マディと愛犬ユーリ、親友のクリスティ、それにハワイのこと

ハワイに住んでいたころ、マディという女の子が近所に住んでいて、犬のユーリを連れて遊びに来ていた。

" Telephone call ! " ( 電話がかかって来た )

2012-05-28 17:11:46 | 日記

 

 マスイさんとは、大学の中では、学内の電話でよく連絡することはあっても、彼からトシの自宅に電話をしてくることはあまりない。
 ある時、夜、マスイさんから電話がかかってきた。ベルが鳴るので受話器を取り上げ、
 "  Hello, this is 000-7851, Toshi Yamada speaking!  " と言うと、
 「 ああ、トシ!」と日本語が返ってきた。 マスイさんだった。
 「最近会ってないけど、どうしている?」
 「別に、元気だし、いつも通りだよ!」
 「明日ランチを一緒にどうかなあ?」
 急な用事でもあるのかと思ったが、どうやらそうでもなさそうだ。
 「そうしたいね。明日11時半にマスイさんのオフィスに行ってみようか?」
 「そうしてくれる?」
 「ところでトシ、シャーロット・サマーフィールドと言う女性を知っているのかね?」
 「知っているよ、近所に住んでいるから」
 シャーロット・サマーフィールドと言うのは、マディのママのことである。

 マスイさんの話によると、数日前ハワイの図書館学会の総会があったらしいのだ。
 出席者は、200人ぐらい。
 過年度の事業報告、決算発表、新しい年の事業計画、予算審議などがあり、最後に、例年のことながら著名人を招いての講演会があり、それらがすべて終わると立食パーティがあるようなのだ。
 いつもだと講演者は、アメリカの大手の出版社の社長、ノーベル賞学者、シェイクスピア学者、大学教授などの著名人が選ばれ招かれる。
 ところが今年は、マスイさんが選ばれて講演をしたということである。

 マスイさんも有名人である。
 彼の著作は、ほとんどが英文で書かれていて日本ではあまり馴染みがないのだが、それでも10冊くらい日本語で、しかも日本の出版社から発刊されている。
 難しい研究書がほとんどだが、軽い読み物もある。
 終戦後、奨学金を得てアメリカに渡り、苦学しながらの波瀾万丈の冒険談が日本の新聞で連載になった。それをまとめて一冊の本にして出版したりしている。
 アメリカの滞在歴が数十年にもおよび、本人に言わせると、日本語を忘れてしまったとかで,日本語で何かを書くことには自信無げだった。
 よくトシを呼び出して、「これをちょっと読んでくれないか」とか言って、二人で読み合わせをしながら文章を訂正したりしていた。

 大学の東洋図書館長、しかも評議委員もしていて、いわば大学のトップにいる人だった。
 奥さんとは、ハーバード大学で知り合って、恋仲になり結婚した。
 奥さんの方が先に博士号を取ってしまい、彼は、奥さんにも言ってないそうだが、そのことにずっと負い目を感じていて、5年間は、寝食を忘れて研究に励み、ようやく彼自身も博士号を得ることができたようだ。
 奥さんは、著名なお医者さんで、どこにいてもキャリアを積むことができたと思うのだが、彼が転勤するとその都度彼について移動した。
 彼と一緒のときは、出しゃばるでもなく控えめで、彼を立てている姿はいじらしいほどだった。
 トシと知り合った時は、すでに州立病院の副院長をしていて、人の上に立つ管理職だった。病院では、威厳をもって部下にてきぱき指示を出していたと思うのだが、トシと話すときなど、そんな人には見えず、いつも穏やかで人懐こい人だった。
 彼女はアメリカ人だが、マスイさんにはもったいないくらいの美人だった。

 マスイさんと初めて出会ったのは、勿論ハワイ大学だったが、後で思い出しても、その出会いは一風変わったものだった。
 ジャクソン教授が、トシが資料集めで困っていた時、それでは、「ドクター・マスイに相談したら?私が電話をしてあげるよ!」と言ってくれて、紹介してくれたのが最初だった。
 マスイさんのオフィスを探しながら、ようやく見つけて中に入っていった。
 「ジャクソン教授の紹介でやって来ました」と言いながら、訪れた目的を話すと、その紳士は快く応対してくれた。
 秘書を呼び、トシに手助けするようにと指示してくれたのである。

 後でオフィスに帰って、ジャクソン教授に、「ありがとう、おかげで助かった!」と言った時、ハタッと思い当たったのである。
 「彼は日本人なのに一度も日本語を話さなかった!」
 ジャクソン教授にそのことを言うと、「間違った人のところに行ったのでは?もう一度電話をしてみようか?」ということになったが、果たして、「私のところに彼はまだ来てないよ!」とのことで、トシは別人のところに行っていたのである。
 改めてマスイさんのオフィスを訪ねて行き、あいさつをした。今度は、はじめから日本語で話したのである。
 別人に会ってしまったいきさつを話すと、彼は声を出して笑った。

 図書館学会の立食パーティで、女性が近寄ってきて、
 「私はシャーロット・サマーフィールドです。ミスター・ヤマダのことはよく知っています」と言ったようなのだ。
 ただマスイさんとトシが近しい友だちだということをどこで知ったのだろう。


" I wanna go to the beach. " ( ビーチに行きたいの )

2012-05-22 17:58:38 | 日記

 

 ユーリの成長は早い。もうすっかり大人の犬だ。
 きょろきょろ落ち着かない仕草はもうない。マディ、クリスティ、トシと一緒のときは、言葉こそ話せないが十分対等の仲間で、三人と一匹の友達である。何かの相談事をしていると、ユーリは、興味津々ですぐ皆んなに加わってくるのである。

 ママが図書館の同僚からユーリを貰って来た時は、本当に小さくて、ヨチヨチ不器用に歩いていた。
 歩く動作は不安定で、視力も十分でないのか目の前にあるものが見えないようで、手当たり次第何かにブチ当たって転んでいた。
 ユーリのそんな様子は、かわいいといえばいいのか、むしろ滑稽だった。
 母親がいない以上、母乳がないので何を食べさせたらいいのか分からなくて、ママが図書館で犬を育てている経験者に尋ねたりしていたのである。
 ママもマディも、それにトシも犬をこのように小さい時から育てた経験がないのだ。
 オロオロと腫れ物に触るように気を使っていた。
 脱脂綿にミルクを含ませ、それを小さなユーリの口にあてがうようにして飲ませたりしていた。トシはトシで、米をクツクツ煮込み、ちょうど日本のお粥みたいな流動食を、時に味を変えながら作った。
 ペットショップで子犬用の缶詰など買いに行った。

 周りの人たちの、そんな不安をよそにユーリはすくすく育っていったのである。
 トシの家に来ても、蓆傍若無人にというか、気ままに家の中を、また外の庭を走り回っていた。
 図鑑を見れば、ユーリがどんな種類の犬か分かると思うのだが、だれもどの種類の犬に属するのか知らない。
 成長した今は、耳が少し垂れ気味で、体のところどころに、特に首から上の方にダークブラウンの斑点があって、足が短い。
 特にカッコいいという犬ではない。が、いつも落ち着いていて、物に動じない、人懐こくて、好奇心旺盛、そして賢い。
 勿論ご主人様は、マディということになるが、トシに対しても、クリスティに対しても、精いっぱいの愛情で接してくる。
 
 家の中、庭では、自由に動けるように放し飼いにしている。
 ちゃんとした分別を持っていて、フェンスを超えて脱走したりはしないからだ。
 小さい時、まだ首輪も引きひもを着けていなった時、だれも気づかない内にフェンスの間から飛び出して、道に出たことがあった。
 ユーリにすれば、ちょっとした冒険のつもりだったのかもしれないが、右も左もわからない頃で、丁度その時、ユーリの前に車が突進してきた。
 車は障害物を見つけ、瞬間急ブレーキをかけた。
 運転していたのは、近所に住む女性だったが、車のドアを開けて出てきた。
 ユーリの後を追って駆けつけたマディに向かって大声で、「何をしているのよ?チャンと繋いでおかないとダメでしょう!」と怒りまくっていた。
 そのようなことがあったりして、可哀想にユーリはひもで繋がれることになってしまったのである。
 せめてもということで、トシの家のなかではリードを外してやり、自由に動き回ることができるようにしている。
 
 マディとクリスティが、学校から持って帰った課題の制作で、クレヨンやノートなどを広げた真ん中にユーリが座ってしまう。  自分をのけものにされて抗議をしているかのようである。

 " Don't !  Yuri !   You understand? " ( やめてよ!ユーリ!わかっているでしょう? )
 
 見放されたユーリは、今度はトシのところにやってきて、所在無げにうずくまり、そのうちスースー鼾をかきながら寝てしまう。
 そんなユーリだが、トシが席を立ち玄関に向かうと、寝ていたはずのユーリが、俄然ダッシュして追っかけてくる。外に出るのなら追いていこうという魂胆のようだ。

 ひと段落したマディとクリスティが、顔をのぞかせ、

  "  Yuri should go out, maybe !  "
   ( ユーリを連れだしたら )
  "  Where ?  "
   ( どこに? )
  "  To the beach ! "
   ( 海岸に! )
  "   Really ?  You should ask where Yuri is gonna go ! " 
   ( 本当なの? どこに行きたいかユーリに訊いてみたら )

 隣室でユーリに話しかけるマディの声が聞こえる。
 「ユーリ、どこに行きたいの?」
 「ビーチに行きたいの」とユーリの作り声。
 「ねえ、ユーリの声を聞いたでしょう?」
 「そうゆうことなら、行こうか!」とトシ。
 本当に行きたいのは、マディとクリスティなのだ。
 
       


" Curry-rice Madie cooked  " ( マディが作ったカレーライス )

2012-05-16 17:56:52 | マディとクリスティ

 

 カレーライスといえば、インドのカレーを思い浮かべる。ハワイにも、インド人が経営しているレストランがいくつかあって、インドカレーを味わうことができる。
 トシ自身「インディアンレストラン」に行ったことがあるし、インド風のカレーを食べたことがある。
 最近では、日本のカレーライスのチェーン店である「CoCo壱番屋」があちこちに出来ている。レストランというより、カウンターで食べるファーストフッド風の感じであるが、日本人の観光客が多く訪れているようだ。

 今、マディと一緒に作っているカレーライスは日本風のカレーではない。
 どちらかと言うと、タイのグリーンカレーに似ている。
 実は、ハワイ大学の「マノアガーデン」で食べるカレーが気に入っていて、時々食べに行っているのである。
 おそらくココナッツミルクの味だろうと思うが、クリーミーでマイルド、香草の香りがアクセントになっていておいしい。
 この味を家で再現してみようと何度かやってみた。それらしい雰囲気の味にはなるのだが、実際に何が入っているのか、どのようにして作るのかはわからないままである。
 
 マディが、例によってチョッカイを出して、あれこれ質問したり、「どれくらいお米を入れたらいい?」とか「どの鍋を使うの?」とか世話を焼いてくる。
 結局二人で料理をすることになってしまった。
 肉の角切りをこんがり焼き色がつくまで炒めた。それから水を加えてコトコト煮込む。
 しばらく時間がたってから、ジャガイモ、玉ねぎ、セロリを入れて一緒に煮詰めるのである。
 かなりの時間煮込んで肉がホロホロに柔らかくなってきたところで、ウインドワードショッピングセンターで買ってきたグリーンカレーのレトルトを入れ、合わせて色どりに赤ピーマン、さらに缶詰のタケノコ(bamboo roots)を加える。
 かき混ぜると、それらしいカレーの匂いがしてくる。調味料として、塩、こしょう、メキシカンペパー、それに隠し味でナンプラーを入れる。
 最後に、湯むきしたトマトをざく切りにして入れ、香草のパクチーとレモングラスの匂いがするタクライを入れて出来上がりである。

 そこで味見である。
 マディは、カレーを食べたことがないようなので、口に合うのかなあ、少し辛すぎるかなあと思いながら、
 「マディ!味見してみる?」と、スプーンにすくって与えてみると、ニコッとして、「おいしい!」と言った。
 今日は、マディのテイクアウト用に多めに準備した。ごはんは、バターライスである。これは簡単で、炊いたご飯をフライパンで、バター、塩、こしょう、それにグリーンピースを混ぜればいい。

 次にサラダである。
 ハワイの新鮮野菜を幾種類か手で千切って盛り上げ、オリーブオイルを振りまく。ピックルズ、オリーブ、クリスピーベーコン、細長く削いだチーズを上に載せドレッシングをまぶせば出来上がりである。

 マディとママの二人が食べる量をそれぞれタッパーウエアに入れてマディが帰る時に持たせよう。
 おそらく、ママも、カレーを食べたことはないかもしれない。食事とは別に、派手な色のテーブルナフキンを二枚、香りローソクを一つ持って帰ってもらう。
 テーブルの設定をマディに紙に描いて説明した。テーブルの真ん中にローソクを立てる。マディとママの席に大きな皿、その皿に、バターライスを盛り、片側にサラダを添え、反対側にカレールウを装う。
 食べる直前に、ライスとカレーーをマイクロウエーブオーヴンで温めることを忘れないように!

 「今日は、食卓の準備をママの力を借りずに、マディ一人でやってほしいのだが、できるかなあ!」
 「もちろん!」と自信満々である。
 「デザートに、冷凍のバナナブレッドがあるから持って帰って、食事の後で、アイスクリーをその上の盛って出してくれる?」
 「了解!キャプテン!」
 「マディひとりで出来るかなあ!」
 「大丈夫だよ!」
 「それから、ここが大事なことだよ、ママが毎日マディのために働いて頑張っているから、今日のディナーは、その感謝の気持ということにしよう!」
 「『今日のディナーは、マディがつくったの!トシに手伝ってもらったけど』と言うのだよ、わかった?」
 「アイアイ・サー!と元気がいい。
 大きなタッパーの包みをいくつかぶら下げて、ユーリと一緒に歩く後姿は、滑稽だった。

 実際には、どんなふうにマディとママが食事をしたのかは分からない。でも、その日遅くなってママから電話がかかって来た。
 ちょっと涙声みたいで、途切れながら、「マディがねえ、料理をしてくれたの。何だかおいしくておいしくて!」
 「ローソクがいい香りで!」とか、話にならないようだったのである。


" Let's cook curry with rice ! " ( ハワイ風カレーライス )

2012-05-12 17:20:37 | マディとクリスティ

 

 台所でコトコト音がするのを聞きつけたのかマディが顔をのぞかせた。

 " What are you doing over there? " 
   ( 何をしているの? )
  " I'm cooking as you see. "    
   (見ての通り、料理だよ)
  " What are you cooking, then? " 
   ( それで、何の料理? )
  " I'm cooking curry-rice. "
   ( カレーライスを作ろうと思って )
  " What on earth is curry-rice? " 
   (カレーライスって何なの? )
  " You don't know curry-rice, then? "  
   (カレーライスを知らないの )
 " I'm showing how to cook, O.K.? "  
   (作り方を教えてあげようか )
  "  How about bringing it home and having curry with rice for dinner with your Mom? " 
    ( 家に持って帰って、ママと一緒に夕食で食べたら? )

 トシの家では、マディもクリスティも、台所で、「火を使ってはいけない!」、「包丁を使ってはいけない!」ということを守らせている。
 仮にも、他人さまの子供に火傷をさせたり怪我をさせたりしないためである。
 彼女たちは、そのことをしっかり守っている。
 でもトシが傍にいる時は、監視できるので、そして本人たちも傍で見るだけでは嫌なようで、手出しをしたくてうずうずしている。
 そのようなとき、お互い分担を決めて何らかの作業をすることがあるのだ。
 マディもクリスティも、トシがやることにやたら関心があるようで、ちょっかいを出して,「私、ジャガイモを洗う!」「私は、お皿をそろえる!」とか、みんなでワイワイガヤガヤ賑やかである。
 

 「火を使わない!」「包丁を持たない!」「海岸に子供だけで行かない!」は、マディとクリスティの「DON'TS」(禁止事項)である。
 マディもクリスティも、子供たちだけで、海岸には行けない。これはトシが決めたことでなく、親が禁じていることである。
 ハワイといえども、アメリカである。かわいい女の子が保護者なしで歩いていると、何が起こってもおかしくないのである。それに海は荒波が押し寄せてきて危険である。
 ただ、トシのところに彼女たちが来るようになってからは、「トシと一緒なら行っても良いよ」ということになった。
 トシより、マディやクリスティより海辺を走り回るユーリがうれしそうである。
 解き放たれたユーリは、それこそビーチを走り回るのである。だからマディは、そんなユーリを浜辺に連れ出したくてトシを誘う。
 
 マディもクリスティも、貝殻を拾うのが好きで、形がいい貝殻を見つけては、それらを持って帰って彩色したり加工するのである。
 彼女たちが作るブレスレット、イヤーリング、ネックレースの出来栄えは悪くない。マディやクリスティのお母さんが、子供たちが作ったブレスレットやイヤーリングをつけているのを見ることがある。
 出来た作品を学校の課題で出品したこともある。

 マディ、クリスティ、それにアンに初めて出会ったのは、ノースショア近くのハレイバのシュガープランテーションにトシがたまたま行っていた時だった。
 その時は、彼女たちはまだ小学校一年生で、社会見学に担任のパオロ先生に引率されてきていたのである。
 トシが花の写真を撮っていた時、三人のうちの誰かがニコニコしながら話しかけてきたのを覚えている。
 三人とも、小さくて、色が白くて、本当にかわいい女の子たちだった。
 「おじさん!写真を撮ってもらえますか?」と言ったように記憶している。

 撮った写真を後日彼女たちのところに送ったが、小学校の名前だけしか聞いていなかったので、
 
  「マウナウイリ小学校のパオロ先生のクラスへ」

 とあて名書きして、数枚の写真を同封して送ったのである。アドレスは電話帳で調べた。
 果たして着くかなあと思っていたが、後日返事が来たのである。
 たどたどしい字で感謝の文字が並んでいて、同じ封筒の中に彼女たちが作っただろう貝殻細工が二つ入っていた。
 いかにもおっかない手つきで、たどたどしく書かれたような文字であったが、それだけに子供たちのナイーブな気持ちが伝わってきたのである。

 というようなことで、今日の夕食は, curry with rice (カレーライス)である。
 


" Osuwari! " ( お座り!)

2012-05-08 20:59:57 | 愛犬ユーリ

 

 マディと交代して、今度はトシがユーリの面倒を見ることになった。

 " Madie! you go ahead up on the second floor, so that you can possibly meet Christy and her mother! "
  ( マディ!二階に行ったらクリスティとママに会えると思うから)   
 " Then , you are gonna stay here with Yuri? "
  (そしたら、トシはユーリとここにいるの?)
 " No, I'm gonna go to Coffee House for a cup of coffee. "
  ( いや、コーヒーハウスに行ってコーヒーを飲んでいるから )
  " With Yuri? " " Then, where? "
  ( ユーリを連れて? どこに行くの? )
  " You see over there the sign, Morning Brew? "  " I'm staying there, O.K.? "
  ( 「モーニング・ブリュウ」という看板が見えるだろう! あそこにいるから )

 「ユーリには、一番安いコーヒーでいいからね!」とか、トシをからかいながらマディは走り去って行った。

   ユーリを外に繋いで、店内からユーリの姿を確認することもできたが、やはり外のテーブルでユーリと一緒にいることにした。
 ユーリにも、ベーグルを買ってこようかなあ!
 ユーリは、賢くて聞き分けのいい犬だ。一緒にいても騒ぐこともなく大人しくしているから助かる。時々話しかけてやると、いちいちに反応をしてくれるし、相手が動物でなく人間に見えてくる。何となくユーリと会話をしたくなる気分だ。
 トシとユーリが一緒のときは、日本語で話しかけるときがある。
 「お座り!」とか「お手!」などの言葉も覚えた。言葉が返ってくることはないのだが、ユーリの反応する様子から以心伝心気持が通じているように感じてしまう。

 「モーニング・ブリュウ」は、トシのお気に入りのコーヒーショップで、この町に来ると、よく訪れるところである。
 ここのコーヒーはおいしい。美味しいのはコーヒーだけでなく、ベーグル、バーガー、サンドイッチ、サラダなどもそうである。

 このブログで以前、この店を訪れた時のことを書いたことがある。
 小さな女の子が、店の中で手まりをなくして、泣き顔をしながらテーブルの下や隅みっこの方を探していた。
 思わず近くにいた女性に、「私の毬をみませんでしたか?」と尋ねたのである。
 その女性は、「では、一緒に探してあげましょうか、オジョウちゃん!」と言った。
 少女は、カウンターで並んで順番を待っていたお母さんが、転がって来た手まりを拾い上げ後ろ手に持っていたのを知らなかった。
 手まりを探してほしいと依頼されたその女性は、母親がすでに手まりを持っている状況を知っていた。少女が反対側を探している間に、母親のところに行き、一言二言会話をした後、戻ってきた。
  
 "  I've got the ball, Young Lady!  Is this the one you are looking for?  "
   (オジョウちゃん! みつけたわよ、これがあなたが探していたものなの?)と言うと、
 女の子は、今にも泣き出しそうにしていたのに、急に満面うれしそうな表情になり、思わず探してくれた女性に抱きついた。感謝の気持ちを懸命に伝えようとしていた。
 トシは、そのような光景の一部始終を見ていて、なんとなく爽やかな印象として今でも覚えているのである。

 「モーニング・ブリュウ」は、そんなに広くはなくテーブルが整然と並んでいるわけでもなく雑多な感じであるが、雰囲気は悪くない。吹き抜けの二階があって、そこから下の店内が見渡せる。
 いつも満席で、時間によっては行列ができている。
 店内で、食事をしたりコーヒーを楽しむもよし、カウンターからテイクアウトしていく人も多い。
 パソコンを持ち込んで何やら没頭している人もいる。
 なにしろコーヒーは安くておいしいのである。大きなマグカップにタプタプに入ったコーヒー、House Coffee が、1ドル77セント、店のオリジナルコーヒーもいく種類かあって、どれもおいしい。
 子供向けのKid's Hot Chocolateなどもある。
 Coffee Breveと言うのも気に入っていて、クリームがのった上面にいろんな図柄を描いてくれる。

 朝食のメニューが豊富で、Breakfast Burritoなどがいい。スクランブルエッグ、アボカドなどたっぷりの野菜、生ハムやチーズ、サルサなどバエティに富んだ食べ物である。
 週末には、ライブの音楽がある。バイオリンやギターでクラシック音楽を聴きながらのひと時は何とも優雅である。