●桜修館では. 「円の面積はなぜ3.14×半径×半径なのか」という問題が出題されました。また白鷗では, 「分数の割り算でなぜ割る方の分数をひっかえしてかけるのか」が問われています。普段「あたりまえ」のように使っている公式や計算のきまりそのものを説明させる問題です。これには普段考えたこともない人がほとんどで意表を突かれたことと思います。こういった問題が出ても何もかけない人の方が多かったと思いますので決定的とはならなかったのではないかと推測されます。ただこの種の問題は今後も出そうな気がします。
私はその懸念から, 心当たりの問題にされそうなテーマについてこのブログでもとりあげています。気になる方は去年のブログから探してみてください。
今日は, 同じ視点からそのような類のテーマを探ってみました。
先の「円の面積の公式」の説明方法については, よく見かけるのが, 円を中心を通る線で8分割なりして, ばらばらにして, そのピースを交互に組み合わせて長方形にしたうえで長方形の面積を求めるというものでした。
ほかにも, 円周を底辺, 高さを半径とする二等辺三角形をつくるといった方法もあります。
分数の割り算に関しては, このブログでも単位あたり量の考え方を使った説明方法を紹介しています。
○速さ×時間はなぜ距離なのか
もとは「速さ比べ」にあったと思います。2人のうちどちらが走るのが速いか比べるとしたら, どうしますか。
走る時間をそろえる方法がある。走る時間を10秒とか20秒とかにそろえるのである。そしてどうせなら, 1秒にそろえて比較したほうがいいのではないか。なにしろ1秒というのは単位時間ですからね。1秒で走る距離の多い方が速いというわけです。これは比較しやすいですよね。
こうして速さというのは, 単位時間あたりどれだけ走るか, という量を表わすことがわかります。
速さすなわち速度は, mを秒で割った結果ですから, 単位はm/秒 とかきます。m÷秒 ですから, m/秒 です。
さて, これで速度は単位時間あたりどれだけ走るかを表わすので, それに時間をかければ, その時間に進む距離になることが, 説明できます。
これは単位の計算でも自明です。
m/秒 × 秒 は, 単位 秒が約分されて消えてしまい, m となりますから。
ところで, 100mを10m/秒で走った人が, スタートしてから2秒間に走った距離は, 10m/秒 × 2秒=20m でしょうか。
何かおかしいですね。100m走っている間ずっと同じ速さならそうなりますね。しかし, 普通は, 最初遅くて次第に加速がついて速くなるというように速さは一様ではありません。だいたい人間が速さを調整してずっと同じ速さで走れるわけがありません。とすると私たちが求めていた速さは, 実は架空の速さということになります。ある距離をずっと同じ速度で走ったと仮定した速度を平均速度とよんでいます。平均速度で比較していたということですね。
(距離)÷(時間)=(速度)
は, 等速運動を前提として速度を求める公式です。
それでは不等速運動の場合の速度はどのようにして求めるでしょうか。不等速運動では, ある瞬間の速度を求めることを考えます。これを瞬間速度といいます。不等速運動は横軸に時間, 縦軸に距離をとったグラフをかくとなめらかな不規則曲線となります(等速運動は直線になります)。
瞬間速度は, 曲線のある範囲を拡大して直線に見立てて, 先の公式を適用することで求めることができるのです。
実はこれが微分なのです。
これ以上は, もう必要ないですよね。
○長方形の面積はなぜ(たて)×(よこ)なのか
これも「あたりまえ」のように思ってきたもののひとつですよね。なぜって, 当然のことじゃないか, っていいたくなりませんか。
実は, 長さと違って, 面積にはものさしがない。長さはものさしがあるから,「なぜ」などとは言わせない。論より証拠である。が,面積を表わすものさしなど見たことがない。
そこで考えだされたのが, ものさしに替わる工夫であった。
1㎝平方の正方形の面積を1㎝2 として基本単位として定めることとしたのだ。これで例えば, 縦3㎝, 横4㎝の長方形の面積なら, 3×4=12 で基本単位となる正方形の個数が何個かを計算すればいいことになる。頭の中で作り出されたものさしで測るというわけである。
○三角錐の体積はなぜ三角柱の体積の3分の1か
これについては, 以前に説明済みです。
○正多面体は5種類しかありえません。それはなぜ?
その前に正多面体とは?
1. 面がすべて合同な正多角形である。
2. 各頂点に集まる面の数がどこも同じである。
という2つの条件を満たす凸の多面体です。
実際にできるか正三角形から順に考えてみます。
正三角形の場合, 1つの頂点に少なくとも3つ以上の正三角形が必要ですが, 6つだと60°×6=360°で平面になってしまいますから, 6つよりは少ない数です。
こうして, 正三角形の個数が, 1つの頂点に3つで, 正四面体, 4つで正八面体, そして5つで正二十面体ができることがわかります。
次は, 正四角形の場合である。これは1つの頂点に3つが限界で, 正六面体(正方形)があるだけである。
正五角形ではどうか。1つの頂点に3つで108°×3=324°だから, 3つが限界である。もちろん正五角形の1つの内角は108°である。ところで正五角形を12個使うと正十二面体をつくることができる。
正六角形を1つの頂点に3つ集めたら, 360°だから, 平面になってしまうよね。だから, 立体にならない。
○なぜ0で割れないのか
以前に説明済みです。
●1/2 + 1/3=2/5 ?
ある母親の考えのどこがおかしいのか?わかりますか?
ある母親が次のように考えました。
「 1/3は3つのおまんじゅうの1つ分, 1/2は2つのおまんじゅうの1つ分, それらを合わせると5つのおまんじゅうの2つ分だから, 2/5になるわよね。」
●「割合」がなぜ理解されにくいのか
小学生に初めて割合を説明するとき, 子どもたちの頭の中に起こっているのは「量と割合」の混同だと思います。量はものさしで測ることのできる数です。しかし, 割合は「倍」を表わすもので, 実体のない数です。倍というのは, 細かくは2つの意味に分けられます。
1つは, 1つの量に関しての比較の問題で, 拡大・縮小という「操作」をしたときに「何倍したのか」という操作の倍の問題です。
そして2つは, 2つの量に関しての比較の問題で, 「一方が他方のどれだけにあたるか」という関係の倍の問題です。
関係も操作も実体のない数ですから, 子どもたちにはなかなか受け入れられないのです。子どもというのは, 目に見える数つまりはものさしで測れる数を思考の基盤に置いてきましたから, ものさしで測れない数, つまりは頭の中にだけ存在する数というものが, なかなか理解できないのです。
それでも, 何倍という操作を「見る」のは, 比較的理解しやすいと思われます。子どもたちもこの操作の倍については, それほど抵抗はないかに見えます。
ところが, 関係の倍となると途端に混乱を起こします。その原因はおそらく2つの量というところにあるのではないかと思われます。
たとえば,(1) 1000gの水は, その中の100gの何倍か。
(2)100gの水は1000gの水の何倍か。
(3)100gの水は1000gの水のどれだけにあたるか。
(4)100gの食塩がふくまれる1000gの食塩水について,100gの食塩は食塩水のどれだけにあたるか。
と順に問いを発していきます。
(4)あたりからおかしくなりますかね。これが「赤いリボン2mは青いリボン6mのどれくらいにあたるか」と問うともうだめかもしれません。赤いリボン=青いリボン というところがネックになるのです。
量には単位がありますが, 割合には単位はありません。%は単位といえば, 単位ですが, 元にした全体量が変われば, 同じ10%でも量が違いますから, 足したり引いたりできません。%は元にした全体量が同じという前提ならもちろん足したり引いたりできます。
小学生にとって, 実体にない数値, その意味で抽象的な数値をそのものとして関係把握するのは至難のことなのです。
●単位の種類
面積や体積の単位は, 長さの単位から誘導されてできたものです。
長さ m
面積 m×m=m2
体積 m×m×m=m3
単位には, 単位の除法で表わされるものがあります。これが1あたり量です。
1あたり量を表わすには,
km/時間・・・・・速度
g/㎝3・・・・・密度
g/g・・・・・・濃度
といった具合です。
◎後記
小学passport会員へ
2月理社指導スタートのため, 理科用, 社会用の大学ノート各1冊を用意してください。
私はその懸念から, 心当たりの問題にされそうなテーマについてこのブログでもとりあげています。気になる方は去年のブログから探してみてください。
今日は, 同じ視点からそのような類のテーマを探ってみました。
先の「円の面積の公式」の説明方法については, よく見かけるのが, 円を中心を通る線で8分割なりして, ばらばらにして, そのピースを交互に組み合わせて長方形にしたうえで長方形の面積を求めるというものでした。
ほかにも, 円周を底辺, 高さを半径とする二等辺三角形をつくるといった方法もあります。
分数の割り算に関しては, このブログでも単位あたり量の考え方を使った説明方法を紹介しています。
○速さ×時間はなぜ距離なのか
もとは「速さ比べ」にあったと思います。2人のうちどちらが走るのが速いか比べるとしたら, どうしますか。
走る時間をそろえる方法がある。走る時間を10秒とか20秒とかにそろえるのである。そしてどうせなら, 1秒にそろえて比較したほうがいいのではないか。なにしろ1秒というのは単位時間ですからね。1秒で走る距離の多い方が速いというわけです。これは比較しやすいですよね。
こうして速さというのは, 単位時間あたりどれだけ走るか, という量を表わすことがわかります。
速さすなわち速度は, mを秒で割った結果ですから, 単位はm/秒 とかきます。m÷秒 ですから, m/秒 です。
さて, これで速度は単位時間あたりどれだけ走るかを表わすので, それに時間をかければ, その時間に進む距離になることが, 説明できます。
これは単位の計算でも自明です。
m/秒 × 秒 は, 単位 秒が約分されて消えてしまい, m となりますから。
ところで, 100mを10m/秒で走った人が, スタートしてから2秒間に走った距離は, 10m/秒 × 2秒=20m でしょうか。
何かおかしいですね。100m走っている間ずっと同じ速さならそうなりますね。しかし, 普通は, 最初遅くて次第に加速がついて速くなるというように速さは一様ではありません。だいたい人間が速さを調整してずっと同じ速さで走れるわけがありません。とすると私たちが求めていた速さは, 実は架空の速さということになります。ある距離をずっと同じ速度で走ったと仮定した速度を平均速度とよんでいます。平均速度で比較していたということですね。
(距離)÷(時間)=(速度)
は, 等速運動を前提として速度を求める公式です。
それでは不等速運動の場合の速度はどのようにして求めるでしょうか。不等速運動では, ある瞬間の速度を求めることを考えます。これを瞬間速度といいます。不等速運動は横軸に時間, 縦軸に距離をとったグラフをかくとなめらかな不規則曲線となります(等速運動は直線になります)。
瞬間速度は, 曲線のある範囲を拡大して直線に見立てて, 先の公式を適用することで求めることができるのです。
実はこれが微分なのです。
これ以上は, もう必要ないですよね。
○長方形の面積はなぜ(たて)×(よこ)なのか
これも「あたりまえ」のように思ってきたもののひとつですよね。なぜって, 当然のことじゃないか, っていいたくなりませんか。
実は, 長さと違って, 面積にはものさしがない。長さはものさしがあるから,「なぜ」などとは言わせない。論より証拠である。が,面積を表わすものさしなど見たことがない。
そこで考えだされたのが, ものさしに替わる工夫であった。
1㎝平方の正方形の面積を1㎝2 として基本単位として定めることとしたのだ。これで例えば, 縦3㎝, 横4㎝の長方形の面積なら, 3×4=12 で基本単位となる正方形の個数が何個かを計算すればいいことになる。頭の中で作り出されたものさしで測るというわけである。
○三角錐の体積はなぜ三角柱の体積の3分の1か
これについては, 以前に説明済みです。
○正多面体は5種類しかありえません。それはなぜ?
その前に正多面体とは?
1. 面がすべて合同な正多角形である。
2. 各頂点に集まる面の数がどこも同じである。
という2つの条件を満たす凸の多面体です。
実際にできるか正三角形から順に考えてみます。
正三角形の場合, 1つの頂点に少なくとも3つ以上の正三角形が必要ですが, 6つだと60°×6=360°で平面になってしまいますから, 6つよりは少ない数です。
こうして, 正三角形の個数が, 1つの頂点に3つで, 正四面体, 4つで正八面体, そして5つで正二十面体ができることがわかります。
次は, 正四角形の場合である。これは1つの頂点に3つが限界で, 正六面体(正方形)があるだけである。
正五角形ではどうか。1つの頂点に3つで108°×3=324°だから, 3つが限界である。もちろん正五角形の1つの内角は108°である。ところで正五角形を12個使うと正十二面体をつくることができる。
正六角形を1つの頂点に3つ集めたら, 360°だから, 平面になってしまうよね。だから, 立体にならない。
○なぜ0で割れないのか
以前に説明済みです。
●1/2 + 1/3=2/5 ?
ある母親の考えのどこがおかしいのか?わかりますか?
ある母親が次のように考えました。
「 1/3は3つのおまんじゅうの1つ分, 1/2は2つのおまんじゅうの1つ分, それらを合わせると5つのおまんじゅうの2つ分だから, 2/5になるわよね。」
●「割合」がなぜ理解されにくいのか
小学生に初めて割合を説明するとき, 子どもたちの頭の中に起こっているのは「量と割合」の混同だと思います。量はものさしで測ることのできる数です。しかし, 割合は「倍」を表わすもので, 実体のない数です。倍というのは, 細かくは2つの意味に分けられます。
1つは, 1つの量に関しての比較の問題で, 拡大・縮小という「操作」をしたときに「何倍したのか」という操作の倍の問題です。
そして2つは, 2つの量に関しての比較の問題で, 「一方が他方のどれだけにあたるか」という関係の倍の問題です。
関係も操作も実体のない数ですから, 子どもたちにはなかなか受け入れられないのです。子どもというのは, 目に見える数つまりはものさしで測れる数を思考の基盤に置いてきましたから, ものさしで測れない数, つまりは頭の中にだけ存在する数というものが, なかなか理解できないのです。
それでも, 何倍という操作を「見る」のは, 比較的理解しやすいと思われます。子どもたちもこの操作の倍については, それほど抵抗はないかに見えます。
ところが, 関係の倍となると途端に混乱を起こします。その原因はおそらく2つの量というところにあるのではないかと思われます。
たとえば,(1) 1000gの水は, その中の100gの何倍か。
(2)100gの水は1000gの水の何倍か。
(3)100gの水は1000gの水のどれだけにあたるか。
(4)100gの食塩がふくまれる1000gの食塩水について,100gの食塩は食塩水のどれだけにあたるか。
と順に問いを発していきます。
(4)あたりからおかしくなりますかね。これが「赤いリボン2mは青いリボン6mのどれくらいにあたるか」と問うともうだめかもしれません。赤いリボン=青いリボン というところがネックになるのです。
量には単位がありますが, 割合には単位はありません。%は単位といえば, 単位ですが, 元にした全体量が変われば, 同じ10%でも量が違いますから, 足したり引いたりできません。%は元にした全体量が同じという前提ならもちろん足したり引いたりできます。
小学生にとって, 実体にない数値, その意味で抽象的な数値をそのものとして関係把握するのは至難のことなのです。
●単位の種類
面積や体積の単位は, 長さの単位から誘導されてできたものです。
長さ m
面積 m×m=m2
体積 m×m×m=m3
単位には, 単位の除法で表わされるものがあります。これが1あたり量です。
1あたり量を表わすには,
km/時間・・・・・速度
g/㎝3・・・・・密度
g/g・・・・・・濃度
といった具合です。
◎後記
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