079)オオカミがきた!

 03年冬のことです。私たちの実験林場「カササギの森」でオオカミの子がみつかりました。「子がいるからには親もいる。だいじょうぶか?」「いや、以前は人がオオカミを恐れたけど、いまはオオカミが人を恐れる」……にぎやかな議論になりました。
 その話を私が耳にしたときは、残念なことにオオカミはすでに死んでいました。それでもすぐに鷹嘴敦村の現場に駆けつけました。ジャガイモなどを貯蔵するための穴が農家の庭先にあります。直径60センチの穴を2メートルほど垂直に掘り、下のほうはずっと広くしてあります。オオカミはその穴に落ちたのです。
 腹ペコペコで、差し出されたマントウを一気に3個も食べました。人が生きるのもやっとの村ですからとても飼えず、友人に預けました。その友人も困って返してきたのですが、そのあいだに弱って死んでしまった。
 死体をみると、こどもとはいえ、さすがはオオカミ。キバもツメもすごくて、野生の迫力十分です。
 もともとこの地方にはオオカミが多く、人身事故も絶えなかったようです。しかし建国後の半世紀で激減してしまった。その後も近くで糞をみつけましたから、いるにはいます。でも、とても少ない。キツネやイタチなどもほとんどみかけません。
 これらの肉食動物や猛禽類がもう少しいれば、ノウサギやノネズミの害も減るんですけどね。なにごともバランスが重要です。
  (2005年7月15日号)
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