120)麺(めん)

 山西省は麺の故郷だといわれます。有名なのは刀削麺(とうしょうめん)。固く練った小麦粉の固まりを刃物で細長く削って、煮立った鍋に落としこみます。曲芸風のパフォーマンスもあって見ているだけで楽しい。
 麺といえば日本ではウドンのように細長いものですが、中国では粉にして食べるのはみな麺食で、饅頭(まんとう)も餃子(ぎょうざ)もパンも麺です。
 材料は小麦粉が多いのですが、蕎麦(そば)や▼麦(ヨウマイ=ハダカエンバク)の麺もあります。▼麺(ヨウミェン)は栄養豊富で腹持ちがいいといって農村の人の大好物です。食堂のメニューの「▼麺魚」をどんな魚かと思って注文したら、泥鰌(どじょう)のような形に練った▼麺がスープのなかを泳いでいました。
 大同では豆もよく麺にします。一般的なのは豌豆(えんどう)麺で、ウドンのように細長くせず、猫の耳のような形にします。豌豆といっても草丈も莢も豆も極小で、収量はとても少ないそう。
 もっとも美味なのは扁豆麺(ビェンドウミェン)だと聞かされてきました。小さいんですね。雑草のカラスノエンドウを一回り大きくしたくらいの平たい豆。種をもらって私たちの苗畑にまこうと思ったら「いい土地にはもったいない。豌豆より収量がずっと少ない」といわれました。
 今年の夏、私は15年目にして初めてごちそうになりました。ホームステイした家の主婦が、粉をよく練って薄く伸ばしてから、包丁で切って手打ちそばのようにしてくれました。あっさりした味がとてもおいしかった。
 【写真】よく練った扁豆の粉を薄く伸ばし、包丁で切って手打ちそばのようにしてつくる。
 ▼の字は「くさかんむり」に「悠」の上半分です。中国の簡体字ではくさかんむりがありません。
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あの家の麺と果実 (美川圭)
2006-10-29 22:55:08
高見さん、こんばんは。あの麺おいしかったですね。高見さんが15年目にしてはじめてとは、私は相当にラッキーだったわけです。帰りにあのお宅で沢山果実をもらったのですが、当日食べたら少々酸っぱかったのですが、少し時間がたつと甘みがまし、これも美味の極みでした。リンゴの小さいような種類だったのですが、あれは何だかご存知ですか。
 
 
 
夏果といっていました。 (高見)
2006-10-30 07:07:42
美川さん、コメントありがとうございます。この2回の大同訪問のこと、新著(『院政』(中公新書))に書いていただき、ありがとうございます。あそこに書いてある応県木塔はことしが生誕950年で、地元では盛大なイベントが開かれました。古さで言えばもっと古いものがあるでしょうが、高さでは現存する木造建築で世界一だそうです。法隆寺の宮大工・西岡常一さんもあの塔のことを法隆寺の五重塔と比較して書いていましたね。

豌豆麺は大同市内でも食べることがありますが、あの扁豆麺は、名前はしばしば聞くものの、食べたのは初めてでした。ほかの家に泊まった人が食べたのも、豌豆麺だったようです。

あの小さなリンゴのようなのは、「夏果」と地元の人は呼んでいました。同じようなものをほかの村でも食べたことがあり、そのときは別の名で聞いたように思います。ですから地方名なのかもしれません。
 
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