久しく人気低迷が言われている日本のボクシング界だが、そういった状況に
さすがに危機感を覚えたのか、ここ数年、業界も人気回復のために努力している。
少しづつだが、いい方に変わりつつあるような空気を感じるのだ。
最近の例で言えば、長谷川穂積と新井田豊が揃って防衛を果たした
「ワールド・プレミアム・ボクシング」の企画。ダブル世界戦は過去にも
たくさん行われてきたが、数だけではなく質や話題性でも勝負していきたいと
いう関係者の意気込みが強く感じられたイベントだった。
それ以前にも、地道だが有効な努力はあった。好カードの提供がそれである。
東洋チャンピオンや世界ランカーに勝って世界ランクを手に入れたら、
国内のライバルには目もくれず、さっさと世界挑戦。それが従来多く見られる
やり方だった。しかしそれではボクシングファンからの知名度も得づらいし、
どういう選手かもあまり分からないようでは応援にも熱が入らない。
そこで重要となってくるのが、国内の有力選手との対戦なのだ。
日本人の世界ランカー同士が雌雄を決し、勝った方が世界へと駒を進める。
それによってファンに実力を示すことができるし、文字通り「日本の代表が
世界に挑む」という形になり、ワクワクしながら世界戦の日を待つことが
できる。仮に世界戦で敗れたとしても、既にある程度の実力は示していた
わけだから、相手が強すぎたと納得もできるだろう。
先に名前を挙げた長谷川も、東洋チャンピオンでありながら鳥海純との
世界ランカー対決に臨み、その力を全国に知らしめてみせた。あのウィラポンを
下して世界王座に就いたのは、その次の試合だった。
少し前までは、そんな話も非現実的に思えたものだ。1998年、当時
世界ランカーだった畑山隆則が日本チャンピオンのコウジ有沢に挑んだ一戦は、
世界タイトルマッチ並みの大会場で行われ、ファンの大きな関心を呼んだ。
その注目度の高さはもちろん両者の人気に起因している部分もあるが、
当時の日本でいかに国内ライバル対決が少なかったかということの証明でも
あると思う。ちなみにその試合に勝った畑山は、次戦で見事に世界タイトルを
獲得した。こういったカードで快勝すれば、選手に自信や勢いも付くのだろう。
何も国内のライバルに限らないが、実力者を避けて「噛ませ犬」とばかり
試合をしていては、いざ世界のリングに上がった時、本当の自信は持てない。
そんな中、いま現在注目に値するのは、最軽量級であるミニマム級の動きである。
WBC王者イーグル京和への挑戦がほぼ内定している中島健は、世界ランカーとの
2連戦に勝利を収めた上でこの世界挑戦権を得ている。中島はそれ以前にもロデル・
マヨール、チャナ・ポーパオインといった強豪と対戦し敗れてはいるが、それも
大きな糧となっているのだろう。
また、かつてイーグルに挑戦し惨敗した日本王者の小熊坂諭だが、その後は
金田淳一郎、三澤照夫といった世界ランカー相手に連勝している。さらに
この11月には、再び金田の挑戦を受けるという。その金田のコメントがまた
奮っている。自分は世界ランカーだが、小熊坂に負けたまま世界挑戦をするのは
納得行かないと言うのだ。もしこの試合でどちらかが印象的な勝利を収めることが
できれば、世界挑戦のチャンスはすぐに巡ってくるはずだ。
WBA王者の新井田豊は、「日本人同士の世界戦はやりたくない」と言っている。
それよりも、海外の強豪の挑戦を受けていきたいのだという。見上げた姿勢である。
(新井田自身も含め)安易に世界へ挑戦できてしまう日本の現状を知っているが故に、
日本人との対戦では気持ちが盛り上がらないのだろう。
一つ上のライト・フライ級は昨今盛り上がりを欠いていたが、久々に胸踊る
ニュースが聞かれた。日本ランク6位の戎岡淳一が、何と元世界王者で現在は
世界2位にランクされているピチット・チョー・シリワットにKO勝ちしたのだ。
元々負けの多い選手で、ピチット戦もダウンを奪われた後に開き直って打ち合った
末の逆転KOということで、その実力に太鼓判を押すのはまだ早計かと思われるが、
面白い存在が現れたことには変わりない。その戎岡も、すぐに「世界」とは言わず、
まずは日本タイトルを目指す方針のようだ。賢明な選択だと思う。
不景気により安易な「博打」が打ちづらくなったせいもあるかもしれないが、
日本のボクシング界は地味ながら着実に力を蓄えつつある、今はそんな時期に
あるように思う。近い将来、この努力が実を結び、ファンが心から世界に誇れる
ボクサーが何人も登場する日が来ることを願いたい。
さすがに危機感を覚えたのか、ここ数年、業界も人気回復のために努力している。
少しづつだが、いい方に変わりつつあるような空気を感じるのだ。
最近の例で言えば、長谷川穂積と新井田豊が揃って防衛を果たした
「ワールド・プレミアム・ボクシング」の企画。ダブル世界戦は過去にも
たくさん行われてきたが、数だけではなく質や話題性でも勝負していきたいと
いう関係者の意気込みが強く感じられたイベントだった。
それ以前にも、地道だが有効な努力はあった。好カードの提供がそれである。
東洋チャンピオンや世界ランカーに勝って世界ランクを手に入れたら、
国内のライバルには目もくれず、さっさと世界挑戦。それが従来多く見られる
やり方だった。しかしそれではボクシングファンからの知名度も得づらいし、
どういう選手かもあまり分からないようでは応援にも熱が入らない。
そこで重要となってくるのが、国内の有力選手との対戦なのだ。
日本人の世界ランカー同士が雌雄を決し、勝った方が世界へと駒を進める。
それによってファンに実力を示すことができるし、文字通り「日本の代表が
世界に挑む」という形になり、ワクワクしながら世界戦の日を待つことが
できる。仮に世界戦で敗れたとしても、既にある程度の実力は示していた
わけだから、相手が強すぎたと納得もできるだろう。
先に名前を挙げた長谷川も、東洋チャンピオンでありながら鳥海純との
世界ランカー対決に臨み、その力を全国に知らしめてみせた。あのウィラポンを
下して世界王座に就いたのは、その次の試合だった。
少し前までは、そんな話も非現実的に思えたものだ。1998年、当時
世界ランカーだった畑山隆則が日本チャンピオンのコウジ有沢に挑んだ一戦は、
世界タイトルマッチ並みの大会場で行われ、ファンの大きな関心を呼んだ。
その注目度の高さはもちろん両者の人気に起因している部分もあるが、
当時の日本でいかに国内ライバル対決が少なかったかということの証明でも
あると思う。ちなみにその試合に勝った畑山は、次戦で見事に世界タイトルを
獲得した。こういったカードで快勝すれば、選手に自信や勢いも付くのだろう。
何も国内のライバルに限らないが、実力者を避けて「噛ませ犬」とばかり
試合をしていては、いざ世界のリングに上がった時、本当の自信は持てない。
そんな中、いま現在注目に値するのは、最軽量級であるミニマム級の動きである。
WBC王者イーグル京和への挑戦がほぼ内定している中島健は、世界ランカーとの
2連戦に勝利を収めた上でこの世界挑戦権を得ている。中島はそれ以前にもロデル・
マヨール、チャナ・ポーパオインといった強豪と対戦し敗れてはいるが、それも
大きな糧となっているのだろう。
また、かつてイーグルに挑戦し惨敗した日本王者の小熊坂諭だが、その後は
金田淳一郎、三澤照夫といった世界ランカー相手に連勝している。さらに
この11月には、再び金田の挑戦を受けるという。その金田のコメントがまた
奮っている。自分は世界ランカーだが、小熊坂に負けたまま世界挑戦をするのは
納得行かないと言うのだ。もしこの試合でどちらかが印象的な勝利を収めることが
できれば、世界挑戦のチャンスはすぐに巡ってくるはずだ。
WBA王者の新井田豊は、「日本人同士の世界戦はやりたくない」と言っている。
それよりも、海外の強豪の挑戦を受けていきたいのだという。見上げた姿勢である。
(新井田自身も含め)安易に世界へ挑戦できてしまう日本の現状を知っているが故に、
日本人との対戦では気持ちが盛り上がらないのだろう。
一つ上のライト・フライ級は昨今盛り上がりを欠いていたが、久々に胸踊る
ニュースが聞かれた。日本ランク6位の戎岡淳一が、何と元世界王者で現在は
世界2位にランクされているピチット・チョー・シリワットにKO勝ちしたのだ。
元々負けの多い選手で、ピチット戦もダウンを奪われた後に開き直って打ち合った
末の逆転KOということで、その実力に太鼓判を押すのはまだ早計かと思われるが、
面白い存在が現れたことには変わりない。その戎岡も、すぐに「世界」とは言わず、
まずは日本タイトルを目指す方針のようだ。賢明な選択だと思う。
不景気により安易な「博打」が打ちづらくなったせいもあるかもしれないが、
日本のボクシング界は地味ながら着実に力を蓄えつつある、今はそんな時期に
あるように思う。近い将来、この努力が実を結び、ファンが心から世界に誇れる
ボクサーが何人も登場する日が来ることを願いたい。