学年だより「新幹線劇場」
「清掃員の早技スゴすぎ!」「新幹線の清掃隊かっけー!」「手際がいいだけでなく、礼儀もハンパない。マジ神」新幹線の清掃チームの話題が、数多くのツイッターでつぶやかれている。
とくに、JR東日本グループの鉄道整備株式会社、通称「テッセイ」の仕事ぶりは、海外からわざわざ見学に訪れる人がいるという。
東京駅上越新幹線、東北新幹線のホームには、入線してきた新幹線が12分停車する。
乗客が降りるのに2分、乗車に3分必要なため、車内清掃にかけられる時間は7分だ。
この7分をつかって、22人一組の清掃チームが、座席の向きをかえ、ゴミを集め、カバーをかえ、すべてのテーブルを拭きとるといった仕事をする。
原則一人一両、数人はトイレを担当する。当然だが、一瞬の手抜かりも許されない。
清掃チームは、担当の列車が入線する3分前になると、ホーム際の一列に整列し、列車が入ってくると、並んだまま深々とおじぎをする。
これは礼を尽くすとともに、高速で入線してくる車両への接触を予防する意味もあるという。
降りてくるお客さんに対し「お疲れ様でした」という声かけもおこたらない。
最後のお客さんが降りると同時に車内に乗り込むと、上記の仕事にてきぱきととりかかる。
その見事な手際を、「7分間の新幹線劇場」とよぶ人もいる。
清掃が終わり、ホームに降りると、乗車を待っていたお客様の方に向かって整列し、「お待たせいたしました」と、深々と頭を下げる。外国の団体さんが思わず拍手を送ることもあるそうだ。
「自分のやりたいことは何か」「将来やりたい仕事は何だろうか」
文系・理系の選択にかかわり、そんなことを考えてみた人もいるだろう。
そういう過程のなかで、「清掃会社」に勤めるという選択肢を想定してみた人はいるだろうか。
おそらく、いないんじゃないかな。
では、テッセイでの仕事は、みなさんが目標にするに足りない仕事だろうか。
そうは思えない。はたから見てて、プロの手際よさや、礼儀正しさに思わず感動してしまうような仕事、つい「かっけー!」とつぶやいてしまうこの仕事は、テッセイに勤務するみなさん自身が、プライドをもって取り組んでいるものだ。だからこそ、かっこいい。
どんなに華やかな職についていても、それが自分だけの利益や、自己保身、自己顕示のためだけであるとき、きっと周りの人は尊敬を念はいだかない。
逆に、普通の人がやりたがらない仕事でも、いやそういう仕事の場合であればなおさら、真剣に取り組んでいる仕事ぶりを目にすれば感動し、頭が下がる。
~ テッセイという会社は「普通の会社」です。やっている仕事の中心は清掃作業。けっしてあこがれの仕事ではありません。働いている人たちも、バリバリの高学歴エリート社員はほとんどいません。複雑な人生を背負い、ようやくテッセイに辿り着いた人も数多くいます。 … テッセイという会社の輝きを根っこで支えているのは、「リスペクト」と「プライド」です。(遠藤巧『新幹線 お掃除の天使たち』あさ出版) ~
かっこいい仕事というのはない。かっこよく働くかどうかだ。