071)山のかなたの自然林

98年夏のことです。霊丘県の技術者の李向東が「自然林があり、こんな太い木があります」といって、一抱え以上のポーズをとります。私たちの代表=立花吉茂さんにいわれて、周囲の植生を調べていました。しかし、にわかには信じられません。
 「遠くない。村から2里ほどです」といいます。中国の2里は1キロ。すぐにでかけました。歩き疲れて、途中でであった村人に尋ねると「すぐだ、2里ほどだ」。また歩いて歩いて、であった人にきくと「あと2里だ」。いつまでたっても辿り着けないので、途中で諦めて引き返しました。地元の人の距離、方角、時間の感覚をあてにするとひどい目にあいます。地図なんかと無縁に育ってますから、しかたがない。
 でも、森林がありそうなことはわかりました。山の上から60キロものタキギを背負った老人が飛ぶようにかけおりてきたのです。老人といっても実際の年齢は私と同じくらいでしょうけど、同じ人間とは思えないくらい。そのなかにシラカンバ、ナラなどが混じっていました。
 日を改め、昼食の準備をして、朝早くからでかけました。地元の農民がたくさんのビールを背負ってくれるので、「不要!」といっても「ゆっくり歩くから平気だ」といいます。彼が先頭に立ち、遅れる私たちを気づかって、ときどき引き返してきます。私も山歩きにはちょっとした自信をもっていたんですけどね……。
  (2005年4月15日号)
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