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Elio Filippino Barbaresco Sari Capelli 2004

2013-05-30 00:00:00 | イタリア
Elio Filippino Barbaresco Sari Capelli 2004
Elio Filippino Barbaresco Sari Capelli 2004
エリオ・フィリッピーノ社はアルバからおよそ12Kmほどのタナロ川右岸に位置するネイヴェのセッラ・カペッリ地区にあります。1900年代の始めにエリオの祖父であるエヴァリスト・フィリッピーノがここに葡萄畑を手に入れ、当初は葡萄を売るだけでした。2代目のドメニコ・フィリッピーノは50年代になってからワイン造りを始めました。ピエモンテの伝統的な造り方による方法でドルチェット、バルベーラ、そしてネッビオーロによるバルバレスコを造りました。 ドメニコの息子、エリオはまだ30代の若い青年ですが、祖父と父から受け継いだ伝統的なワイン造りの方法と精神を受け継ぎ、大樽での発酵と熟成を基本にワインを造っています。若いエリオはバリックを使った現代的な要素も取り入れています。しかし、その充分に抑制の効いた、バランスのよさは葡萄本来の力とあいまって、抜栓の直後からも豊かな香りと味わいを醸しています。しかし、フィリッピーノのワインの底力はバルベーラやバルバレスコのバリックの使用、不使用に関わらず、抜栓後1週間、2週間と時間が経っても揺ぎ無い風味を楽しめるところにあります。 祖父の代、1952年に植えられたバルベーラから今も素晴らしいワインが作られていますが、5000年、あるいは7000年とも言われる葡萄の起源を顧みれば、その葡萄から造られるワインが時の流れとともに成長し、味わいを深めるものであること、そしてこれこそがイタリアワインの本質であり真髄であることを、エリオ・フィリッピーノのワインによって改めて確認して頂けるものと確信致します。
Ginoより)




ピエモンテ州
エリオ・フィリッピーノ社
バルバレスコ DOCG
“ソリ・カペッリ” 2001
“サント・クリストフォロ” 2001 


イタリアワインの頂上に位置するのはピエモンテ州のバローロとバルバレスコでしょう。
イタリアワインの中で、フランスのボルドーやブルゴーニュの高級ワインにも引けを取らない世界的な位置付けのさきがけとなったのもバローロやバルバレスコでした。バルバレスコの神様とも言われるアンジェロ・ガイヤやバローロのエリオ・アルターレなどの先駆者の名前をご存知の方も多いのではないでしょうか。

そのバローロでは近年、バローロ・ボーイズと呼ばれる第2世代の後継者たちがフランス産のバリック(オーク材製の小樽)を使用してモダンなスタイルを打ち出し、これもまたイタリアワイン界全体に大きな影響を与えてきました。
今では、高級ワインならばバリックを使わなければいけないかのような錯覚さえ抱いている生産者や消費者が溢れているくらいです。
しかし、私はいつもこのモダンな傾向に疑問を持ってきました。ワインとは葡萄の果汁をアルコール発酵させ、大きな木樽やステンレスなどの大容量のタンクでじっくりと熟成させることにより、葡萄が本来持っている香りや味わいを引き出す飲み物だと思います。
ところが、バリックの出現によって、ワインには強烈なオークの香り、厳密にはオーク材の中に含まれるバニラ香やタンニン、またオーク樽の内側を焼き焦がすことによって炙り出される特有の匂いを加えて、葡萄本来が持っていない香りと風味付けが行われるようになりました。
これがほどよく為されればよいのですが、一時期は葡萄果汁を飲んでいるのか木の樽を飲んでいるのか分らないようなワインが横行して、ワイン選びもままならないほどでした。

さて、今日、ご紹介するバルバレスコはピエモンテ州のネイヴェの生産者、エリオ・フィリッピーノ氏が造る2種類のワインです。
エリオはまだ30代の若い造り手で父親から受け継いだワイナリーをより発展させようと意欲に満ちた若者ですが、かといってモダンな造り方には流されない、しっかりした哲学を持った優秀な造り手です。
2種類のバルバレスコはそれぞれ、“サント・クリストフォロ”と“ソリ・カペッリ”という別々の畑で育てられたネッビオーロ種から造られていますが、“サント・クリストフォロ”は大樽のみで熟成させ、“ソリ・カペッリ”にはバリックで熟成させたワインを使用しています。

バリックを使用したワインはアメリカやことにドイツで人気があるそうですが、このふたつを並べて見るとよく分るように、バリックを使用した“ソリ・カペッリ”(写真・右側)の方が同じヴィンテージながら濃いガーネット色です。
こちらを口に含んでみますと、輪郭のはっきりとした、つまり甘味、渋み、酸味のバランスのうち、酸味を抑えた分、甘味と渋みを強く感じます。
エリオ・フィリッピーノ自身は大樽で熟成させた“サント・クリストフォロ”が好みだと言っていますが、その彼があえてバリックを使用するのは、アメリカやドイツの市場を考えてのことです。だからと言って、100%市場好みのワインに仕上げないところにエリオのワイン哲学があります。
つまりモダンな造り方をしていても、伝統的なバルバレスコの持ち味はそのまま内包させ、けっしてバリックが前面にでない味わいに仕立てられているのです。
とても好ましいかたちでバリックの効果を感じます。

“サント・クリストフォロ”(写真左側)は見た目にも熟成が進んだ淡いオレンジ色のエッジが出ており、全体的に“ソリ・カペッリ”より明るい色です。口に含むと、
見た目の色の印象とは違って、全体にふっくらとしたボディ感を感じます。“ソリ・カペッリ”よりも酸味がありますので、その酸味が甘味や渋みを喉の奥にまで引き込
むような余韻の長さがあります。といっても、その違いは非常に微かなもので、見極めるのはなかなか難しいかもしれません。

この違いはビーフ・シチューやローストした肉料理などを召し上がりながら比べてみると、より分かり易くなると思います。ビーフ・シチューのようによく煮込んだ肉料
理、あるいはスキヤキや焼肉のように醤油風味の料理に合わせることで、料理の中の旨み成分であるアミノ酸が、“ソリ・カペッリ”に含まれるバリック特有の木の香りを呼び覚まします。そして、口の中に残っているこってりとした料理の味をさらりと流してくれます。“サント・クリストフォロ”はむしろ料理の旨み成分と合体してこそ、より料理の味わいとワインの風味が一体となったボリューム感を楽しむことができます。
ビーフ・ステーキやタリアータのようなあっさりと炭火で調理した肉には“ソリ・カペッリ”を、ビーフ・シチューのような煮込み料理には“サント・クリストフォロ”を合わせると、料理との調和が一段と良いのではないでしょうか。
そういえば、アメリカやドイツでは牛肉やソーセージを豪快に焼いた料理を食べることが多く、ピエモンテでは牛肉を赤ワイン(特にバローロなど)で煮込んだブラサートや鹿や鶏肉を一緒に煮込んだフィナンツィエーラをよく食べますから、“サント・クリストフォロ”のような大樽熟成のワインが相応しいのでしょう。

大樽熟成の“サント・クリストフォロ”か、バリック仕上げの“ソリ・カペッリ”か、その違いは極めて微妙ではありますが、いずれも大変魅力的で、イタリアワインの王者に相応しいエレガントさと、時間をかけてゆっくりと味わいたい奥深い余韻を楽しめる偉大なワインです。
イタリアワインの真髄をこのエリオ・フィリッピーノのバルバレスコで確認できるかと思います。
ソムリエginoのテイスティングノートより)



2013年5月27日 抜栓は竹八。グラスで。
けっこう濃いルビー。紅茶、ハーブの香り。タンニンがしっかりしていますが、決してギスギスせず、果実味が豊富でしっかりとしたバルバレスコでした。これも美味かった。


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