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書評「週刊東洋経済 2015年10/24号(特集「教育」の経済学)」

2015-11-01 21:37:43 | 書評(脳科学・心理学)


週刊東洋経済で教育、とくに幼児教育中心に特集が組まれていて、内容的に興味があったので読んでみた。子どもの教育、とくに幼児教育に力を入れることが国の将来の生産性を高めるのに効果的であるというおもに経済学的な視点からまとめられていて、次のように3つのPARTに分かれている。

PART1「教育を科学する」
教育に科学的根拠(エビデンス)を持ち込むのは世界的な潮流だが、日本ではまだ浸透していない。教育政策の議論でも、家庭でも、「だれそれがこうしたら子どもを全員名門大学に合格させた」というような個人的な体験に基づく主観的な意見に影響されていることが多いという。
ノーベル経済学賞(日本はまだ未受賞)受賞者のシカゴ大学ジェームズ・ヘックマン教授らの研究で、就学前教育への投資は就学期間や卒業後の投資に比べて、収益効率(学歴、収入、持ち家率)が高くなることを明らかにした。また、ヘックマン教授は、学力以外の能力=「非認知スキル」の重要性を指摘した。
子育てQ&Aでは、勉強しなさいと言うべきか、ご褒美はあげるべきか、お小遣いはどれぐらいがいいか、褒めて育てるべきか、テレビやゲームは制限したほうがいいか、勉強するメリットはあるか、といった疑問に答えている。「褒めて育てるべきか」では、以前私が書評した「心の成長と脳科学(別冊日経サイエンス193)」にも書かれていたドゥエック教授による「能力」より「努力」を褒めることが効果的であるという考え方が紹介されていた。 

PART2「非認知スキルの高め方」
認知スキルとは、IQ、学力、記憶力など数値化が可能な能力のことである。非認知スキルとは、思いやり、やり抜く力、協調性、自制心、社交性、勤勉性、意欲、自尊心、信頼など目に見えない力の総称である。これまで教育の現場では、認知スキルの向上が焦点となっていたが、近年は非認知スキルが経済的・社会的な成功に大きな影響を及ぼすという研究成果が多数報告されているという。ヘックマン教授らは、とくに幼少期に非認知スキルが伸びやすいとしている。幼児教育での遊びを通しての学びが大切という。一方、IQなどの認知スキルは8~10歳ぐらいまでの比較的早期に確立されるのに対して、非認知スキルは20歳ぐらいまでは十分伸ばせる可能性があるともいわれている。

PART3「政策に科学的根拠(エビデンス)をどう生かす」
文部科学省の調査によると、親の関与が子どもの学力を決めるという。子どもの学力を高める方向に影響を与える保護者の関わりかたとして次のようなことが挙げられていた。1.読書活動(小さい頃絵本を読み聞かせした。子どもに本や新聞を読むように勧めている)、2.生活環境(決まった時間に寝かせる。毎日朝食を食べさせている)、3.信頼関係・コミュニケーション(学校での出来事について話を聞く)、4.文化的活動(子どもと美術館や劇場によく行く。博物館や科学館によく行く)、5.勉強への働きかけ(普段子どもの勉強をみている)。
わが家の子育てを顧みると、こうしたことはある程度できていると思うのだが、意識して実行していきたいものだ。


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