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アメリカ人が、イギリスのヒースロー空港からロンドンに向けて、車を走らせていて、途中休憩地に立ち寄った。
トイレの入り口に「WC」と書かれているのを見つけ、
「イギリスでは、トイレのことをWCと言うのかなあ?」と驚いた、と言っていた人がいた。
WCというのは、water closet の略で、手洗いという意味である。
アメリカ人にとって、WC という言葉は、馴染みのないものなのだろう。
同じ英語圏なのに、国が変わると、また、場所が変わると、お互い、理解できないということなのだろうか。
イギリスでは、toilet、 WC、 lavatory などという言葉が使われているようである。
一方、アメリカでは、トイレという言葉は、必ずしも、いい言葉でなく、避けられ、使われていない。
アメリカでは、家庭のトイレは、「バスルーム」 (bath room) が一般的だし、公共の場では、「レストルーム」 (rest room) が使われる。
「バスルーム」は、その通りを訳すと、風呂場ということになるが、事実、バスルームには、風呂やシャワーがあるし、トイレもあり、手洗い場もある。女の人が、化粧をするための部屋になってもいる。
「バスルーム」は、単にトイレというのでなく、いろいろな機能を持った、一つの部屋である。
「レストルーム」は、休憩所ということだが、言葉の感じから、椅子やソファーでも置いてあって、寛げるところ、の感じであるが、これも、婉曲な表現で、だれでもが利用できるトイレのことである。
カナダでは、また、別の言葉があって、「ウオッシュルーム」 (wash room) が一般的に使われているようである。
軍の基地に行った時、トイレのことを「ラバトリー」 (lavatory) と書いてあるのに出くわした。
高校の時、英語の時間に、「便所」のことを、「ラバトリー」(lavatory) と習ったのを覚えている。
ただ、この言葉は、一般には、使われているようには思えない。
訊いてみると、lavatory は、軍専用の言葉というわけでない、ということだったが、使われてはいないが、一般の人たちも知っている言葉だし、認知されている言葉だということだった。
イギリスでは、「ラバトリー」は、時に、WCに代わる言葉として、ちょっと、上品な表現として受け入れられているということである。
ミネソタの小学校を訪問した時、校長が校内を案内してくれた。
二人で歩きながら、
「ここは、化学の実験室です」
「ここは、先生用の休憩室です」
「ここは、給食室です」とか、説明していて、「ここは、ラトリーンです!」と言われた時は、「なんの部屋かな?」と思った。
耳にした言葉ではなかった。
「すいません!」と言って、聞き返すと、ウインクをして、「トイレですよ!」と言った。
この言葉は、初めて聞く言葉で、その後も、耳にした記憶がない。 英語の綴りは、(latrine) で、「ラトリーン」は、もともとは、戦地の野営場所のトイレのことで、これがどうして、小学校で使われるのかはわからない。
コンサートホール、美術館、ホテル、競技場など、一般の人たちが利用するトイレは、「レストルーム」である。
したがって、トイレを探す時、独りで、きょろきょろするのでなく、近くにいる人に、我慢しないで尋ねたらいい。
もたもたすると、たどり着くまでに、ずいぶん時間が経ってしまうことがある。
日本人は、このようなときでも、遠慮をしてしまう傾向があるので、勇気を出して、
「すいません!トイレは、どこですか?」
( Excuse me, but where is the restroom? )と言って、おしえてもらったら、後で、
「ありがとう!」
( Thank you ! )と言えばいいことである。
男性であれば、「メンズルーム」 ( men's room ) と言ってもいいし、女性は、 ( ladies'room ) と言ったらいい。
女性は、直接表現を避けて、「パウダールーム」 (powder room)という人もいる。トイレのことだが、化粧を直したりする部屋のことである。
ハワイなど、ローカルの言葉で、「ルア」 ( Lua ) などと言う人もいるが、これは、ハワイだけで通じる言葉である。
元の意味は、「穴」ということらしいが、かつては、穴を掘って用を足していたことの名残である。
ただ、似た言葉で、「ルアウ」 ( Luau ) というのがる。
この言葉は、伝統的なハワイの御馳走 ( traditional Hawaiian feast ) のことで、穴を掘って、豚を丸焼きにするあの料理である。くれぐれも、連想したり、混同しないように!