( マディ + " a little bit " 《少しだけ》 トシの美術館: 愛犬ユーリの絵 )
" Don't ! Don't move ! I'm drawing. You understand ? " ( だめよ! 動いてはダメ! 今描いているところなんだから、わかっているの? )とか、マディは、動き回るユーリを叱りながら、悪戦苦闘である。
まあ、しかし頑張ったおかげで、この絵は、雰囲気としてかなりユーリに似ている。
トマソン先生がマディが持ってきた宿題の「ユーリ」の絵を見て、笑いながら、
" How 's Mr. Yamada ? " ( ミスター・ヤマダは元気ですか? )
" Oh ! He's fine. ( トシは元気ですよ )
マディが、そんなに絵を上手に描けないのをトマソン先生は知っている。トシが傍にいて共同制作している情景が先生の脳裏に浮かんだのだろう。
それを感じ取ったマディがすかさず、
" He helped me a little bit. " ( 彼が 《ちょっとだけ》手伝ってくれました )と言い足した。
マディが、お絵かきの時間に、うまく描けなくて、いつも渋い顔をしながら頑張っているのをトマソン先生は見ていた。
社会科の宿題など、マディは飛びぬけて才能を発揮するのだが、絵の宿題のような手を動かしたり、粘土細工や工作をするのは得意とは言えないのだ。
「ねえ、トシ、何にしようか?」と相談に来た時には、「オリガミはどうだい?」と言ってしまった。
ところがトシ自身オリガミを、ちょっと複雑なものは折ることができないのだ。
マディが、「コイ・カープ( koi-carp )を描くのはどうかな?」と言った。
マディは、以前カニオヘの平等院テンプルで池の中を泳ぎまわる鯉を見てすっかり魅せられていたのである。
ハワイの海にも、色鮮やかな熱帯魚が泳いでいるが、鯉は、それらとは違って華麗できらびやかで、優雅に泳ぐ姿が、マディにはえらく気に入っているのである。
一度ハワイプリンスホテルで、「鯉」の絵の展示会があるのを知ってマディを連れて行った。
一通り見て回った後で、もう一度見ていい?と言うから、もちろんと言ったら、再び彼女は食い入るように一つ一つの作品を見入っていた。
余程鯉のことが気に入ったのだろう。その後は、暇なとき思いついたように、「平等院に行こうか?」とか言って、ユーリ、クリスと一緒に行ったりしている。
本人は、この度の宿題に鯉の絵を描いてみたいという気持ちがあったのだろう。