草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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都下の公立中高一貫校よもやま話(3)

2009年12月01日 10時39分01秒 | 
●御三家
 都立高の御三家といえば, 日比谷・西・国立だと思います。
しかし, これもこれから都立中高一貫校で現在学んでいる子どもたちが受験をむかえる頃には, 少なからず激震があるものと推測されます。とくに都立小石川中等教育学校は脅威となるように思われます。都立全盛時代には, 戸山や青山, 新宿なども多数の東大合格者を出していました。
 ちなみに, 私立中の御三家というものがあります。男子校で有名なのは, 開成・麻布・武蔵ですね。女子校だと, 桜陰・女子学院・雙葉です。最近は, 新御三家というものもあります。女子だと, 豊島岡・鷗友・吉祥女子, 男子だと, 駒場東邦・巣鴨・海城です。さて,御三家の話しは, このくらいにします。

●都立両国中等教育学校
 両国地区は, 墨田区・江戸川区・江東区・葛飾区の4つの地域が, 地盤です。都立高校の学校群制度が敷かれていた時代, 両国高校は, 第6学区に属していました。都立両国高校は墨田区にあります。学区内では, ナンバー1の学校でした。1950年から1970年の都立高黄金時代は, 東大進学実績の上位は都立勢が占めていました。日比谷・新宿・戸山・西といった都立が, 東大合格者を量産していたのです。とくに日比谷は東大への登竜門として, 毎年100人以上の合格者を出していたのです。そういう中にあって, 両国高校は, 東大合格者のベスト10に常に入っていました。毎年50名前後の合格者を出していたのです。近くには, 強豪都立小石川がありましたが, 両国は日比谷・西を追い続けました。ちなみに, 都立全盛時代の私立・国立で東大50名合格といえば, 今の筑波大附属駒場とか, 麻布があったくらいです。当時は, 東大に行くには都立だったのです。ところが, 安い学費で東大に行くという人たちで都立のいいところが独占されることに反対が起きました。所得のない人こそ学費の安い都立に行かせるべきだというのです。能力による競争は, 悪とされました。できない子どもをこそ面倒みるのが教育だともされました。学校群制度が, それまでの輝かしい都立の伝統を完全に破壊しつくしたのです。100名を超える東大合格者を出したこともある戸山や新宿では, 東大合格者が1名も出ない年もあるまでになってしまいました。そしてここぞとばかりに, 私立や国立が東大合格者トップ校へと躍り出てきたのです。国立は別として, 私立は当然学費もそれなりにかかります。そういうところに行けるのは経済的に恵まれた家庭です。こうしていつしか私立名門校が東大への登竜門となってしまったのです。昔のようにお金のない人が東大をめざすのは厳しくなりました。私立中へ行くためには早くから大手塾に通わなければならなくなったのです。こうして優秀な人材の大半が, 私立中へと流れ, 公立中には勉強に関心のない子たちが集まりました。当然の成り行きのはずの学力の低下は, さらにゆとり教育の必要性を叫ばせることとなり, さらに学力を低下させるという悪循環に陥りました。こうした学問に低調な子どもたちを吸収する都立高校の質の低下も目を覆うものがありました。少子化ということもあります。経済的に恵まれた優秀な児童のほとんどを私立が独占した結果, 公立に行ってもいいところがないというところまできたのです。学校は荒れて, 勉強に無関心の子どもたちが授業を壊しました。おしゃべりで先生のことばが聞き取れない授業というのが通常のことになりました。受験競争を悪として, 改善したつもりが, 今度は教育の場として成り立たないところまできてしまったのです。
 都立高校は進学指導重点校制度などと受験競争時代のシフトに変えつつあるといえます。しかし, 私立中や学校群制度と無縁であった国立中の強固な牙城は崩せそうにありません。なにしろ小学卒業の優秀な児童を取り込んでいるのですから。その中で渋く頑張っているのが, 都立御三家です。これは経済的には公立に行くしかない。しかし, 優秀な児童の最後の砦なんですね。あるいは私立御三家レベルに落ちて再起を期すという児童の受け皿校なんだと思います。
 そして都立高校もやはり小学生から優秀な子を取り込まなければ, 遅ればせながら, 私立にはとても勝てないとわかってきたのです。
 公立中等一貫校という反撃が開始されました。選抜試験ということが, 実施できない。公立中では選抜試験は認められていません。それで実質選抜試験と変わらない適性検査なるものを実施することとしました。ところが, この適性検査というのが, 子どもたちの能力を選別するのに, 私立の学科試験に比べて, 格段に優れている。単に学科ではなく, 推理力・想像力・判断力といった様々な能力を試すことができる。学科に優れただけではない秀才を発見するのにこれほど適した問題が作られるとはだれが予想したでしょうか。とくに都立適性問題はすばらしい内容でした。パターン化された知識偏重の私立にはまねのできないものでした。単に学力ができるというだけでなく, 創造力といった能力まで試すことができるように工夫されているのです。。とにかくこれほどの問題が作られるとは, たかをくくっていた私立中の先生たちを慌てさせていることは間違いないと思います。
 さて, 都立中御三家というものが, あります。小石川と両国, 武蔵のことです。武蔵は2008年の開校ですが, 検査問題は, かなり難しく, 小石川の問題と引けをとりません。これに対して 両国の検査問題は, 難問というものはないが, 全体にレベルの高い問題です。両国は問題量が, 武蔵や小石川に比べて少ないのが救いです。将来的に, この3校が, 都立のトップ校西や日比谷を脅かすようになるのは間違いないと思います。特に小石川は都立中でも最難関であり, 将来が注目されるところです。
 都立高校があの都立全盛時代に思いを馳せていることは間違いないと思います。
 両国では, 他の都立中と違い, 内進生が全員両国高校に進みます。これはそれだけ高校が魅力あるということです。課外教育がさかんで参加率100%を誇ります。土曜講習・夏期講習と充実しており, 塾いらずの学校です。前身の府立三中のOBには, あの芥川龍之介がいるのです。

●後記
 今日から, 12月です。竹の会の子どもたちは, 皆熱心に何時間も「思考」しています。竹の会は「考える」場であり, 「考える」ことを訓練する場です。子どもたちが皆私の指示に素直に従い静かに「考える」ことに全神経を傾けている風景を見ながら, 私は, 頷いています。「そうだ。これでいいんだよな。」と。「先生, 何がいいんですか」と子どもが言います。「いや, これでいいんだ。」と私はにっこり微笑むのです。

 
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