佐藤匠(tek310)の贅沢音楽貧乏生活

新潟在住の合唱指揮者・佐藤匠のブログです。

ベスト盤の功罪(番外編)~平井堅「歌バカ」を聴く~

2006年03月07日 21時02分18秒 | ポピュラー

 

 連載の番外編。

 

 

 平井堅のベスト盤「歌バカ」が売れている。

昨年11月23日発売、累計およそ200万枚。

彼のオリジナルアルバムのセールスを考えると

(軒並ミリオンを越えているので)、

もっと売れてもよさそうだが、

昨今のCD不況の中、まずまずと言えるのでは。

 

 これは、もっと前に書こうと思っていたのだが、

ちょっと時期を逸してしまった。

 

 ベスト盤の功罪については、

過去に書いたのでそちらを参照のこと。

 

 平井堅のベスト盤を聴いて、いろいろ思うことがあり、

今日記事にした。

 

 このアルバムは、彼のコンプリートシングルコレクション。

95年のデビュー曲「Precious Junk」から、

最新シングル「POP STAR」まで全23曲2枚組。

初回盤にはその全てのシングルのミュージックビデオのDVD付き。

まさに、ここまでの彼の活動の集大成と言える。

 

 平井堅をよく知る人はご存知だろうが、

彼のこのシングル集を聴くと、

彼が辿ってきた、決して平坦ではない道のりがよく分かる。

僕が勝手にその道のりを分けると、

 

 

華々しいデビュー→長い下積み→勝負をかけた曲の失敗

→FMからのヒット→R&Bから国民的歌手への脱皮

→王道を築いた「瞳を閉じて」

 

 

 すいません。いくらかの資料と僕の印象でまとめたので、

余り細かいツッコミを入れないで下さい(笑)。

 

 

 彼のデビューは、華々しいものだった。

レコード会社が力を入れて、大きなタイアップも取った。

三谷幸喜脚本の「王様のレストラン」の主題歌。

僕はこのドラマを見ていたので、よく分かるが、

確かに、レコード会社が大きくプッシュしていた。

 

 目論見は若干外れ、ビッグヒットとはいかず、スマッシュヒット。

その後、彼はヒットに恵まれなくなる。

2枚目から6枚目までのシングルを聴くと、

彼がどこへ行っていいのか彷徨っている感がよく伝わる(笑)。

曲調は変わるが、1枚目を含めて、

ここまではいわゆるジャパニーズポップスの王道。

その後売れた「楽園」を聴くと、彼が元々R&B歌手だったように見えるが、

サザンなど、実は日本人のポップスに大きな影響を受けている。

結果その路線はうまくいかず、

作曲を人に委ねたり、大物ミュージシャンをプロデューサーにしたり。

しかしそれも受け入れられず。

 

 がけっぷちの彼は、7枚目の「Love Love Love」に勝負をかける。

当時傾倒していたゴスペル調の壮大な曲

(実は僕が一番好きな曲)。

しかしこれが大コケ。

 

 普通の歌手ならここで終わるところ。

実際、ヒットしたその次のシングル「楽園」まで、

実に1年半以上のリリースなしの期間が空く。

この間、彼は、彼のライフワーク「Ken's Bar」を続けていた。

この間首を切られなかったのは、彼が持っていた才能によるのだろうか。

 

 FMから火のついた「楽園」。

彼は作品、プロデュース全てを他人に委ねることで

危機から脱する。

空席になっていた「男性R&B歌手」の座を見事射止めた。

 

 その後「why」など、続けざまにヒット。

R&Bの世界では著名で、

後にケミストリーのプロデュースでも名が知られる

松尾潔氏のプロデュースで方向を定めていった。

 

 その後、「大きな古時計」の大ヒットにより国民的歌手へ。

世代を超えてこの曲は愛されることに。

しかし、このイメージばかりがつくことに歌手として抵抗を感じていた彼。

だがテレビドラマのタイアップによる

「Ring」や「LIFE is...~another story~」などの名曲がヒット。

その後「瞳を閉じて」の大ヒット。により、

彼の国民的歌手としての地位は確固たるものになった。

 

 R&Bにとどまっていれば、

彼の実力ならそれでもいけただろうが、

国民的歌手への道はなかっただろう。

「大きな古時計」という重い十字架を背負った彼は、

「瞳を閉じて」の大ヒットにより、

その十字架を見事に背負いきり、

自らでその道を開いた。

 

 10年ひと昔と言うが。

シングルを見ると、その人の歩みが分かる。

売れたのが8枚目。5年かかった平井堅。

実力があっても売れるとは限らない世界。

彼は幸運なケースなのかもしれないが、

やはり、その後の動きを見ると、

彼自身の持つ力によるところは大きいのでは。

 

 

 僕の中では、彼は、

 

「王道を許された歌手」

 

である。

他に挙げるとすれば、サザンとかミスチルだろうか。

ジャパニーズポップスの王道の道を許されなかった彼は、

その道から一度は外れたが、

彼の力でまた戻ってきて、

確固たる地位を築いたわけだ。

 

 番外編2はあるかな。。。どうしようか。