さて、一部の方、お待たせしました(笑)。
今週は合唱事務が忙しく、遅くなりましたが、
先週日曜日の演奏会レポです。
合唱団NEWSは1994年結成、もう13年のベテラン合唱団です。
”聴き手にも歌い手にも楽しい合唱”をモットーに、
アカペラとお茶を大事にする合唱団です。
新潟では珍しいオールアカペラの演奏会を開催し続け、
新潟出身の作曲家佐藤さおりさんへの委嘱を
ライフワークにしています。
先輩指揮者のこっちさんが音楽監督を務め、
私は1994年の結成数ヵ月後から4年間在籍しました。
昨年は、どうも何らかの事情で行けず、
ゲネプロを見せてもらった記憶があります。
今年は、無事演奏会を聴きに行けました。
2月11日(日)だいしホールにて。
1stから振り返りたいと思います。
その前に、開演前。
後で聞いた話ですが、舞台裏の覗き窓から客席を見た団員が、
「tek310来てないぞ」
「tek310待ちだ」
「いや、こないうちにやってしまおう」
などと言っていたらしい。
いましたよ(笑)。下手寄りに座るので見えないのですよ。
毎度うるさいOBですみません(爆)。
最近の毎年の様に
前半第1部は西洋編。
まず、昔から歌っているビクトリアの作品から、
今回は「Missa O Magnum mysterium」。
ミサの全曲演奏で始まりました。
実を言うと、昨年、何度かNEWSの演奏は耳にしていました。
NEWSの隠れウオッチャーなので(笑)。
で、その時、今回のビクトリアを聴いてしまっていたので、
今回の演奏については、
そこで既にステージに乗せた曲と、
今回が初めての曲の出来の差を感じてしまったのが正直なところ。
クレド以降が若干余裕のない演奏になっていた気が。
で、クレド以前も、グローリアなどで、テンポの不安定さが目立ち、
ちょっと熱い演奏になってしまったかなと思いました。
で、もう一つのことは後でまとめて。
次はカナダの作曲家マリーシェーファーが、
三重の「合唱団うたおに」のために書いた「17の俳句」より5曲。
マリーシェーファーは、サウンドスケープという概念の提唱者で、
作曲家としてだけでなく、音楽教育の分野でも知られた人です。
ものすごく簡単に言うと、
「身の周りのあらゆる音全てに耳を傾けよう」
ということになりますか(若干暴論ですが)。
そしてこの曲、何とNEWSが図形楽譜に挑戦です。
私はこれのうたおにのコンクールでの演奏を聴いていて、
多分それ以来に聴きました。
正直言うと、この作品については、
俳句をテキストにしていますが、
音にしたそれを聴いて、風景を思い浮かべるかというと、
それはかなり難しいです。
俳句に出てくる言葉そのものをコラージュしたという点で、
それが、その他のシェーファーの作品と決定的に違う点です。
つまり、俳句の言葉を聴くと、日本人はサウンドとして聴くより、
日本語として聴こえて、その言葉の意味を想像してしまったり、
純粋に「音」として楽しむのが難しい作品ではあります。
で、それらを含めて聴いていたわけですが、
率直に言って、良い演奏だったと僕は思いました。
あの空間で、あの時間の中で、
最善の音は鳴ったのではと思いました。
緊張感はありましたね。
それが良い方向に出た気はします。
この作品は、色々な意味で、多分NEWSだからこそ、
ここまで純粋に出来たと思います。
それにしても、NEWSが図形楽譜で、
クラスターのような音を鳴らしているのを聴いて、
「ついにここまできたか」と、感慨深いものがありました(笑)。
第2部は邦人編。佐藤さおりの
「無伴奏混声合唱のための『アルバムⅡ~de France~』の
全曲初演。
2005年の『眺』の3曲、
2006年の『想』の3曲、
そして今年初演の『湧』の3曲。
こちらは、面目躍如、本領発揮といったところ。
非常に安定感のある演奏でした。
作品への思い入れも手伝って、優しく熱いハーモニーが
空間に響きました。
個人的に『想』の「きみへ」が好きな曲です。
今年初演『湧』の「Lauda Sion」もカッコよかったですね。
で、他の人の指摘にもありましたが、
ビクトリアでの演奏で、僕も母音の浅さが気になりました。
そこで、ずっと考えていたんですね。
それを下記に書こうと思います。
まどろっこしい文にならないよう、結論から。
「NEWSのサウンドは、
日本語のアカペラによって作られている」
ということです。
ビクトリアの発音の浅さは、
日本語の曲では気にならないどころか、
あの空間の響きや広さも手伝って、
むしろピッタリとくる。
つまり、長年歌ってきた佐藤さおり作品を初めとした
日本語の作品、
それを、だいしホールや、普段の練習場所である
(よく響く)調理実習室で歌い続けることによって、
自然に出来てきたことだと思います。
逆に言うと、
その浅さのままでラテン語を歌うと、
やはり、言葉から来る響きの深さが足りない。
これは、NEWSが、響く部屋で、
簡単にハモることから始めたことに起因します。
NEWSは、発声を重要視してこなかった合唱団です。
実は、改めて書きますが、
母音は浅かろうが深かろうが、
誰にでもハモることは出来るのです。
いわゆる西洋音楽の合唱曲だけでなく、
日本のポピュラーソングにおいても、
ブルガリアンヴォイスにおいても、
ハモることは、どんな声でも出来るのです。
ただ、違うタイプの声同士だとハモりにくいのですが。
つまり、発声を重視しなくても、
ハーモニーを楽しむことが出来る点を重視したNEWS。
それがベースとなっているために、
ラテン語の発語の浅さがより気になってしまう。
で、今回で言えば、歌い慣れたキリエやグローリアは
それほど気にはならない。
ただ、それを、歌い慣れていない、発語し慣れていないテキストを
歌う時に、本来は、応用して歌っていくのですが
(ウは深く、など)、
その経験が少ないため、その応用まで手が回らない。
多分、膨大なクレドのテキストについて、
一つ一つの言葉をクリアしていかないといけないのが、
現状かなと思いました。
ここで、西洋の響きに近づくためには、
NEWSが避けてきた発声的な観点も必要になります。
とにかくアイウエオの母音の適切な発語、発声ポジションについて、
慣れるまで繰り返すこと。
慣れてくると、普段と違うテキストを歌う時も、
それを応用するようになると思います。
一度身に付けてしまえば、後は楽だと思うのです。
これは、西洋編においては、今後必要になるのではと、
個人的に思いながら聴いていました。
繰り返しになりますが、
佐藤さおり作品では、その浅さが却って自然で聴きやすい。
ハーモニーを重視していて、縦が揃って動く曲が多いことも
要因の一つだと思います。
さっき言ったとおり、浅さが統一されているので、
ちゃんとハモるわけです。
例は悪いかもしれませんが、
今流行の「千の風になって」。
あれを聴いて、発語が不自然だと思う方が多いと思います。
日本語はもっと浅くないと、自然に聴こえない。
クラシックの声楽歌手は、ほぼ100%
イタリア語の発声をベースにしているので、
日本語を歌う時に、発語のポイントを
浅いところへもっていくのに
非常に勇気がいる。
もっとたちの悪いのは、
日本で愛唱されているいわゆる「日本の歌」も、
実は西洋の様式で書かれており、
つまり、日本語の発語ポジションと、
西洋の様式のサウンド、
このブレンドが非常に難しいという現状なのだと思います。
これが民謡だったら、分かりやすいですが、
日本語の響きと西洋のサウンドの融合で
難しいポイントになります。
これは聴きながら思っていたというより、
これを書く時間が取れない中、頭で何を書こうかと
この間、日々考えていた時に浮かんできたことです。
辛口のコメントではありません。
それだけ、NEWSのことを日々考えていたということです。
「NEWS愛」です(笑)。
ということで、既に分かっていると思われることを、
敢えて理屈っぽく書いてみました。
木下作品や佐藤さおり作品等で作ってきた、
日本語の自然な発語によるハーモニーはそのままにしつつ、
西洋編では、もう一歩踏み込んだものが
必要になるかなというのが、結論です。
いやー、たくさん書きましたね(笑)。
団員の皆様、OBの愛情だと思って読んで下さい。
繰り返しますが「NEWS愛」です(笑)。
来年は記念すべき第10回の演奏会。
オール佐藤さおり作品との噂が。
これまでの活動の集大成です。
皆さん、ぜひこの合唱団に注目を!
追伸 スコアペン、使って頂き恐縮です。
まだありますよ(笑)。