草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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不安と藁

2009年11月29日 18時23分43秒 | 
 いよいよ12月に入ります。試験本番まで残すところ2ヶ月ですね。この時期の親御さんたちの不安は募るばかりで, 受検直前まで緊張した心的状態が続きます。 冷静な常識的な判断ができるという人は少ないようです。不安から, 受検にいいと言われれば何でも飛びつく。昨今は, 公立中高一貫校ブームであちこちの予備校が, 対策講座を設け, しかも盛況のようです。いろいろな対策問題集というのも出ています。オリジナル作成ということを謳った予備校ものや出版社ものが, かなり高い価格にもかかわらず飛ぶように売れています。
 少しく気になる点があり, 2, 3述べてみたいと思います。
 まず, 不安から, この時期, あれこれ手を出しても結局何もしなかったに等しいということです。それよりもそれまでにやってきたことを確実に復習することのほうが, ずっと意味あることです。これをも犠牲にして, 新しいことに飛びつくなどというのは, 私にはなんとも無謀にしか見えないのですが。
 よく予備校などで○○校対策講座などというものが, あります。志望校の出題類似の問題を練習しておくという趣旨なのでしょうが, 気休めにしかならないと思います。
 まずそもそも同じパータンの問題に慣れたからといってほとんど意味はありません。要はその子の思考力の到達段階こそが問題なのであり, 何が出ても能力の到達段階が高ければできるのであり, 低ければいくら問題形式に慣れたとしてもできないことに何の変わりはないのです。
 加えて, いろいろな予想適性検査問題というものを見てみると, オリジナルを謳っていますが, 過去問の焼き直しであり, ほとんどやる価値はないと断言していいと思います。練習は過去問で十分です。特に, 都立の過去問は何人もの先生が, 時間をかけて作った力作揃いで, このような良質の問題はまず作れないと思います。巷の模倣問題がどうあがいても太刀打ちできるものではありません。適性類似問題をあれこれ漁ってみてもなんとも稔りのない結果に終わることは目に見えています。
 適性過去問をやればやるほど, 深い思考力の必要性が痛感されます。さらには, 小学で習う学科の基本事項をきちんと理解していることこそ大切だと思います。
 都立の問題は, 他県の適性問題に比べて, 比較にならないほど緻密な作りになっています。瞬間に答えが出るようになっていない。とにかく長い文の中で, 考え, 判断させようとしている。ひととおり過去問をやったら, とにかく息の長い文章を読み解くという経験を積ませるような指導がこれから必要と思う。見たこともない未知の知識が出てくることは当然としておかなければならない。何が出てもその場で落ち着いて対処できるという心の持ち様こそ肝要と思われる。
 未知を畏れると際限がない。不安から藁をつかむの愚は未知を畏れることの裏返しと思われる。 未知は畏れるのではなくて, 知をはたらかせる絶好の機会と考えなければならない。知識は最小限あればいい。残りは, 知のはたらきで十分とする。だからこそ, 鍛えるのは未知に対する知のはたらかせ方であり, 思考力の到達点である。志望校「対策」ということを勘違いしてはならない。決して出そうな予想問題をやることが志望校対策ではない。傾向に合わせた問題をやることが志望校対策ではない。問題は思考を磨く手段に過ぎない。道具に過ぎない。道具を求めて彷徨ってはならない。過去問を通して, 未知の問題に対応するしかたを学ぶのである。
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