安倍首相が「積極的平和主義」をとなえているが、最近問題になった食品偽装や、ダイエット誇大広告詐欺と同じ手口ではないか。
積極的平和(Positive peace)とは、1942年(昭和17年)、クインシー・ライト(社会学者・米国)が執筆した「戦争学」で、「消極的平和」と併せて使ったのが始まりとされる。その後、米国に留学していたヨハン・ガルトゥング(平和学者・ノルウェー)が「消極的平和」を戦争のない状態、「積極的平和」を戦争だけでなく貧困や搾取、差別などの構造的な暴力がなくなった状態、と定義して定着した言葉である。
安部首相の「積極的平和主義」とは、これと似て非なるものだ。
彼は、国連総会で「積極的平和主義の立場から、PKOをはじめ、国連の集団安全保障措置に、より積極的に参加できるよう図ってまいります」と演説。所信表明では「『積極的平和主義』こそが、わが国が背負うべき二十一世紀の看板」と強調し、自衛官の海外での活動などに触れ、国家安全保障会議(NSC)の創設を意欲的に語った。また、米国でのスピーチでは、「Proactive Contributor to Peace(率先して平和に貢献する存在)」という言葉を使い、これを首相官邸のホームページ上では「積極的平和主義」と訳している。しかし、前述のガルトゥングの「積極的平和」は「Positive peace」である。従って、安部首相の発言を「積極的平和」と受け止める者は日本以外にはないだろう。それどころか、「Proactive」は軍事用語として「先制攻撃」のニュアンスで使われこともあるそうだ。まさに言葉の偽装にほかならない。
今日のニュースで、自民党が今年の運動方針原案の「(靖国神社参拝に関し)不戦の誓いと平和国家の理念を貫くことを決意し」との表現を削除して「(戦没者に対する)尊崇の念を高め」との文言を追加したことが明らかになった。
戦争する国家になるために「英霊」を尊崇することも「積極的平和主義」と言いくるめるのだろうか。
(ツワブキ)