マディと愛犬ユーリ、親友のクリスティ、それにハワイのこと

ハワイに住んでいたころ、マディという女の子が近所に住んでいて、犬のユーリを連れて遊びに来ていた。

ハワイの場末のレストラン

2010-08-07 14:19:59 | 日記

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 北九州八幡駅前の、ちょっとファンシイな洋風レストランに、ランチスペシヤルとして、ハワイ料理の「ロコモコ」が出されるようになった。
 ハワイで食べるのと違って、ちょっと上品によそおっていて高級料理に見える。
 懐かしいグレビーソースの香りを味わいながら、フッと、ハワイを思い出したりしている。あの懐かしいハワイの温かな風が通り過ぎていく気分である。

 最近では、日本でも、ロコモコ料理をメニューに加えるレストランが多くなった。
 元はといえば、ハワイのクイジンであるのは知っていたが、てっきり、ハワイの伝統料理だろうと思っていた。
 ハワイで、友だちと話していて、
 「ロコモコはハワイの伝統料理だろう?」と言った時、彼が、
 「ロコモコは、日本料理だよ!」と言った。
 「エツ!ぼくは、日本人だけど、知らないよ」
 物知りの彼によると、ロコモコの発祥地は、ハワイ島のヒロだそうだ。

 第2次世界大戦が終わったころ、ヒロに、少年のフットボールのティームがあって、少年たちは、毎日遅くまで練習をしていた。
 練習を終えた後、腹が減った彼らに、スポンサーが料理を振舞っていたそうである。
 料理を作っていたのが、レストランを経営していた日系の女性で、お昼の残りの材料で、手っ取り早く、何らかの料理を拵えたのである。
 大体が、皿にいろいろな食べ物を寄せ集めて載せた、日本でいう「丼」みたいなものだった。
 どう見ても、上品な食べ物ではなかったが、子供たちの食欲を満たすのには役立ったのである。

 しかも、この「ロコモコ」という料理名を、この少年たちが勝手につけたものらしいのだ。
 「ロコ」(loco)、おそらく、ローカルのことで、地元の、という意味であろう。
 「モコ」(moco)は、ハワイ語で、「ごちゃ混ぜ」という意味らしい。
 現在のロコモコは、白いご飯の上に、ハンバーガーを乗せ、その上に、半熟の卵の目玉焼きをかぶせて、たっぷり、グレビーソースをかけたものである。
 付け合わせに、マカロニサラダやマッシュドポテイトを加えたりしている。
 ヒロの日系人女性が子どもたちに出していたロコモコは、昼間の料理で残った、肉、ソーセージ、ハンバーグなどを、ご飯に乗せ、その上に半熟の卵の目玉焼きをのせた、ごく簡単な料理であったようだ。
 
 したがって、ハワイ古来の伝統料理だと思っていたのは間違いで、ここ60年ぐらの歴史しか経ていないのである。
 こんなふうに、ロコモコ料理の起源を訊いてちょっとびっくりしてしまった。
 今では、ハワイの郷土料理として誰でも知っている。
 最近では、場末の食堂といったところばかりでなく、高級なホテルのレストランでも、この料理がメニューに載るようになった。
 さすがに、このようなレストランでは、高級感あふれるような出来具合になっている。
 きれいな皿の上に、フライドライス、ハンバーガー、卵の目玉焼き脇には、色鮮やかな温野菜などが、格好良くしつらえている。
 ハワイの花など一輪、上に載っていて、いかにもフランス料理といった感じである。

 初めて、ロコモコを食べたのは、ハワイ大学のマノアガーデンだった。ずいぶん昔のことである。
 いくつかのランチメニューの中に、たまたま、ロコモコがあった。
 大きな皿に、2スクープのライス、ハンバーガー、その上に卵の目玉焼き、グレビーソースがたっぷりかかっていた。
 脇に、マッシュッドポテイトが添えられていたように思う。
 意外に日本料理の感じで、おいしかった記憶がある。
 今でも、マノアガーデンには、ロコモコのメニューはある。

 ロコモコは、いわば、B級のグルメで、そんなにかしこばって食べるものではない。
 ちょっと、田舎の方に出向いて、小さなレストランに立ち寄ると、ロコモコに出会う。
 大雑把にプラスティックの容器に入って出てくる。
 テイクアウトしてもいいし、そこで食べてもいい。
 大概は、スティームドライスに、ハンバーガーが載っていて、その上に卵焼きが載ってでてくる。添え物として、マカロニサラダやマッシュッドポテイトなどが付いている。
 みんな、ガツガツ食べていて、とても上品な食事とは言えないが、それでも、この料理を食べると、ハワイにいる雰囲気を実感してくるのである。

 夕暮れ時、カパフル通りを散歩する。
 ワイキキから、山手の方に向かう道である。
 この道の両側には、必ずしも、きれいとは言えない、古びたレストランと言ったらいいか、食堂のようなものが並んでいる。
 日が落ちたころから、人々が集まってくるのである。
 それぞれが、どこかのレストランに入って行く。
 日本料理店もある。中華、ハワイアン、イタリアン、メキシカンなど、さまざまなレストランが連なっている。
 
 この一角に、「レインボウ・ドライブイン」というのがあって、この店によく立ち寄る。
 「ロコモコ」を注文する場合が多い。
 特に、おいしいというわけではないが、何か、素朴な、野性味あふれる、ローカルな雰囲気を感じてしまうのである。
 食堂の前のテーブルで、ロコモコとペプシコーラで食事を楽しむのはいい気持である。
 すっかり、ハワイに溶け込み、ハワイ人になってしまう。