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映画の王様

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『恐怖の時間』

2022-09-08 21:06:07 | 映画いろいろ

『恐怖の時間』(64)(2011.7.1.神保町シアター)

 原作はエド・マクベインの87分署シリーズの『殺意の楔』。87分署シリーズは、学生時代に読みふけっていたので、この映画の存在を知って以来、ずっと見たかったのだが、なかなかかなわなかった。

 今回、やっと見られたわけだが、同じくマクベインの『キングの身代金』を原作に、同時期に映画化した黒澤明の『天国と地獄』(63)同様、原作の設定だけを借りて日本(東宝)流にアレンジしていた。例えば、原作では犯人は女で、恋人は獄死したのだが、この映画では設定を変えている。

 麻薬取引の現場で、恋人(田村奈巳)を山本刑事(加山雄三)に射殺された男(山崎努)が、恨みを晴らすために、拳銃とニトログリセリンと称する液体の入ったビンを持って渋谷・宮益坂署の刑事部屋に立てこもる。

 ところが肝心の山本は外出中だった。たてこもり犯と部屋にいた4人の刑事(志村喬、佐田豊、土屋嘉男、黒部進。おー東宝映画!)の緊迫感あふれる丁々発止のやり取りが描かれる。

 山本はいつ戻るのか、果たしてニトロは本物なのか…。刑事部屋という限られた場所で繰り広げられる舞台劇のような心理戦という点では、ウィリアム・ワイラーの『探偵物語』(51)をほうふつとさせる。

 面白いのは、外にいる山本が、具合の悪い妻(星由里子)に付き添って飯田橋の警察病院に行き妻の妊娠を知る、射殺した女の家がある五反田(昔の池上線の車両がちらっと映る)に焼香に行く、別の署で取り調べを受けるなど、いろいろあってなかなか刑事部屋に戻れないようにしているところだ。閉ざされた刑事部屋と外を歩き回る山本の対照にも妙味がある。

 監督の岩内克己は、東宝の専属で「若大将」シリーズなどを撮った人。この映画では、若大将と澄ちゃんに新婚夫婦を演じさせているのも面白い。ショートカットの星由里子がチャーミングだ。

 岩内は、鈴木英夫の弟子筋にあたるとかで、この映画ではなかなか手堅い演出を発揮。90分で収める力量もたいしたものだ。渋谷、飯田橋、五反田などの東京オリンピック当時の風景が見られるのも楽しい。


『87分署』シリーズ
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/adb1469cccf6de127f57d8251638d74d

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『悪の紋章』

2022-09-08 09:09:06 | ブラウン管の映画館

『悪の紋章』(64)(日本映画専門チャンネル)

 城南署の警部補・菊地正明(山崎努)は、悪徳警察官の汚名を着せられ、服役する。出所後、菊地は稲村清一と名を変え、自分を陥れたヤクザの花井(清村耕次)、会社社長の柴田(戸浦六宏)、自分を裏切った妻の恵美子(北あけみ)らに対して、復讐を誓う。そして、自分が転落するきっかけとなった事件の裏に潜む巨悪との対決を決意する。

 橋本忍の同名小説を、橋本自身と広沢栄、監督の堀川弘通が共同で脚色。撮影は逢沢譲(時折、素晴らしいショットがある)、音楽は黛敏郎。

 松本清張ばりの社会派推理ドラマの線を狙っているが、凝り過ぎて説明(ナレーション、モノローグ)過多になり、テンポが悪く、とても長く感じた。黒澤明(例えば『悪い奴ほどよく眠る』(60)『天国と地獄』(63))になれなかった堀川弘通、清張になれなかった橋本忍といったところか。策士策に溺れるの感がある。

 役柄のためか、ずっとどす黒く見える山崎の顔(モノクロなのでどこまでがメークなのかよく分からないが…)が不気味。『天国と地獄』の犯人・竹内の延長線上のようにも見える。

 ずるい新珠三千代、怖い岸田今日子、佐田啓二、佐藤慶、大坂志郎、志村喬、安部徹、柳永二郎らのほか、広瀬正一、清水元、谷晃、佐田豊、沢村いき雄といった東宝映画おなじみの脇役たちも顔を出す。ナレーターは名古屋章。

 恵美子の住む街として、わが生地・荏原中延の隣駅である池上線の旗の台が映ったので、とても懐かしかった。


桁外れの脚本家、橋本忍
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/480e2a191aa22a1f5954a170fc11c77e 

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「BSシネマ」『泥棒成金』

2022-09-08 06:10:32 | ブラウン管の映画館

『泥棒成金』(1975.1.3.)

 紺碧の海が広がる風光明媚な南仏を舞台に描くユーモアたっぷりのサスペンス。“キャット”の異名を持つ宝石泥棒ジョン・ロビー(ケーリー・グラント)は、今は引退し、リビエラで悠々自適の生活を送っていた。ところがある日、自分とそっくりの手口の泥棒が現れる。ジョンは自分の名をかたる偽者を突き止めようとするが…。

 ゴージャスな舞台、グラントとグレース・ケリーの共演ということで、しゃれたタッチは楽しめるが、他のヒッチコック作品と比べると、ストーリーの流れ自体はあまりよくない気がする。

 

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