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僕の読書ノート「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年度版(大腸癌研究会)」

2023-09-30 07:47:43 | 書評(生物医学、サイエンス)

 

私は医者ではないが、仕事がら医療に近いところにいるので各疾病領域ごとに診断法や治療法のスタンダードを示したガイドラインが学会などで作成されて出版されているのは知っていた。私は最近、直腸癌の2回目の手術を受け、今後の対応方法についてはセカンドオピニオンを聞くことも選択肢としてあることを主治医からご提案頂いた。やはり、自分自身でそれなりの知識は持っていたほうがいいと思い、この分野のガイドラインを検索したところ、大腸癌治療については医師向けと患者向けが出版されていることを知り、まずは患者向けを読んでみることにしたのが、本書である。

全体を通して、わかりやすく書かれていて、大腸癌当事者にとっての良書といえる。本文は74ページで図も多いので、量的にも手頃である。患者向けの診療ガイドラインが出ているということ自体素晴らしいことで、これからの医療は、医者任せにしないで、自分でよく知ってよく考えて、主体的に決めてくださいという思想が感じられる。

例えば私自身の興味からは、自分の病態(ステージや治療状況)とも関係するが、下記のようなことがわかった。

・全大腸癌の約70%は遺伝子異常(変異)が重なって発生すると考えられ散発性大腸癌という。一方で、生まれながらに持っている遺伝子の異常が原因となる場合を遺伝性大腸癌といい、頻度は5%である。残りの約20~30%の患者さんでは、明らかな原因は不明だが何らかの遺伝的素因の関与が推察され、血縁者にしばしば大腸癌を認めることから家族集積性大腸癌と呼ばれる(父も大腸癌にかかっているので私はこれに該当するかもしれない)。

・大腸癌手術後の再発率は進行度が進むにしたがって高くなる。粘膜内癌(Tis癌)は完全に除去すれば再発は起こらない。粘膜下層までの浸潤した癌(T1癌)の再発率は約4%である。固有筋層まで浸潤した癌(T2癌)の再発率は約7%である。ステージⅡの再発率は約13%、ステージⅢは約30%である。

・手術後の再発を抑える目的で行う薬物療法を補助化学療法という。ただし、補助化学療法がすべての大腸癌の再発の予防に効果があると確認されたわけではない。ステージⅢの結腸癌に対しては、再発を予防し、生存率を高める効果があるとされている。6か月間注射する方法か、抗がん剤を飲む方法が一般的である。また、ステージⅡやステージⅣの患者で、再発リスクが高いと考えられた場合にも補助化学療法が薦められることがある(逆に言うと、それ以外のステージでは、少なくとも現時点では補助化学療法は薦められていないということかもしれない)。

・大腸がんに対して行われる放射線治療には大きく分けて2通りある。1つは、直腸癌に対して行われる手術前もしくは手術中・手術後に行われる治療で手術治療に放射線治療を加えることによって、骨盤内の再発予防や人工肛門を避けることを目的としており、多くの場合は放射線の効果を高める抗がん剤を組み合わせ、外来通院で行われる。また肺や脳に転移があっても、小さく数が少ない場合に適応になる場合がある。もう1つは、再発した大腸癌の症状緩和を目的に骨盤内再発、骨転移、リンパ節転移などに行われる治療で約80%に痛みなどの症状の改善がみられる。最近では多方向から正確に照射できるような機器を用いるようになってきたため非常に有効性が増し、副作用も軽減している。



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