002)降れば降ったで困る雨

前号の民謡の「…一年は大水」とはなんでしょう。95年が典型です。7月中旬までは大旱魃だったのに、その後、雨が降りはじめ、8月末から9月にかけて長雨がつづきました。
この地方の農村には窰洞と呼ばれる土づくりの住居が多かったんです。屋根や壁に雨がしみて、つぎつぎ倒壊しました。6万世帯24万人が家を失ったんです。こんなことが10年に1度もあったらたまりませんけど、畑が流されるくらいはしょっちゅうです。
大同の年間降水量は400ミリほどですが、その3分の2は夏の2か月に集中します。そして、局地集中的な豪雨が多いんですよ。私も1時間70ミリの雨にであったことがあります。
木や草が少ないところにこんな雨が降ると、表土が流されます。水もそこにとどまることがありません。水と土が同時に失われることを、中国では「水土流失」といいます。黄土高原特有の光景に浸食谷がありますが、これも夏の雨がえぐったものです。
水土流失のたびに、土壌がやせ、作物や植物が育たなくなります。これが、黄土高原における沙漠化なんです。沙漠化といえば、雨が降らないというふうに考えるのが一般的です。そのとおりです。
でも黄土高原では、夏に集中する雨が沙漠化を加速する、という皮肉な現象があります。
この水土流失をどうやって止めるかが、黄土高原における沙漠化防止なんですね。
 【写真】長雨のためにつぶれた土造りの住居。降れば降ったで問題がおこる。
 (2003年2月5日号)
 
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