「雑草と階段」
映画『ディパーテッド』を観て来ました(公式サイト)。
ふぅ。久しぶりに映画館で映画を見たけれど、やっぱり映画は映画館がいいなぁ。隣に知らない人が座ったりして最初は落ち着かなかった。隣に座った人は映画の初めではジュースを飲んだりお菓子を食べたりして、僕はとてもイライラしてしまいました。だけ、映画に見入ってくるとそんなことは忘れてしまいます。
映画は、マーチン・スコセッシ監督に出演はレオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、あの『ブギー・ナイツ』のマーク・ウォールバーグ、『アビエイター』にも出ていたアレック・ボールドウィン、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でディカプリオと共演していたマーティン・シーンという、個人的にはよだれの出そうなおいしいメンバーです。
わたしはオリジナルの香港映画『インファナル・アフェア』を見ていなかったので、違和感なく最初から最後まで見ることができました。
あらすじはディカプリオ演じる警察がマフィアになりすましてボスのジャック・ニコルソンを逮捕しようとし、マット・デイモン演じるマフィアが警察に入り込みニコルソンの逮捕を防ごうというもの。
映画は、マフィアのボス役のジャック・ニコルソンが周りのすべての人を恐怖で震え上がらせる圧倒的な迫力で映画を支配していきます。
彼のこの迫力により、映画の間中は、主役のはずのレオナルド・ディカプリオとマット・デイモンは、ニコルソンに睨まれてビビりまくっている若者二人という感じになります。
この映画はまるでタランティーの映画みたいに、子供じみた理由で人間が殺され、その子供じみたマフィアの残忍さをこれでもかと見せていきます。スコセッシはテンポのいい場面展開と俳優たちの子気味いいセリフ(“Fuckin'…!”の連続)で、ラップ・ミュージックのようなノリで映画をすすめて行きます。
このノリにもっとも合っていたのがマーク・ウォールバーク。警官役の彼は敵味方関係なくかかわる人間すべてに悪態をつき相手を侮辱する言葉をマシンガンのように浴びせ続けます。
そのような恐怖を知らない男たちに囲まれながら、ディカプリオは、一方で相手を恐怖で震え上がらせる迫力を出しながら、もう一方では自分の死を怖れる人間味をきちんと表現していきます。
たしかに映画自体は、ニコルソンの迫力に支配されています。観客はいつ登場人物たちがニコルソンによって殺されるのかハラハラします。警官であれ味方のマフィアであれ、彼の思惑一つで消されてしまいそうなのです。
しかし、ニコルソンのその迫力をもっとも観客に伝えているのは、実はディカプリ尾の演技なのです。恐怖を内面に持ちながら、身元がばれないように必死にマフィアになりきる過程でディカプリオの精神は病んでいくのですが、その焦りが体と顔全体で表現され、観客はディカプリオを見ることで、彼がいかに極限状態に追い込まれ、またニコルソンが恐ろしい人物であるかを認識することになります。
それに比べれば、マット・デイモンはディカプリオほど内面がうまく描かれていない。
これはデイモンの責任というよりは、デイモンとスコセッシが合わなかったからかもしれない。ラップのようなノリで次々と場面を展開させ暴力を見せていくスコセッシの映画では、目で演技をするデイモンの繊細さが消され、単なるひ弱な青年にしか見えないのです。
彼が大ヒットに導いたスパイ・アクション映画『ボーン・アイデンティティ』『ボーン・スプレマシー』は、暴力も銃もふんだんに出てきますが、同時にデイモンは高度な頭脳とサイボーグのような肉体を駆使し、同時に自分の暴力性に悩む繊細をあわせもつ一人の青年です。そのようなデリケートな場面においてこそ、一見静かなたたずまいのデイモンの良さが生きてきます。
これは彼をスターダムに押し上げた『グッドウィル・ハンティング』(興味のある人必見)でも同じで、超一流の数学の才能をもちながら、恵まれない生い立ちにより傷ついた心を持ち、周りに対して攻撃的になる青年という複雑な役柄だからこそ、デイモンのよさが発揮されました。
それらの映画に比べればスコセッシの映画は、一見頭脳戦の体裁を取っていても、強調されるのは生身の暴力であり、それが醸し出す原始的な恐怖であって、繊細な心理描写とは違うものです。
ディカプリとデイモンの共演ということで喜んで観にいったけれど、結果としてはスコセッシ映画に合う演技と合わない演技の違いが出てしまったように思いました。
時間は2時間20分ほどで、見ている間中は心臓がドキドキし、見終わった後でも興奮がなかなか鎮まらないような映画でした。脈拍が普通より相当上がっていたのではないだろうか。観ている間も、観終わった後も、緊張が続いてしまう映画でした。
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