009)耕して天に至る

 飛行機の窓からみた黄土高原はとても印象的です。山や丘陵に地図の等高線が描かれ、その光景がどこまでもつづくのです。
 地上でみるとナゾが解けます。段々畑なんです。等高線にみえたのは畑のアゼ。可能なところはどこも畑に変わり、山の稜線に迫っているところもあります。
 もとは丘陵や山の傾斜に沿った斜面の畑だったものを、雨による土壌浸食を軽減するために段々畑に改造してきました。60?70年代の「大寨に学ぶ」運動でこの改造に拍車がかかりました。「耕して天に至る」というのは、誇張ではありません。
 山地の畑のなかには一枚が一畳もないものもあります。ネコならぬネズミの額です。石垣を積み上げ、土をほかから運び込んできたところもあります。土が浅いために段々畑に改造できず、30度近い斜面の畑もあります。
 なぜこんなところまで、と思うんですけど、それだけ人口が多いんですね。乾燥地のうえに土壌浸食が激しく、生産性はとても低いのです。地元では「三逃の土地」とさえ呼びます。土が逃げる、肥料が逃げる、作物が逃げる、というわけです。
 そのような光景をみても、以前の私は「中国の農民は勤勉で偉大だなあ!」と、ただただ感動していました。なにもわかっていなかったのです。
 環境の視点でみると、それこそ自然の大破壊であり、農村の貧しさの象徴でもあります。
 【写真】雨のたびに水が逃げ,土が逃げ,肥料分が逃げるという「三逃の畑」。
 (2003年4月15日号)
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