草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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低線量放射線のこと

2011年05月22日 23時46分32秒 | 
 世界的に権威のある国際放射線防護委員会(ICRP)は、ICRP勧告というものを出しています。放射線の許容量について、放射線作業従事者は年間5レムまで、一般人はその50分の1までというあれです。1レムというのは、1シーベルトの100分の1です。5レムは、50ミリシーベルということになります。なぜ、5レムなのか、という議論もあります。これは、T65Dという推定値に依拠したものです。これは、広島・長崎の原爆投下時の放射線量について推定される暫定的な計算値です。もともと投下時の放射線量はわかってはいないわけで、それで推定した値というわけです。ところで、白血病やガンなど被爆者の発病率についての追跡調査は行われていますのでこちらは実数値です。それで原爆投下時の放射線量さえわかればそこから、「人間はどれくらいの放射線を浴びると、どれだけ影響をこうむるか」がわかると考えたわけです。それでT65Dと広島長崎の被爆者の発病率とがつき合わされました。
 福島第1原発の事故で政府がさかんにICRP勧告を根拠としてあげています。
 ところで、ICRPは、低線量の放射線について「人体への影響は無視できる確率」とし、また、内部被曝についてはぼ無視しています。
 被曝の危険性についての米政府の決まり文句を知っていますか。
 There is no immediate danger です。immediateとは、「差し迫った」という意味です。つまり、「差し迫った危険はない」と言っているのです。どこかで聞いたことがあると思いませんか。そうです。枝野がさかんに言っていたではないですか。「直ちには人体には影響のないレベル」と。どうせ官僚がどこからか見つけてきて、枝野に読ませただけのことでしょうが。
 ところで、ICRP勧告が正当とされるのは、T65Dなる推定値が正確なことが前提ですよね。ところが、この推定値が実は根拠がないということが、あきらかになってきたのです。いわゆる「マンクーゾ報告」の中でマンクーゾ博士は原発労働者2万4939名の調査をし、調査時点での死亡者3520名について分析した結果、T65Dの仮定を根底から否定したのです。彼の調査は比較的低い線量でガンや白血病が発生しているということを証明したのです。とすれば広島・長崎で大量に発生したガンや白血病は実はかなりの低い数値の放射線量ではなかったのかということになるわけです。
 福島第1原発で放射される放射線は今では福島では決して低線量とはいえない状態です。そして福島の近隣の県や東京には今も毎日のように低線量の放射線がまき散らされています。ただ低線量の放射線でも外部被曝ではそれほどの深刻さはないと考えられます。恐ろしいのは内部被曝です。内部被曝は、「ウランやプルトニウムの分子が細胞の中に入って、命を作る新陳代謝を壊してしまうのです。放射性分子は体液の中で酸素分子に衝突しそれを活性酸素に変えます」(原爆投下の時から軍医として治療にあたってきた肥田医師の発言)。内部被曝は白血病やガンなどのいわゆる晩発性障害を引き起こします。放射性物質を体内に取り込むことで、体の内部から被曝するのです。政府や国際機関はこの内部被曝についてはその危険性を認めません。広島や長崎の原爆訴訟で、政府ができるだけ賠償額を減らしたいと考えてその認定に消極的で内部被曝の存在を決して認めようとしなかったことは記憶に新しいことです。福島の事故では、飛散した放射性物質による内部被曝の危険性は広島や長崎をはるかに超えて広汎です。国民の生命をまず見殺しにするのが国家権力であるということをもういい加減に国民は気がつかなければなりません。このたびの福島の事故での政府の一連の行動は政府が国民の生命をなんとも思っていないということを示しています。平気で私たちを見殺しにする連中です。
 さて、それからもうひとつ注意しておかなければならないことがあります。自然界に存在する放射線で内部被曝してもその放射線は決して体内に蓄積されることはないということです。原発が作り出す放射性物質はもともと自然界には存在しない人間が作り出したものです。この放射線はたとえ微量でも体内に入れば確実に蓄積されていくということです。そして今福島で放出されている放射線はレントゲンのようにほんの数秒ということではなく、24時間放出され続けているということです。
 あと、高木仁三郎氏の著書(「反原発出前します」)には、オーストリアにおけるチェルノブイリ事故による被曝の例図がありますが、牧草から牛を介してミルクとチーズに38%もの残留放射性物質が含まれており、肉には16%とこれらは要注意です。飲料水については、1%以下とそれほど影響がないことがわかります。魚については、0.1%以下でした。ただ福島の場合は高濃度の汚染水が大量に流れ込んでおり、チェルノブイリとは状況は違います。それから地表からのガンマ線がなんと15% もありました。ただこれは内部被曝とはならないでしょう。空気中にある放射性物質を吸い込むということは当然あり得ますが。チェルノブイリのときは放射能雲から5%も吸い込んでいます。
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