マディと愛犬ユーリ、親友のクリスティ、それにハワイのこと

ハワイに住んでいたころ、マディという女の子が近所に住んでいて、犬のユーリを連れて遊びに来ていた。

" Oh ! Toshi ! " ( トシなの! )

2012-10-25 09:38:40 | 日記

 

 

 受付で、「お帰りになる時、忘れずにお持ちください!」と、マスイさんの最新刊の研究書と記念品が入った三越の袋が並べられていた。
 取り敢えず開会まで待つことにして、会場の片隅に立って、いく分気後れする感じで他の人たちの様子を眺めていた。
 マスイさんが、「トシ、東京まで来てくれるか?」と何度も言っていたのを思い出し、とにかく来場していることを伝えた方がいいのではないかという気がしてきた。 
 「マスイさん!」といつものように気軽く呼べるような雰囲気ではなかった。
 彼は、当日の、いわば主役で、当然みんなに交じって会場のどこかにいるのでなく、主賓控室にこもっているだろうことは想像できた。
 しかし今日だけは、心やすい友達のふりをして、彼の前にしゃしゃり出ることをためらったのである。

 それでも一言、「マスイさん!おめでとう!」とか言っておいた方がいいのではないかという気がして、逡巡する気持ちを振り切って、ちょっとだけ彼に会って、あとは閉会とともに帰ってしまってもいいのではと思ったのである。
 妻と相談して、受付のところに戻り、自分の名刺を差し出し、「マスイ先生に会いたいのですが?」と言った。
 受付の女性の一人が、「ハイ!こちらのいらしてください!」と言って奥まった小部屋まで連れて行ってくれた。
 そっとドアを開けると、彼の姿があったが、彼ひとりでなく、当然ドレスで着飾った奥さんの姿もあったし、ほかにアメリカ人が3,4人と、おそらく発起人だろう人たちも数人いて、マスイさんをとり囲むようにして、大仰なしぐさで、夢中に英語で、あるいは日本語で話をしていたのである。
 トシと妻の姿を最初に見つけたのは、マスイさんの奥さんのほうだった。
 奥さんは、ハーバード出身の医学博士だが、この時ばかりは、長いブルーのドレスに身を包んで、まるで、ハリウッドから来たかのようだった。
 "  Oh!  Toshi !  " ( トシなの! )とか言いながら、近づいてきて、アメリカ人らしくハグをした。

  彼女が大声で、マスイさんにトシたちが来ていることを伝えた。
 急にみんなの話し声が途絶え、いっせいに振り向いた。
 ようやく彼がトシの存在に気づいたようで、「オウ!」とか言いながら、つかつかとトシのほうに近づき、両手でトシの手を確かめるように握った。
 「来てくれたか!嬉しいな!」
 部屋にいたみんなに、大声でトシ達を紹介した。
 今まで話し込んでいた人たちの存在を忘れてしまったかのように、今度はトシと妻に、興奮したように、次から次に、せき込んで話を浴びせてきた。
 トシにすれば、一言だけ、やってきたことを告げて、会場の方に戻ろうと思っていただけに、ここにとどまるつもりはなかったのである。
 早々に出て行こうとするトシの様子を感じたのか、「出て行くんじゃないよ!どこか近くにいてくれないか?」と言った。
 「ハワイでなく、日本で、こうしてトシに会えるなんて信じられないよ!」と言った。
 ハワイの彼のオフィスで、来客がいて忙しそうにしている彼を見て、「また来るよ!」と言って立ち去ろうとするトシに、
 「逃げるなよ!」と言った彼の声を思い出してしまった。
 このままだと、トシ達が九州まで帰ってしまうのではないかと心配するかのようだった。
 
 この状況の中で、ここにとどまるのは賢明でない。
 閉会後に、またマスイさんのところに来るからと説得して、強引に会場に戻ってきた。

 祝賀会の司会は、テレビでよく見るアナウンサーだった。

 

(マスイさんが眠っている妙法寺のゲート)

 

 

 (境内に咲いていた花)


" Fish in the Hawaiian sea " ( ハワイの魚たち )

2012-10-23 14:18:14 | 日記

 

 誰かがマスイさんのオフィスを訪れる場合、アポイントが必要だった。
 入り口の秘書の部屋で、自分の名前を告げると、秘書が奥の部屋に案内してくれた。
 トシの場合、「いつでも、好きな時に入って来いよ!」と言われていて、秘書もそのことを知っていたので、トシの顔を見ると、
 "  Doctor is there!  "  (先生、いますよ!)の声を聞きながら奥に入っていっていたのである。
 秘書は二人いて、一人はアメリカ人、もう一人は、日本人で、名古屋の出身、名古屋大学からミシガン大学の大学院を出ていた人である。聡明で美人で、きれいな英語を話した。

 マスイさんのオフィスを訪ねて行くと、よく来客があったり、電話がかかっていたり、何か忙しく書類を覗きこんでいたりして、そのようなとき、秘書に、
"  I'll come later!  " (また来るから!)とか言って、そっと抜け出すように出て行った。

 マスイさんは、トシが来た事さえ気づかない時もあった。
 来客と話をしている時など、忙しそうなので、「後で来るよ!」と言って出て行こうとすると、「おい!トシ、逃げるな!」とか言って、秘書に向かって大声で、
"  A cup of coffee for Toshi !  " (トシにコーヒをあげて!)と叫んだ。

 日米文化の交流に貢献したとしてマスイさんが表彰された。
 アメリカで祝賀会が盛大に行われた様子が大きく新聞に出ていた。トシは、ちょうど日本にいたころで、出席できなったのは残念だった。
 ところが、本人も予想してなかったようだが、日本でもう一度祝賀会を催そうとする動きが出てきたのである。
 発起人は、国立病院の院長、大学の先生、実業家、テレビの関係者などさまざまだった。
 それを聞いて、マスイさん自身は困惑した様子だった。
 「ありがたいけど、また怜ばったところに引き出されるのか!」と言っていた。しかしめでたいことで、結局東京の九段にある日大會舘で開催されることになったのである。
 日大會舘は、一流のホテルみたいで、宿泊施設、結婚式場、宴会場などがあり、学会などの大きな国際会議も開かれるとのことだった。

 マスイさんは、ハワイでは、いつもアロハシャツを着て公務をこなしていたが、流石日本ではそういうわけにいかず、アメリカで学会に着て行くスーツを持ってきたようだが、それでも日本では、ダーク系のスーツしか似合わないということで、急きょ、来日してから銀座のテイラーを訪ね、5日間で新しいスーツを作ってしまった。
 「びっくりしたぞ、トシ!日本では5日でスーツができるのだよ!」と言っていた。

 当日、午前中の講義をこなして、妻と二人で福岡から飛行機で羽田まで飛んだ。
 会場に着いた時は、夕暮れ時で、開会ぎりぎりの時間だったように思う。受付で出席者名簿に名前を記入して、会場を覗くと、正装した男女の群れであふれていた。
 男たちは、高級なスーツで身を包み、女性は、ドレスで、あるいは和服で着飾っていたのである。
 数百人の人たちが会場のあちこちで会話をしながら、開会の時間を待っているようだった。漂う雰囲気に圧倒される思いで、呑まれてしまいそうな気がしたのを覚えている。

 

                    (トシの美術館)

 マディが、お絵かきの道具を肩の担いでやってきたので、
  "  Are you going to paint a picture ?  "  ( 絵を描くの? )
  "  What are you gonna paint ?  " ( 何を描くの ?)
  "  Fish in the Hawaiian sea.  " ( ハワイの海にいる魚 )
  "  Is that a homework ?  " ( それ、宿題 ? )
  "  Yes.  "  (そうだよ )
  "  When is the due date ?  " ( 〆切はいつ ? )
  "  Tomorrow  " ( 明日 )
  "  What ?  "  ( なんだって ? )
 


" A Japanese temple in Hawaii " ( ハワイの日本のお寺 )

2012-10-18 19:00:09 | The Busで小さな旅

 

 

        (妙法寺の境内を歩いているとせせらぎの音が聞こえた。見下ろすと小川が流れていた)

 初めて妙法寺に行ったとき、場所を教えてもらって4番バスに乗った。
 日本領事館近くのヌアヌというところだった。バスは、メトカーフからワイルダーを通りダンタウンに降りて行った。
 メイシーズ・デパートの裏手に着いた時、乗客がすべて降りてしまってトシ一人が残った。
 バスはすぐには動こうとしなかったのである。そのうち、ついにドライバーまで降りてしまった。「はて?、終点かなあ!」と思いながら、それでもじっとしていると、別のドライバーが乗って来た。
 一人座っているトシを見て、「はーい!」と声をかけた。そうこうしていると、一人また一人と客が乗って来た。

 " Excuse me !  I wanna go to Myohoji Temple.  Is this bound for that ?  " (スイマセン!妙法寺に行きたいので すが、このバスでいいですか?)
  " Is that a Japanese temple?" (それ日本のお寺のことですか?)

 いくつかお寺があるのは知っているが、そのどれが妙法寺なのか知らない、と言った。
  "  You stay there.   I'll take care, OK ?  " (そのまま乗っていて! 見つけてあげるから、OK?)

           (うっそうとした木々に囲まれた境内)

 バスが動き出した。乗客は10人くらい。
 突然、ドライバーが、大声で叫んだ。
  "  Anyone !  Who knows where the Myohoji Temple is ?  " (誰か妙法寺がどこにあるか知りませんか?)
  みんなが、「ノー」と言った。
 バスは走り続けた。

           (妙法寺の入り口)

 ドライバーが、急にバス停でないところにバスを止めた。運転席から立ち上がり、バスから降りて行った。
 近くの石油スタンドに入っていったのである。しばらくして戻って来た彼が、トシにというより乗客全員に向かって、"  I've got it.  "(わかったよ!)と言った。
 しばらく走って、またもやバス停でないところで停車したのである。
 "  This is it !  " (ここがそうだよ!)
 ドライバーに、そして後ろの乗客に向かっても、 "  Thank you !  " と言ってバスを降りた。何とも長閑なローカルなバスだった。

         (妙法寺の前の大通り、前方に日本領事館がある)

  妙法寺には、マスイさんが眠っている。奥さんは、アメリカ人だからキリスト教である。マスイさんは、仏教徒で、彼の家系は代々日蓮宗のようだった。したがって妙法寺は日蓮宗のお寺である。
 妙法寺の管長に会った。佐賀の出身とのことだが、アメリカ生活が長いようで、いきなり英語で話しかけてきた。
 「よかったですね。マスイ先生に会えて!」と言った。
 この世にいない人に「会えて!」はないものだが。
  


" What do you say to dancing Hula ? " ( フラダンスはいかが? )

2012-10-13 07:51:55 | フラダンス

 

 ハレクラニホテルの芝生のガーデンに、海を背にして大きな木が立っている。
 その木の陰になるところにステージがあり、毎夕三人の歌手と一人のフラダンサーがショーを行っている。
 観客席が、ステージを取り巻くように扇型に広がっていて、お客さんたちは、それぞれの席からショーを見ながら、ビール、カクテル、軽食などを楽しんでいる。

 もう数十年にわたって、元「ミス・ハワイ」のカノエ・ミラーさんが音楽に合わせてフラダンスを踊っているのだ。
 トシはハワイに来るたびに、なんとなくこのショーを見れるのを心待ちにしてやってくる。
 席に案内されると、ポテトチップスのバスケットが運ばれる。
 トシの場合、ビールから始まり、カクテルの「ブルーハワイ」、それに「ビーフ・スキュワー」(ビーフの串刺し)を注文することが多い。
 時間になると、西方に太陽が沈んでいくのが見えるのは、何とも感動的である。
 
 日本人の、それも一見して新婚だとわかる人たちがよく来ていて、ミラーさんは、ショーの途中ステージから降りて、それらの人たちに近づき、

  "  Are you on a honeymoon?  "  (新婚旅行でいらっしゃったのですか?)
  "  Are you from Tokyo ?  "  (東京からいらっしゃったの?)
  "  Do you want any music to play ?  "  (何か歌ってほしい曲がありますか?)
 とか、簡単な英語で尋ねている。

 これら新婚旅行で来た人たち( newlyweds )は、感激の面持ちで、一生懸命英語で答えているのが印象的である。
 ミラーさんに、一緒に写真を撮ってもいいですか?と尋ねたり、リクエストの曲を申し出たりしている。
 ほとんどの人が、「Hawaiian Wedding Song」(ハワイアンウエディングソング)、「Beyond The Reef」(サンゴ礁の彼方)、「Aloha 'Oe」(アロハオエ)、「Blue Hawaii」(ブルーハワイ)など日本人になじみの曲をリクエストしているようだ。
 自分たちだけの為に、歌い奏でてくれるのだから、いい思い出になることだろう。
 
 カノエ・ミラーさんとお話をしたことがある。
 日本で加山雄三さんの番組に出たことがあると言っていた。この方、アメリカでは有名で、ハリウッドの映画にも出たことがあり、日本のNHKの英語番組に出たことがあるようだ。

 NHKの英語番組といえば、慶応大学の北村さんのことを思い出してしまう。
 彼は、もう亡き人だが、ハワイ大学で、時々会うことがあったし、友人の家のディナーで一緒になったこともあり、パーティで会ったりしていた。
 北村さんは、4年間にわたりNHKの教育番組で英語講師をしていた人である。
 時代がちょっと違うので、カノエ・ミラーさんと一緒に出たわけではないが、ミラーさんと話をしていて、北村さんのことを思い出してしまった。
 ハワイでかつて知り合ったひとたちが、一人ひとり亡くなっていくのを知って、さびしく、気持ちが落ち込んでしまう。
 北村さんは、トシが住んでいる北九州のことを熱く語ってくれたことがある。
 仕事がら福岡にはよく来ていたようだが、北九州は縁がなかったようで、辛うじて汽車で通り過ぎる時目にした八幡製鉄の林立する煙突から黒い煙がもうもうと出ていたのを覚えていますよ、と語ってくれた。
 おそらく昭和の30年代のことだろう。
 いつか小倉駅近くのすし屋で食べたお寿司が、東京のどの店で食べたのよりおいしかったという思い出があるようだった。

 

  

 写真のこの人は、ミスハワイでなく、「Hawaii Queen」 (ハワイクイーン)である。
 横に写っている人は日本人観光客で、「一緒に写ってください!」と言われて、「いいですよ!」と心やすく応えていた。
 
  "  Is there any difference between "Hawaii Queen" and
     "Miss Hawaii" ?  "

 彼女に、「ハワイクイーン」と「ミスハワイ」の違いはなんですか、と訊いたところ、
  "  I don't posssibly understand well, but "Hawaii Queen"
     is chosen among Hawaiian descendants and
     "Miss Hawaii" is chosen from the Hawaiian public in
     general and " Miss Hawaii" is qualified to proceed to
    "Miss America" contest.  "

 (はっきり理解しているとは言えないのですが、ハワイクイーンは、いわゆるハワイアンの子孫から選ばれて、ミスハワイは、ハワイに住んでいる人であればだれでも対象になるということです。それにミスハワイは、ミスアメリカのコンテストに出場の資格があります)と答えてくれた。


" A cute little lady " ( かわいい女の子 )

2012-10-08 06:18:35 | 日記

 

 フラショウを見に行った。
 プロのでなく、文化教室の発表会みたいなものだった。
 小さな子供たちのショウもあり、年配の女性たちのショウもあった。
 小さなステージが作られていて、簡易に作られた椅子席はもういっぱいのようだ。
 トシは、ステージの近くの地面に布かれたカーペットにあぐらをかいて座った。

 トシの横に女の子がやって来て、ちょこんと座った。
 こちらをチラチラ見ているようだったので、"  Hi !  " (はーい!)と声をかけると、彼女も "  Hi !  " (ハーイ!)と返事をしてきた。
 何かを言いたそうだったので、
  "  Are you alone ?  " (ひとりで来たの?)とか他愛ないことを訊くと、サッ!と立ちあがりどこかに消えて行った。
 後方の席にお母さんがいるようで、こちらを見て笑いながら、二人で話をしている様子が見えた。
 お母さんらしい人が、トシに向かって手で合図をしたので、トシも手を振って返した。
 ステージには、子供たちの出演者たちが並び始めたので、そちらの方に気を取られていると、さっきの女の子が、再び戻って来て、横にちょこんと座った。

  "  Are you living in Hawaii Kai ?  " (おじさん!ハワイカイに住んでいるの?)と訊いて来たので、びっくりして、
  "  Why do you say so ?  " (何でそう思うの?)と言うと、
  "  I'm living in Hawaii Kai.  " (私ハワイカイに住んでいるの)と言った。
  "  I'm not living in Hawaii Kai.  " (ぼくはハワイカイには住んでないよ)
  "  Then, where are you from ?  " (じゃあ、どこに住んでいるの?)
  "  I'm from the earth.  " (地球だよ!)と冗談めかして言うと、
  "  You!  Kidding !  " (冗談ばっかり!)と言って大声で笑い出した。

 トシがカメラを持っているのを見て、
  "  Will you take a picture of me ?  " (私の写真を撮ってくれる?)と言うから、"  OK  " (いいよ!)と言って撮ったのが下の写真で、いざというときに急におどけて、こんな顔に写ってしまった。