マディと愛犬ユーリ、親友のクリスティ、それにハワイのこと

ハワイに住んでいたころ、マディという女の子が近所に住んでいて、犬のユーリを連れて遊びに来ていた。

" Which way shall I go ? " ( どっちに行こうかなあ? )

2013-12-21 23:48:59 | 旅行

 

 

 ( 3 )

 

 " Which way shall I go ?  Where is this going for? " ( どこに行こうかなあ?この道何処に行くの? ) 
  "  Only one way, you know.”  "This road goes round the island and comes here again.
  "  Here is the final destination.  " ( 道は一つしかないよ。この道は島を一巡りしてまたここに帰ってくる。つまりここが終点ということだよ )
 ということだったので、とりあえず右回りで行くことに決めた。
 車を走らせながら景色を楽しんだ。
 こんなのんびりした気持ちになれたのはずいぶん久しぶりという気がした。
 街並みの人家が途切れて、しばらく木立の中を進むと、突然海が見えてきた。
 紺碧の海と白い砂浜のビーチが見えて来た。海辺の木立の合間に点々と瀟洒な家が点在していた。おとぎの国のような風景で、これらの家にはだれが住んでいるのだろう。
 このようなところに来るなど全く予想していなかった。

 そういえばこのあたりは、別荘地として知られていて、かつての大統領も近くに別荘を持っていて、世界中からやってくるVIPを招待しているということを新聞で読んだことがあった。
 ニューヨークやボストンの金持ちたちがここでひと夏を過ごして、秋になるとまたもとの都会に帰っていくようだ。
 したがってピークシーズンになると島の人口が何倍にも増えて、途端に華やいでくるということも肯けた。

 メインの秋は、紅葉が満開できれい。
 マスイさんが、よくメインの秋の話をしてくれた。
 「どこまで行っても紅葉の道が続き、あの息をのむような景色は、日本のどこにもないよ!」と言っていた。
 マスイさんが、ハーバードにいたころ同じくハーバードの医学部で勉強していた奥さんと知り合った。
 デートでニューイングランドをドライブしていたようで、その時のことを懐かしそうに話してくれた。
 マスイさんにとっては、この風景がただ単に美しいというだけでなく、あちこちが思い出の場所でもあるのだろう、自分たちのエピソードと重ねて当時のことが好ましく思い出されるようだった。
 「トシ!休暇をとって一緒にニューイングランドを旅行しようか?」など冗談かと思えることも言ったことがある。
 「僕もペンシルバニアにいたから、大体どんなところか想像できるよ」
 ペンシルバニア州立大学は、アパラチアン山脈の麓にあって、ニューイングランドの最南端といえるところに位置していた。
 秋になると全山が紅葉して、絵ハガキを見るような景色であった。おそらくニューイングランドのそれも同じだろう。
 
 親しくしてくれていたバイテル教授の家にはよく行った。
 彼の家は、大学から離れて、アパラチアンの樹海の中にあった。舗装をしてない曲がりくねった道を30分も走ると彼の家があった。
 彼の家に行くためには、自家用車だけが頼りだった。いつも誰かが車に乗せてくれた。
 このあたりは30軒ほどの集落になっていていた。お互い家と家の間が百メートルぐらい離れていて、いかにも静かな環境で、都会の生活でなくひっそりと田舎暮らしを楽しんでいる人たちが住んでいるようだった。
 手作りの庭でなく、自然がそのまま庭になっていて、それがいかにも似合っている感じだったのである。
 大学の先生の家が多いようだったが、アーティストなども住んでいた。近くに引退した老夫婦の家があって、寂しいのか週末など遊びに来ていた。

 

 


" How large is the population here? " (ここにどれくらい人が住んでいるの?)

2013-12-05 18:13:22 | 旅行

 

( 2 )

 

 

 彼と彼のポルシェが 「スターン」(stern:船尾)から、もたもたしながらもようやく乗り込むのを待っていたように、結わい綱が外され、フライブリッジにいた船長が、大声で 「ゴーヘー!」(Go ahead!:前進)の合図をだした。
 その合図を待っていたようにひときわ大きなエンジン音を発してフェリーは、白いスクリューの渦を残しながら港を後にした。
 彼は、あわただしい気持を脱して落ち着いてきた。前後を考えず、衝動的に船に乗ったことを後悔していなかった。
 船尾から、白い航跡を残しながらフェリーは進んでいった。今しがた出てきた港のほうに目を向けると、あの懐かしいというか、アメリカの良き時代を思い起こさせる古い家並みが目に入ってきた。
 絵葉書を見るようにその風景を眺めていて、はっと思い当った。ヒッチコックの「鳥」の映画で見たボデガ湾そのものだったのである。

  "  ... she drives about an hour north of San Francisco to Bodega Bay, where Mitch spends the weekends with his mother Lydia and young sisiter Cathy...  "
 
 ( 彼女は、サンフランシスコから北のほうに一時間ほどかけて車を走らせる。そこは恋人のミッチーが母親のリディアと妹のキャシーと週末を過ごすところである )とある、あのボデガ湾である。
 ボデガ湾は、東海岸でなく、西のサンフランシスコ近くだが、どういうわけか一瞬ボデガ湾かなあと思ったほど、この港町と風景が重なったのである。

 フェリーに乗ったのは、咄嗟の判断だった。いったいこの船はどこに行くのだろう。
 左右を見渡すと、あちこちに小さい島が見えた。それらの間を縫うようにして船は進む。20分も経っただろうか前方の島に灯台が見えてきた。
 ほかの島に比べるとちょっと大きめの島だった。海岸に沿うように家々が見えた。フェリーは、まっすぐにその島の港を目指し進んだ。

  "  All I could see from where I stood was three long mountains and a wood
      I turned and looked the other way and saw three islands in a bay  "

  ( 私が立っているところから見えるものと言えば三つの長い山と森だった。
    振り向いて反対側に目を向けると湾の中に三つの島が見えた )と、地元出身の詩人エドナ・ミレーが詠んだ詩の風景があった。

 防波堤で囲まれた港の一番奥深いところにフェリーは入っていった。
 減速しながら、やがて桟橋に接近すると、「アスターン!」(astern:逆スクリュー)と叫ぶ船長の大声が聞こえた。
 船はやがて接岸した。陸上に結わい綱が投げられ、完全に留まってから先ず乗客が下船していった。頃合いを見て今度は、車の下船である。
 ドライバーたちが一斉にエンジンをふかし始める。グレッグも、係に促されながら車を動かし上陸した。

 過疎の孤島にでも行くことを想像していたが、意外や港町は人であふれ、にぎやかだった。
 おそらく観光地なのだろう。海岸沿いの道に店屋がいっぱいあった。看板に描かれたロブスターやサーモンがやたら多いことから海産物が目玉のお土産かなあという気がした。
 とりあえず港の広場に車を停めて、近くを散策することにした。考えてみると、昼をすでに過ぎているのに、食事をしていなかった。急に食欲を感じてきた。
 カニを積み上げた露店が目についたので、立ち寄った。カニのむき身を適当な重さで買った。

   "  How large is the population here?  " ( ここはどれくらい人が住んでいるの? )
    "  This island has a population of two thousand or so, maybe, but in peak season becomes double.  " ( この島には2,000人くらいかな、でもシーズンになると倍増するよ )