◎末松太平事務所(二・二六事件異聞)◎ 

末松太平(1905~1993)。
陸軍士官学校(39期)卒。陸軍大尉。二・二六事件に連座。禁錮4年&免官。

◎こんにちは・さようなら◎

2013年02月22日 | 末松建比古


いよいよ明日から、中公文庫「私の昭和史 二・二六事件異聞」上下2冊が書店に並び始める。万人に受けいられるような内容ではないし、中公文庫のイメージも(他社の文庫本に比べて)大衆性に欠けるから“華やかに登場!”という訳にいかない。
既に「見本が編集部に届いた。末松分を上下各10冊確保している」という連絡はいただいていた。編集部としては「発売前に渡してスッキリしたい」と思うのが当然だろう。しかし、偏屈老人(私)が相手では、煩わしさを我慢して「早速お持ちして御礼申上げたく存じますが、ご負担のようでしたら郵送にてお送りいたします」と書き添えるしかない。

偏屈老人は、最終的に「橋爪史芳サンに会うこと」を選んだ。
気持の片隅には「一度も顔を合わせないままに終わる“一期一会”も粋ではないか」という思いもあったが、家人に「いろいろ御世話になったのだから、直接お目にかかって御礼すべきでしょ!」と叱られて、東京駅八重洲地下街の「キリンシティ」での“初対面”を決めた。
編集者と作者との“初対面”には“次”が存在するが、私(作者ではない)の場合には“次”がない。最初の“こんにちは”が、最後の“さようなら”に直結する。タイトルの意味は、そういうことである。

躊躇していた理由:「初対面の若い女性を相手に、何を話せば良いのか判らない」
家人のアドバイス:「珈琲を飲むだけで、直ぐに30分位は過ぎるわよ。途中で話題に詰まったら“質問”を続ければ良いのよ」
この“質問連発作戦”は、NHK朝ドラ「純と愛」の滑稽な場面(余貴美子&田中要次)が“元ネタ”である。



初対面の挨拶を終え「見本」を手渡された私は、いきなり「出征から凱旋まで」の頁を繰りはじめる。この老人は、何をしてるのだろうか。橋爪サンの不審な表情に気付いて説明する。
「実は“校了”の連絡を頂いた後で“誤記”を発見しておりまして」「それは、どんな“誤記”ですか」「末松太平が愚かにも“一把ひとからげ”と書いていて」「そこは、気付いて修正しておきました」。
これで気持が解れて、持参した「手土産」を次々に披露することができた。

手土産①=“折目朋美著「二・二六事件雪降リ止マズ」1995年・双流社刊”。
今では入手不可能な本書は“それまで「事件」の知識がなかった20代女性”が、池田俊彦少尉の指導の下、5年の歳月をかけて完成させた(その分厚さに驚かされる)劇画である。因みに“双流社”は、河野進サン(当時は「仏心会」世話人。河野司氏の次男)主宰の出版社である。著者の朋美サン(現在は森田忠明夫人)は“末松太平=「私の昭和史」の内容”に非常に好意的である。ある意味で「私の昭和史・劇画版」の趣が感じられるので、橋爪サンに差し上たいと思った。

手土産②=“山口富永著「近衛上奏文と皇道派」2010年・国民新聞社刊”。
本書には“末松太平「二・二六事件断章・真崎大将の組閣説始末記」現代史懇話会発行『史』1989年掲載”の全文が転載されている。“高橋正衛氏=みすず書房版「私の昭和史」編集者”と“末松太平=著者”との“不幸な終結”を知る資料として、橋爪サンに差し上げたいと思った。

手土産③=“池田俊彦「回想の末松太平」現代史懇話会発行『史』1993年掲載”のゼロックスコピー。
中公文庫版の完成後だが“みすず書房版「私の昭和史」以降の末松太平”を把握する資料として、橋爪サンに差し上げたいと思った。

手土産④=“末松太平・結婚記念写真”の複写。西田税&渋川善助&大蔵栄一氏が並んでいる写真である。
大蔵栄一氏の著書に「西田は写真を撮るのがきらいであったのか、ほとんど面影が残されていない。近ごろ雑誌や単行本の中に利用されている西田の写真は、そのときの記念写真から苦心して引きのばし複写したものである」と記した写真である。橋爪サンから筒井サンへの手土産にしていただければ、と思って差し上げた。

「一期一会」の記録として、橋爪サンを“1枚だけ”撮らせていただいた。私は(風景でも人物でも)1枚しか撮らない。自画自賛だが、橋爪サンの「どことなく“天然”な感じ」は見事に撮れたと思う。
私は“天然な男性”は苦手だが“天然な女性”はキライじゃない。例えば、TVドラマの「干物女=綾瀬はるか」や「デカワンコ=多部未華子」は、毎週出会うのが楽しみなキャラクターだった。(末松)
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1 コメント

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Unknown (江翠)
2013-03-01 22:31:11
編集者橋爪サンとのやり取りが手に取るように浮かんで、楽しい気分です。
浅学な私には、橋爪サンにお渡しになった資料を詳しく下さる事さえも参考になりました。面倒と思われることも書いて下さり感謝です。
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