パンツ一枚で
うろうろしたって
品のあるひとはいるもので
暮らしを共にした果てに
相棒にそう思わせるのは
至難のわざでありましょうに
らくらくとあなたはそれをやってのけた
肩ひじ張らず ごく自然に
ふさわしい者でありたいと
おもいつづけてきましたが
追いつけぬままに逝かれてしまって
たったひとつの慰めは
あなたの生きて在る時に
その値打ちを私がすでに知っていたということです
茨木のり子さんの遺稿というか、亡くなった後、遺品の中の原稿を宮崎治さんがまとめられた詩集の一節。茨木の夫(三浦安信)への思いをつづった詩集だが、赤裸々な彼女の思いが伝わって胸が締め付けられる。「自分の感受性くらい」「倚りかからず」でみせる勁さが、そのまま夫への想いとしてつづられているように思う。
こんなふうに愛されたいものだと、つくづく思うが…値打ちを問われると心もとない。
歳月(茨木のり子、花神) (ケシ)