久しぶりのマムシだった。ヤナギ林内のネザサのシュートが目立つようになり刈り払い機の燃料が残っていたので空にするつもりでネザサ刈りに入った。もとより林内全域を行なえるほどの燃料は無いので特に密集している範囲を燃料の尽きるまでの作業である。出来るだけ抑制したい、出来得る事なら根絶させたいのだがそうは問屋が卸さず「伸びたら刈る」の繰り返しだ。刈り刃を斜めにしネザサの株元に突っ込みながら地下茎を傷めいじめつつの作業なのだったけれど刈り刃が地表を薙いだ後に色合いの変わった部分が見えた。
色合いから「マムシだ」と直感したのだが二つに分かれてしまったので「分断してしまった。後の祭り…」と眺めていたら別れた小さい方が離れていく。傷を負ってから地面に置いた刈り払い機の下に潜り込んだマムシの半分にもならない小マムシだったのだがここで合点がいった。「きっと交尾中に違いない」。離れた個体はヤナギの幹を一回りして頭をのぞかせ様子を窺っている感じで未練を抱いたままなのだろう。刈り払い機の下で丸まった個体を撮影したのだが腹部に裂傷がある。内臓が出ている様子は無いけれど重症には違いない。棒先で突いたら動き出しヤナギの根元の隙間に潜り込んでしまった。
この穴には先ほどの小さい個体も逃げ込んでいたので言わば「愛の巣か⁉」と妄想したけれど「血だらけの愛の巣」では頂けない。重傷を負ったのがメスなのだし交尾を果たしても胎児を育てるまでには行かないのは明白で、どちらかと言えばオスが負傷した方が命は繋がる。まあ、これだけの他愛もない顛末であるけれど「マムシの初見」で「恐らく交尾中」と貴重な機会を駄目にしてしまった。とは言え予測できる事態でも無し、マムシやトンボを探して姥捨て山を徘徊している訳でも無し。全ては一期一会、偶然の産物なのであるけれど、まっ、無死でよかったよかった。ご免ね。