあった。従軍記者として戦地に赴いた太平洋戦争が終わったその日に「戦争遂行の手助けをした責任を取る」と新聞社を辞め郷里に帰る。以来、30年にわたって「たいまつ」という小さな週刊新聞を通して世の中の矛盾を語り続けてきた。古巣の新聞地方版で連載された聞き書きの一部を収録した本書はこの国や社会に対して、もちろん目にしてきた戦争について厳しい眼差しを向ける。そして根を下ろす東北と沖縄の問題についても。ただ、それらの言葉は炉辺でお茶をいただきながら聞いているように温かみと優しさに満ち溢れている。そうした本文と紹介されている<絶えず噛みしめているという自戒の言葉>、巻頭言の<人は違っているからわかり合える>、どれもが熱い思いのこもった伝言。読む人の心に“たいまつ”は燃え続ける。