「ボンダンス」(Bon Dance: 盆踊り) は、今やハワイの夏の風物詩になってしまった。
” Bon Dance season in Hawaii is now underway. According to tradition,
it is believed the summer months are when ancestral spirits return to visit family and friends.”
( ハワイの盆踊りの季節が、今やシーズンである。言い伝えによると、夏に先祖の魂が家族や友人のところに帰ってくると信じられているのだ )
おそらく昔は、日系人だけが、ささやかに盆の供養を行っていたのだろうが、戦後になってようやく日系人社会が力をつけ隠然とした勢力を持つようになり、それに従って人前で、大ぴらにお祝いするようになってきたようだ。
今では、「盆踊り」は、日系社会だけのものでなく、ネイティブのハワイアン、アジア系の人たち、白人社会からも、ハワイの伝統文化として認知され、ハワイのローカルカルチャーとして定着している。
勿論、盆踊りは、日本人が持ち込んだものである。
遠く日本から離れたハワイで、故郷を偲びながら、長い年月をかけて育んできた伝統文化なのである。
ハワイには、日本の真宗、禅宗、浄土宗や、その他の宗派が各地に寺院を立て宗教活動をしている。
これらの団体が、夏になると、必ずと言っていいくらい催すのが、「盆祭り」である。
「盆踊り」で面白いのは、盆の期間だけでなく、ハワイでは7月の終わりころから9月まで続くのである。
日本から観光で訪れる人たちも、ワイキキで泳いだり買い物をするだけでなく、ハワイのローカルの人たちと一緒に盆踊りに興じて、楽しむのはどうだろう。
日本で見慣れた盆踊りの風景と同様、やぐらが組まれ、頭上には提灯が張り巡らされ、派手に飾りつけがされていて、スピーカーから東京音頭、炭坑節などの音楽が流れる。
やぐらの周りを浴衣を着た人たちやT-シャツ、アロハを着た人たちが、輪を作って回りながら踊るのである。
整然と列を作って踊るというわけにはいかないが、参加した人たちは、本当に楽しそうに踊っている。
屋台も出ていて、焼きそばやシェーブアイスなども売っていて、子供たちは、1ドル札、2ドル札を手にして買いに行く。
まるで、日本のどこかにいるような気がしてくるのである。
しかし、時に白人の小さな女の子たちが、浴衣を着て踊りの輪に加わる。可愛くて、ついカメラを向けたくなってしまう。
今夏も、ちょうどハワイの盆踊りが一斉に始まったところである。イベントカレンダーを覗いてみると、
パロロ本願寺 (7月29,30日)
マノア高岩寺 (8月5,6日)
真言宗ハワイ (8月12,13日)
曹洞ミッシヨン・オブ・ハワイ (8月19,20)
などと出ている。
これらは、ごく一部で、まだまだたくさんの仏教寺院が盆踊りの催しを行っていて、これらのイベント情報は、ハワイの日刊紙:Staradvertiser や Aloho Street などの新聞のイベント情報を見れば、知ることができる。
オバマ大統領が、プナホ高校に通っていたころ住んでいたアパートがべレタニア通りにある。
その隣に「真宗教会」があって、経営の母体は、日本の真宗の宗教団体であるが、ここで夏になると、盛大な盆踊りが行われていた。
教会内に、団体が経営する賄いつきの寮があって、ここに友人が住んでいたのである。
大学の研究などがひと段落すると、どちらともなく誘いあって、よく場末のバーに飲みに行っていたのである。
この人、後に日本に帰って、国立高専に就職して、その後は、女子大の助教授になったり、更には東京の国立大学の教授になった。
ある日の夕方、この友人から電話があった。
「ヤマダサン、盆踊りがあるのだけど、暇だったら出てこない?」
それまで、ハワイの盆踊りのことは聞いていたが、実際に見る機会はなかったのである。
目指すお寺に近づいてて見ると、お寺のある個所が夜空に煌々と明かりがついていて、やたら騒がしい音というか、歌声、太鼓の音などが響いてきたのである。
迫力のすごさに驚いてしまった。
見上げるくらいの高さにやぐらが組まれ、その上に何人かの人が登っていて、大声で「くどき」を歌って、踊る人たちの気勢を煽っていたのである。
まさか、ここがアメリカ、と思ってしまった。
「くどき」の歌声に合わせて、2列にも、3列にもなった人たちが団扇をひらひらさせながら踊っていたのである。合間に太鼓の音も入る。
そこはまるで、日本そのものだったのである。