003)水の苦労

広霊県苑西庄村は、黄土丘陵の貧しい村です。いちばん困るのは、水が乏しいこと。
朝暗いうちに、男たちは天秤棒を担いで井戸にむかいます。順番が遅れると、土で水が濁ります。1日に汲める水は、村中の井戸をあわせてバケツ100杯。なくなったら、翌朝まで待つしかありません。
住民数は150人。私が「えっ、1人あたりバケツ3分の2杯!」と驚いたら、「家畜だっている」という答えがありました。
担いできた水は、水ガメにためて、浮遊物を沈殿させ、上澄みを使います。アルカリがきつく、そのまま飲むと下痢をするので、沸かして使います。
97年の夏、テレビ朝日の取材クルーといっしょに、農家に数泊しました。洗面器の底にツーフィンガーくらい水をもらいました。4人が交代で顔を洗い、最後の私が庭に撒こうと思って外に出たら、あるじがあわてて止めました。止められなくてもわかりましたよ。その家のヒツジとニワトリが駆け寄ってきたんです。
農村には風呂もシャワーもありません。ずぼらな私はしばらくはそれがいいんです。歯をみがかない、顔を洗わない、ヒゲを剃らない、からだを拭かない。限度は1週間です。昼間はいいんですよ、なんともない。夜、フトンにはいって、農家のオンドルで温められると、あちこちが痒くなって、眠れなくなります。私なんか、ほんとに軟弱なものです。
【写真】枯れていた谷底の井戸に水が出た。村中から水汲みに集まります。
 (2003年2月15日号)
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