中国の不動産開発大手、万科企業が「プロポーズ」をなんとか断ろうと奮闘している。ここまでは時間を味方につける戦略を取っている。
万科企業は売上高で世界最大の不動産開発会社。同社は、資産再編計画の一環として株式の追加発行計画を明らかにしている。ただ発行株式数は明らかにしていない。これが複合企業・宝能集団を筆頭株主の地位から追いやるためであることは明らかだ。
宝能集団は不動産から金融など幅広く手掛ける民間企業で、現在、万科企業の株式22%を保有している。これは、従来筆頭株主だった国有の華潤集団の保有比率を上回る。万科企業は今後の協力相手として資金力のある国有企業を好んでいる。ただ華潤集団の保有比率は現在15%で、万科企業全体の買収案を提示せずに30%を超える株式を保有することはできない。
価格の問題もある。万科企業の深セン上場の株価はもはや割安ではない。別の投資家が株式の取得で割引を要求する可能性もある。最近、万科企業の株式を5%取得した中国の保険大手、安邦保険集団のような投資家はこの状況を快く思っていないだろう。宝能集団と安邦保険の2社は万科企業の株式27%を保有しているが、これは万科企業の計画を頓挫させるのに十分高水準と言える。安邦保険はこの件についてコメントを控えている。
万科企業に1つ、有利な状況があるとすれば、宝能集団はレバレッジで万科の株式を取得していることだ。証券取引所に提出された報告書によると、宝能集団は万科企業の株式取得に資金の3分の1しか支払っていない。残りは中国の資産運用商品に資金を投じた投資家を当てにしている。借り入れと分類されずに資金を調達する人気の手法だ。ただ株式の取得に時間がかかれば、宝能集団の資金調達コストがさらに増える恐れもある。