1291話)広霊県苑西庄村(8)

掘りに掘って176mにもなり、この県でいちばん深い井戸になりましたが、幸い水がでました!

実際に水がでてしばらくたってからですが、苑西庄村で通水式がもたれました。村の人は全員が集まり、出稼ぎにでている人や、結婚して村をでた女性たちもこの日は村に帰って出席したそうです。

「もらい水の歴史に終止符が打たれた!」「長生きはするものだ、こんないい日にめぐり合えるとは!」といって、一人の老人は涙をぬぐおうともせず、私の手を固く握って離しませんでした。

ポンプのスイッチがはいると、勢いよく水が吹き出しました。村の人たちは思い思いの容器で水を受けて飲みます。

私にも「さあ、飲んでくれ!こんな甘い水は飲んだことがない」といってその水が差し出されました。

私は大同で生水は飲まないことにしています。ツアー参加者にもそのようにお願いしています。有害なものはなくても、この地方の水は硬度が高いので、軟水になれた日本人が飲むと下痢をします。

でも、このときだけは飲まないわけにはいきません。気分が高揚していたおかげでしょうか、私もなんの異常もありませんでした。

その夜、県の打井隊の隊長と酒を飲み交わしながら話しあいました。「あなたたちはいいことをしました。このような高所の村では井戸や湧き水が涸れるのが相次いでいる。水に困るような村は素寒貧で、井戸を掘るお金なんてない。水のない暮らしのたいへんさは自分たちがよく知っているから、お金にならなくても掘ってやりたい。でも、自分たちも給料の遅欠配があるくらいで、それもできない」と。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 1290話)広霊... 1292話)広霊... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。