東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

積極的平和主義

2014年01月09日 | インポート

Photo
 安倍首相が「積極的平和主義」をとなえているが、最近問題になった食品偽装や、ダイエット誇大広告詐欺と同じ手口ではないか。
 積極的平和(Positive peace)とは、1942年(昭和17年)、クインシー・ライト(社会学者・米国)が執筆した「戦争学」で、「消極的平和」と併せて使ったのが始まりとされる。その後、米国に留学していたヨハン・ガルトゥング(平和学者・ノルウェー)が「消極的平和」を戦争のない状態、「積極的平和」を戦争だけでなく貧困や搾取、差別などの構造的な暴力がなくなった状態、と定義して定着した言葉である。
 安部首相の「積極的平和主義」とは、これと似て非なるものだ。
 彼は、国連総会で「積極的平和主義の立場から、PKOをはじめ、国連の集団安全保障措置に、より積極的に参加できるよう図ってまいります」と演説。所信表明では「『積極的平和主義』こそが、わが国が背負うべき二十一世紀の看板」と強調し、自衛官の海外での活動などに触れ、国家安全保障会議(NSC)の創設を意欲的に語った。また、米国でのスピーチでは、「Proactive Contributor to Peace(率先して平和に貢献する存在)」という言葉を使い、これを首相官邸のホームページ上では「積極的平和主義」と訳している。しかし、前述のガルトゥングの「積極的平和」は「Positive peace」である。従って、安部首相の発言を「積極的平和」と受け止める者は日本以外にはないだろう。それどころか、「Proactive」は軍事用語として「先制攻撃」のニュアンスで使われこともあるそうだ。まさに言葉の偽装にほかならない。
 今日のニュースで、自民党が今年の運動方針原案の「(靖国神社参拝に関し)不戦の誓いと平和国家の理念を貫くことを決意し」との表現を削除して「(戦没者に対する)尊崇の念を高め」との文言を追加したことが明らかになった。
 戦争する国家になるために「英霊」を尊崇することも「積極的平和主義」と言いくるめるのだろうか。

ツワブキ


成功は失敗のもと

2014年01月09日 | 日記・エッセイ・コラム

いきなりなタイトルにしてしまったが、もちろんふつうは「失敗は、成功のもと」である。しかし、歴史を振り返ると、なまじ成功したがために、もっと大きな失敗をしてしまうというケースがあると思う。

よく言われるのが、近頃アニメや映画で取り上げられる「ゼロ戦」だ。登場した時は、その戦闘能力は、抜群だったらしい。しかし、そのために機体を極限まで軽量化したことによって、肝心のパイロットの安全は全く顧みられず、あっという間に、グラマンにやられることになる。「日本海海戦」の成功体験が、忘れられず、巨砲戦艦による海戦での一発勝負にかけた日本海軍も、その一例だろう。

こんなことを考えたのは、「日本型モノづくりの敗北」という本(湯ノ上隆著、文春新書)を読んだからだ。1980年代日本の半導体メモリは、世界を席巻していた。世界シェアの80%を占めて、なおかつ最高品質を誇っていた。しかし2000年代には、主要メーカーは撤退を余儀なくされ、経産省のおこえがかりで作られた「エルピーダメモリ」という合弁会社は、2012年に経営破綻してしまったそうだ。そのほか、デジタルテレビでは、「世界の亀山モデル」をキャッチコピーにしたシャープや、高画質を売り物にしたソニーなど、2000年代の初めには、世界でそれなりのシェアを持っていたが、現在は、サムスン電子とLG電子の韓国メーカーで、世界シェアの40%近くを占めているらしい。

この本を読むと、半導体メーカーや家電メーカーの成功と失敗がとてもよくわかる。また、電子産業における「国策」による失敗についても、事例を挙げて解説している。興味を持った方は、ぜひご一読をお勧めする。