団塊オヤジの短編小説goo

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都月満夫の絵手紙ひろば💖一語一絵💖

都月満夫の短編小説集2

「容姿端麗」
「加奈子」
「知らない女」

都月満夫の短編小説集

「キヨシの帰省」
「出雲の神様の縁結び」
「ケンちゃんが惚れた女」
「惚れた女が死んだ夜」
「羆撃ち(くまうち)・私の爺さんの話」
「郭公の家」
「クラスメイト」
「白い女」
「逢縁機縁」
「人殺し」
「春の大雪」
「人魚を食った女」
「叫夢 -SCREAM-」
「ヤメ検弁護士」
「十八年目の恋」
「特別失踪者殺人事件」(退屈刑事2)
「ママは外国人」
「タクシーで…」(ドーナツ屋3)
「寿司屋で…」(ドーナツ屋2)
「退屈刑事(たいくつでか)」
「愛が牙を剥く」
「恋愛詐欺師」
「ドーナツ屋で…」
「桜の木」
「潤子のパンツ」
「出産請負会社」
「闇の中」
「桜・咲爛(さくら・さくらん)」
「しあわせと云う名の猫」
「蜃気楼の時計」
「鰯雲が流れる午後」
「イヴが微笑んだ日」
「桜の花が咲いた夜」
「紅葉のように燃えた夜」
「草原の対決」【児童】
「おとうさんのただいま」【児童】
「七夕・隣の客」(第一部)
「七夕・隣の客」(第二部)
「桜の花が散った夜」

落語「薮入り」

2010-01-16 11:46:20 | 落語

1落語と言っても徹頭徹尾、喜劇とばかりは限りません。この「薮入りは」、どちらかという人情話という趣があります。かつて、年季奉公の制度が残っていた頃のお話。

 奉公に出て3年目の初めての藪入りの日。

 「藪入りや何にも言わず泣き笑い」。

 男親は朝からソワソワしています。いえ、前の晩からです。男親は女房に奉公に出た一人息子が帰ってきたら、ああしてあげたい、こうしてあげたいと、言って寝かせません。

Photo 「暖かい飯に、納豆を買ってやって、海苔を焼いて、卵を炒って、汁粉を食わしてやりたい。刺身にシャモに、鰻の中串をご飯に混ぜて、天麩羅もいいがその場で食べないと旨くないし、寿司にも連れて行きたい。ほうらい豆にカステラも買ってやれ」

「うるさいんだから、もう寝なさいよ」

「で、今何時だ」

2時ですよ」

「昨日は今頃夜が明けたよな」

「湯に行ったら近所を連れて歩きたい。赤坂の宮本さんから梅島によって本所から浅草に行って、品川の松本さんに挨拶したい。ついでに品川の海を見せて、羽田の穴守さんにお参りして、川崎の大師さんによって、横浜の野毛、伊勢佐木町の通りを見て、横須賀に行って、江ノ島、鎌倉もいいな~。そこまで行ったのなら、静岡、豊橋、名古屋のシャチホコ見せて、伊勢の大神宮にお参りしたい。そこから四国の金比羅さん、京大阪回ったら喜ぶだろうな。明日一日で。な、おっかぁ」

「おっかぁ、おっかぁ、って、うるさいんだから」

「で、今何時だ」

3時少し回ったよ」

「時間が経つのが遅くないか。時計の針を回してみろよ」

「な、おっかぁ」

5時過ぎに起き出して、家の回りを掃除し始めた。普段そんなことした事がないので、いぶかしそうに近所の人達が声を掛けても上の空。1_2

 抱きついてくるかと思ったら、丁重な挨拶をして息子の亀ちゃんが帰ってきた。父親の熊さんに言葉がないので、聞くと喉が詰まって声が出ない。

 病気になった時、お前からもらった手紙を見たら、字も文もイイので治療はしていたが、それで治ってしまった。それからは何か病気しても、その手紙を見ると治ってしまう。

「おっかぁ、やろう、大きくなったろうな」

「あんたの前に座っているだろ。ご覧よ」

「見ようと思って目を開けると、後から後から涙が出て、それに水っぱなも出て、見えないんだよ」

「あっ、動いている。よく来たなぁ。おっかぁは昨日夜っぴて寝てないんだよ」

「それはお前さんだろ」

 落ち着いた所で、亀ちゃんはお湯に出掛けた。Photo_3

「おっかぁ。立派になったな。手を付いて挨拶も出来るし、体も大きくなって、手紙も立派に書けるし、着物も帯も履物もイイ物だ。奥様に可愛がられて居るんだろうな」

「お前さん、サイフの中に小さく折り畳んだ5円札が3枚有るよ」

「子供のサイフを開けてみるなよ」

15円は多すぎるだろ、なにか悪い了見でも・・・」

「俺の子供だ、そんな事はない。が、初めての宿りで持てるような金ではないな。帰ってきたら、どやしつけてやる」

 そこに亀ちゃんが湯から気持ちよさそうに帰ってきた。

「そこに座れ。おれは卑しい事はこれっぽっちもした事はねぇ。それなのに、この15円は何だ」

「やだな~。財布なんか開けて。やる事がげすで、これだから貧乏人はヤダ」

「なんだ、このやろう」

と喧嘩になってしまった。

 2 亀ちゃんが言うには、ペストが流行、店で鼠が出るので、捕まえて警察に持っていくと、銭が貰える。ネズミを捕まえては交番に持って行き、懸賞に当たってもらったお金をコツコツと貯め、今日までご主人が預かっていたが、宿りだからと持って帰って喜ばせてやれと、持たせてくれた。その15円だという。Photo_4

「おっかぁが変な事を言うものだから、変な気持ちになったのだ。懸賞に当たってよかったな~。許してくよ。主人を大事にしPhoto_5 なよ。忠(チュー鼠の鳴き声にかけて)のお陰だから」

おあとがよろしいようで・・・。

したっけ。

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倉内佐知子

「涅槃歌 朗読する島 今、野生の心臓に 他16篇(22世紀アート) 倉内 佐知子 22世紀アート」

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