草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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もうすぐ、春

2015年02月03日 20時06分12秒 | 
 2014年2月9日、あれからもうすぐ1年が経とうとしているのですね。悔しさとあふれる涙を止められなかった2月でした。都立駒場の合格はわたしの沈んだ心をほのぼのと包んでくれました。3月は当時の小5に思いのすべてをかけました。4月になると目黒川の桜がなんときれいだったことか。心は晴れなかったけれど今いる子どもたちのひたむきな勉強態度に救われたことを覚えています。この子たちのためにわたしはわたしのすべてを捧げたいとそう決意したのです。
 もうすぐ、春が来る。少年の頃の春は、いつも独りで志高湖への山道を歩く自分がいた。時には、泣きながら家を飛び出して、行く当てもなく気がついたら山道を歩いていた。途中喉が渇けば清水の湧き出る岩の割目を知っていた。いつも手ですくいあげごくごく飲んだっけ。こんもりとした杉山は暗くて冷たくて少し恐かった。杉山を抜けると明るい野原が少し続き、また鬱蒼とした杉山にさしかかる。もう何度も通ったからくねくねとした道はすべて頭の中に入っていた。最後の杉山を抜けると背の高い雑草の茂った急勾配にさしかかる。必死の思いでこれを越えると、眼下にぱーっとひろがる湖畔の世界。駆け下りながら、ふと目についたワラビを刈る。ワラビの群生した志高湖を囲む山々。4月の志高は桜も咲き、花見客もちらほら。
 いつも歩いた志高の道。少年の頃の春はワラビと桜の木、なぜかいつも泣いて涙も枯れて、日が沈む頃に帰り着いた家ではそういつも母が笑いかけてくれた、待っていてくれたのだ。おろおろしながらわたしの顔を見るとほっとした表情を見せていたばぁちゃんの顔、いつもの光景だった。
 少年の頃の春、いつも父親に殴られ、夕方になると恐くて緊張したあの頃、わたしにはそういう春しか思い浮かばない。
 もうすぐ、春。

 
 
 
 
 志高湖
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