028)アンズが育つまで

 貧しい村には小学校にもいけない子がいるのを知って、小学校付属果樹園の建設を計画しました。植えたのは、主にアンズです。
 渾源県呉城郷は成功例の1つです。最初に協力したのは94年でした。資金が乏しかったので、5ヘクタール、4千本ほどだったのですが、地元の村はそれも励みとして6百ヘクタール、50万本まで拡大してきました。耕地全体の半分にあたります。
 呉城郷は黄土丘陵にあって、土壌浸食が激しいため「三逃の畑」と呼ばれます。雨のたびに、土が逃げ、肥料が逃げ、作物まで逃げるというわけです。アワ、キビ、ジャガイモなどをつくっても、1ムー(6・7アール)あたりの収入はせいぜい百元。
 そこにアンズを植えたのですが、育つまでには苦労が多かったんですよ。まずはノウサギの食害。直径1センチ以下の苗は、刃物で切ったようにスパッとやられる。それより太くなると、樹皮をかじるんです。形成層をグルリとやられると、苗は枯れるだけ。
 対抗して忌避材を苗に塗ります。農薬なら効果的ですが、死んだウサギを人が食べたらたいへん。たいていは石灰にブタの血や脂を混ぜたものです。ちょっとでも塗り残しがあると、そこがやられます。まるで「耳なし芳一」の世界。すると村の人は、インスタントラーメンの空き袋をくくりつけて防衛する。山ひとつ越えた村で、私たちは6万本を全滅させられた経験があります。
  (2003年11月15日号)
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