ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本S・フェザー級TM 本望信人vs大之伸くま

2005年10月01日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
「国内随一のテクニシャン」としての評価を不動のものに
しつつある安定王者の本望が、元日本フェザー級王者の大之伸を
迎え撃った一戦。

驚異的な手数が売りの大之伸が、予想通り出だしから積極的に攻め、
本望もいつも通りの素晴らしいディフェンスを披露する。
お互いコンディションも良く、好試合になりそうな予感が漂う。
特に、フェザー級時代は常に10kg以上の減量に苦しんでいたという
大之伸は、まるで水を得た魚のように動きがいい。

ところが試合は5ラウンド、本望の左眼上からの出血により、唐突に
幕を閉じてしまった。そして負傷判定により、本望が防衛を果たした。
本望は8度目の防衛。これは日本スーパー・フェザー級の新記録だ。

実は、このところの本望は毎回のように目を切っているので、今回も
いつ切れるのか内心ハラハラしていたのだが、やはりこのような結果に
なってしまった。勝った本望にも、敗れた大之伸にも不満の残る試合だったし、
お客さんもこれでは欲求不満だろう。パンチ力こそないものの、その技術レベルの
高さから「世界」も期待される本望だが、実力以前にまずこの切れ癖を何とか
しないことには今後が大いに不安だ。

かくいう僕も、本望のボクシングに魅せられている人間の一人だ。少し大袈裟
かもしれないが、その身のこなしは芸術的でさえある。更に大袈裟に言うなら、
ボクシングというよりも、芸術作品を見るような期待感で本望の試合を楽しみに
しているのだ。その優れた芸術が、こんな形で終わってしまっては本当に残念だ。