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ハワイに行った時など、朝起きて、その日は、特に人に会うとか、どこかに行かなくてはならないなどの計画がない場合、取り敢えずバスに乗って出かけることにしている。
どこに行くかと言うと、カイムキのコーヒーショップに行くのである。
以前から、通い慣れたところで、「コーヒー・トーク」 (Coffee Talk) と言うコーヒーショップがある。
ワイアラエ通りの角地にあり、道を挟んで前には、銀行がある。
入り口は、丸い格好になっていて、看板には、女性の顔が描かれてれていて、「 Coffee Talk: The art of Coffee」の文字がある。
特に、店構えがいいわけではない。
別に、新しい建物ではないし、むしろ、古びたように見えるのである。
いかにも、その土地に根付いたと言うか、周りの風景にちゃんと、おさまっていて、昔から土地の人たちに愛されてきたという感じなのである。
店内は、カウンターがあり、テーブルが雑然と置かれて、お客が入ってくると、別に案内するでもなく、空いているところに、「どうぞ!」という感じである。
壁には、ポスターや絵画らしきものが飾られていて、奥には、その日のメニューが書かれたボードがある。
一度など、ボードに手書きの日本語で、「マグロ丼」と書かれていたのには、びっくりした。
日本人のお客さんが来るのだろうか。
これを書いた人は、明らかに日本人のはずだが、それらしい人はいなかった。
コーヒだけを注文してもいいし、メニューには、食べる物も、いろいろ載っている。
トシが、朝食として、よく注文するのが、「べギー・バーガー」(veggie Burger)で、アボカド、トマト、レタスなどの新鮮な野菜満載で出てくる。これにコーヒーがあれば、もうなにもいらない。
お勧めは、サーモンをビネガーでまぶして、これまた、トマト、アボカド、オリーブ、オニオンなど山盛りの野菜にベーグルが添えられたディッシュもいける。
食事だけでなく、ここは、お菓子もいろいろ豊富にある。
焼き菓子、ケーキ、スコーンなどがある。
大きな皿にワッフルが載っていて、その上に、イチゴとクリームが被さったケーキセットは、他の店では味わえないおいしさである。
簡単に小腹を満たしたいときは、ベーグルとマッシュルームスープというのはどうだろう。
「コーヒー・トーク」は、そんなに大きな店では無いから、いつも、混んでいる。
早起きしてやって来るおばあさんが、テーブルを占領していたりする。 学生が本やノートを広げて、長時間、なにやら作業に没頭している。 窓辺の席の人は新聞を読んでいる。
これらの人たちが、店内の雰囲気に、いかにも馴染んでいる感じなのである。
コーヒーは、2ドルだから、日本円では、200円にもならない。
エスプレッソをはじめ、コーヒーの種類も豊富である。
トシの場合も、コーヒーを注文して、それをすすりながら、新聞を読んだり、外の景色を見て楽しんだりしているのだ。
「私は、サンセットビーチに住んでいるが、街にやってくるとき、コーヒートークには、必ず立ち寄ることにしている」
( I live at Sunset Beach but when were in town, Coffee Talk is always a must・・・)という人のように、熱烈なファンが多いようだ。
大手の新聞にも、
「このカイムキの角地は、その名前が示すように、コーヒーを飲み、語るときのお気に入りの場所のひとつなのだ…」
( This Kaimuki corner spot is one of our favorite places to do just what the name suggests; sip coffee and talk story・・・)
トシにとっても、「隠れた穴場」で、あまり人に教えたくない場所である。