ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

ラクバ・シンvs篠崎哲也ほか

2001年08月21日 | 国内試合(その他)
昨日の深夜、テレビでボクシング中継を見た。
この地方(愛知県)では基本的に、地元のホープの試合か世界戦ぐらいしか
放送されないが(世界戦ですら放送されない時もある)、ごくたまにテレビ朝日
系の「名古屋テレビ」で東京の試合を放送してくれることがある。


昨夜の主なカードは元WBA世界スーパ-・フェザー級王者で、現在はランキング
1位の、モンゴルのラクバ・シン(あの畑山に唯一のKO負けを与えた選手)が
なぜか日本のリングに登場、日本ランカーの篠崎哲也と対戦するというもの。

世界1位と日本5位、はっきり言って格が違いすぎる。実力差によっては殺されて
しまうことだってあり得るわけで、よく本人やジム関係者が承諾したものだ。
確かに篠崎は日本王者(当時)のコウジ有沢と2度に渡って戦い、王者を大いに
苦しめているし、世界ランカーの長嶋健吾にも善戦しているのだが・・・。

それでも、畑山をブッ倒したあの壮絶なパンチを目の当たりにしているだけに、
シンはあまりにも危険すぎる相手に思えたし、誰もが早い回でのKO負けを
予想していたことだろう。

しかし篠崎は、驚異的な根性を見せた。実際、シンは凄かった。さすが世界1位、
と思わせるだけの技術とパンチ力だった。力の差を見せつけられ、何度も危ない
シーンがあったが、篠崎はピンチを凌ぎ、何と判定にまで持ち込んだのだ。
恐れず打ち合い、強打に耐えるその根性もさることながら、シンに連打させない
ディフェンスの上手さ(クリンチワークも含め)も光った。

結果は判定負けだったが、彼がここまでやると予想した人はいなかっただろう。
しかし同時に、彼が大事な試合で勝てない理由も何となく分かってしまった。
打ち合いには応じるものの、パンチに相手を倒すだけの的確さやパワーがない。
クリンチが多く、見栄えが悪い。このスタイルだと、誰にでも善戦はするが、
例えば挑戦者の立場でチャンピオンに勝つためには、決め手不足だ。


篠崎の意外な頑張りによって、あるいはメインに据える予定だったかもしれない
他の試合が大幅にカットされることになった。前回の試合で日本タイトルを失った
ウェルター級の加山利治の再起戦、東洋太平洋ミニマム級王者にして世界ランク
2位でもある中島浩の「世界前哨戦」などだ。

加山は2ラウンドだか3ラウンドにKO勝ちして、形としては文句ない再起を
飾ったことになるのだが、加山はいいとして、とにかく相手がひどすぎた。

以前に名古屋のリングにも登場したことがある、タイのノパラットノイとかいう
選手なのだが、その時と同様、全くやる気が感じられなかった。ニヤニヤしながら
ノーガードで相手を挑発するくせに、簡単にパンチをもらってしまう。そして
それほど強いとも思えないパンチであっさりグラつき、これまた簡単に倒れて
しまうのだ。調整試合のための、いわゆる「噛ませ犬」として呼ばれているのは
分かるし、どうせ勝てないのなら、早く終わらせてとっとと金もらって帰りたい
のも分かる。それでも、あまりに不甲斐ない態度を見せては高い入場料を払って
見に来た客に対して失礼だ。それに、そんな試合ぶりではもう呼んでもらえなく
なるかもしれない、とか考えないのだろうか。少なくとも僕はあんな選手もう
見たくないし、今後絶対呼ばないで欲しいと思った。


そして中島の試合だが、こちらはさらに可哀想なことにわずか1ラウンド(最終
ラウンドと判定のシーン)しかオンエアされなかった。しかしそれも自業自得で、
タイのノーランカー(一応元タイ王者らしいが)にやっとのことで引き分け。
両者の顔を見ればどっちがより打たれたかは明白で、地元判定に救われた感じだ。

僕はどうもこの中島という選手の試合、何度見ても好きになれない。素人なので
上手く言えないが、ボクシングが「投げやり」な感じがするのだ。パンチに
「意志」や「意図」といったものが感じられない。何をやりたいのかさっぱり
分からない。例えば坂本博之や石井広三のパンチには、仮に大振りであっても
「ぶっ倒してやる」という意志が現れているし、徳山昌守やセレス小林の動きの
中には、意味のないものなど一つもないかのようにさえ思える。そしてそういった
パンチこそが、人々を感動させたり感嘆させたりするのではないだろうか。

中島は世界2位とランクの上では堂々たる「期待の俊英」ではあるが、僕は
仮に近々世界挑戦が実現しても、彼に何も期待する気が起きない。と言うか
期待させるだけの「魅力」が全く感じられないのだ。それは勝つとか負けるとか、
そういった問題以前の話だ。極端な話、彼が世界を獲ろうが、何回防衛しようが、
そのボクシングが変わらない限り僕は彼に何の興味も湧かないだろう。


何か文句ばかり書いてしまったが、それでも、例えド深夜でもボクシングが
テレビで見られるのは僕にとっては非常に楽しみなことだ。地方のファンに
とっては、雑誌でしか見たことのない選手が動いている姿を見られるだけでも
幸せなことなのである。テレビ局の皆さん、地方のファンは常にボクシングを
見ることに飢えています。だからもっとボクシングを見せてください!!
ホントは中島の試合でも何でもいいんです! よろしくお願いします・・・。