中国では、メタンガスが農村社会のインフラの要となった。メタンガスの原料は、豚の飼育による豚の排泄物である。1960年ころには、北京の郊外で実用化されていたが、暖房、炊事用にメタンガスを狭い地域内で循環させる仕組みがあった。習近平政権は、これを豚のハムの生産で有名な金華ハムの産地である浙江省でより大規模な地域循環システムを採用し、水資源の汚染から救い出した。日本では、特に富山では、メタンガスを水素を蓄える媒体として、水素を輸送しやすくするという面に着眼し、水素発電の原料をメタンガスに求める発想がでてきた。この場合、自動車が水素発電で動くというトヨタの水素ステーションの普及の可能性は低いとみておいたほうがよい。家庭でも充電可能なバッテリー交換方式が極めて実現可能性がたかい。そのため、自動車の車体内部で水素で自家発電する方式は、市場化という最後の関門はくぐれない。電気自動車のバッテリー交換方式だと、車が家庭電化製品として既存のシステムに同化できる。ここで、水産業、畜産業、さらに農業においても、メタンガスから発電するという循環を考えると、高次の循環型のシステムが考えられる。・・・ただし、経営学的には、経営の主体の問題を解決しなくてはならない。なぜ、浙江省で成功したのか?それは、同姓・同族の大規模な宗族の族産のシステムが残っていたからである。他人ばかりの農村社会では、紛争と不正が絶えないのので、結果、共産党が裏で直営しないと進んでいない。日本の場合は、「経営組織としてのムラ」すなわち入会地や水利共同組織があるので、農業協同組合の科学知識と経営科学の刷新に全てが委ねられている。バイオマス発電、小水力発電、水素発電など、小地域の循環だけでなく、県を3分する地域システムとして、経営主体を考える必要があるだろう。