学年だより「この先(2)」
先週の土曜、1・2年生対象に行われた進路講演会を聞かせていただいた。講師は、東大で教鞭をとられる地質学者の加藤泰浩先生。さいたま市立高砂小学校、岸中学校 県立浦和高校を経て東大に学び、地球46億年の歴史を解読したいという夢を追い続け、海底の地質を研究されている。
同時に、その研究の過程で、大量のレアアースを含む海底の泥を発見された。今後、世界の産業界や国際関係に大きな影響を与えることになる夢の資源である。
地質学者として世界各国をとびまわり、地球進化の歴史を明らかにするための堆積岩の発掘の様子を写真とともに話してくださったり、レアアース泥の発見と発表にまつわる様々な駆け引きの顛末を語ってくださったり、世界の最先端で活躍される方の話はこんなにもスケールが大きく、スリリングなものかと感動を覚えた。
みなさんにも聞かせたかった。たとえ受験直前であっても、この90分はプラスにこそなれ、けっしてマイナスにはならないと思えるほど素晴らしいものだった。
どうして、そんなに一心に研究にうちこめるのか。
先生は「知りたいからだ」とおっしゃる。
漠然と石に興味を抱いた中学校時代から、徐々にその好奇心を高め、地球の歴史を解明したいとの強い思いはとどまるところなく、ついには世界を牽引する研究者になられた。
大学で学ぶとは、こういうことなのだろう。
どの大学に行った方が就職がいいとか、環境に恵まれているとか、この学部に行くと資格もとれるとか、私達はそんな観点で大学を見る。
もちろんそれらも大事な要素ではあるけれど、ひたすら知りたい、解き明かしたいとの純粋な知への渇望の前には、あまりにも小さなことに見えるのは事実だ。
イチロー選手がバットを振り続けずにはいられなかったように、本田選手がボールを蹴り続けずにはいられなかったように、桑田佳祐が歌わずにはいられなかったように、加藤先生は研究せずにはいられなかった人だ。それをやらねば自分でなくなる。
他人にやめろと言われたところで、やめられないだろうし、かりに環境に恵まれてなくても、必ずその道に進んだことだろう。それこそが「自分」であり、見つけた「自分」をないがしろにしない人生だ。事前に用意されたプリントで、加藤先生はこう書いていらっしゃる。
~ 勉強でもスポーツでも音楽でも、何でもいいので徹底的に「頑張る能力」を身につけ、誰も到達したことがないような高みを目指して下さい。 ~
まもなく卒業を迎える皆さんにこう言いたい。自分のやりたいことを「探す」のは時間のムダだ。
本当にやりたいことは、探す前にやっている。逆に探したからといってわいてくるものではない。 なんでもいいから、とりあえず徹底的にやってみる。そのこと自体が結果的にやりたいことでなかったにせよ、その経験自体が糧になる。