ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

あるチャンピオンの死

2001年08月11日 | その他
昨日(8月10日)の朝、東洋太平洋スーパー・ウェルター級チャンピオン、
竹地盛治選手が首を吊って自殺した。24歳だった。

このニュースを昨日の夕方知った時は、当然のことながらとても驚いた。
現役のチャンピオンが自殺するなんて考えたこともなかったし、今までに
そんな例を僕は聞いたことがなかったからだ。

ほとんどの場合、自殺は周囲の人間にとっては「寝耳に水」である。
今回は遺書も見つかっていないので、その動機は推し量ることしかできない。
今日買ったスポーツ紙には、目標を失って悩んでいた、という話もあったが、
実際のところは誰にも分からない。

彼が当面の目標としていたのは、王座の統一であった。詳しい経緯は省くが、
昨年7月に東洋太平洋の暫定王座となった彼は、今年5月に正規王者との
統一戦に臨み、判定勝ちでその目標を達成したのだった。普通に考えれば
次は世界、という新たな目標が出来るわけだが、現実は厳しい。

ウェルター級から上のクラスでは日本の選手層は非常に薄いが、逆に世界レベル
ではとても層が厚く、伝統的に人気の高いクラスでもある。つまり、日本人が
世界王者になることはもちろん、挑戦することすら容易ではないという階級なの
である。これではモチベーションを保つのが難しいのも確かだろう。

もちろんこれは単なる推測であり、もしかしたらボクシング以外で何か悩みを
抱えていたのかも知れない。繰り返すが、本当の事は誰にも分からないのだ。

自殺は残酷だ。残された者は心の中で、この先何度となく「なぜ・・・」を
繰り返すことだろう。「なぜ死んだのか」「なぜ助けてやれなかったのか」と。
死者に魂があるならば、彼はそれを見て一体どう思うのだろうか。