1338話)私のこどものころ ヨボリ

 ヨボリ

 ネコがさかなについて書くと、一回では終われません。父親はよくヨボウにいっていました。ワクチンではありません。どうも夜ボリのようで、暗くなってからカーバイトランプをもって、海に行くんです。そして、いろんなものをつかまえる。

 いちばん目当てにしたのはタコで、川で捕まえたモクズガニを竹竿の先につけ、それで海岸の岩のきわをさぐると、カニを狙ってタコが出てくる。それをカギにひっかけてつかまえ、ゆでて食べます。多いのはアシナガダコで、頭が小さく、足の長いやつ。
 
 それ以外にもいろんなものが的になります。ワタリガニ、ナマコ、ウニ、シタダメ(イシダタミ)。大きくなってからは私もそれについていったんですけど、そのころからカーバイトランプが懐中電灯に変わったのでしょうか。性能が向上して明るくなったのです。海面を小さなイワシが群れをなして泳ぐんですけど、青く光ってほんとにきれいだった!

これは忘れることができなくて、この歳になっても実家に帰ると、暗くなるのを待ちかねて海にでかけます。いちばんの目当てはシタダメですね。お金さえだせば、たいていの貝が手にはいりますけど、これはだめ。子どものころに覚えたこの貝の味は格別なんですよ。シタダメは総称で、そのなかにいくつもの種類があり、形と味がちがい、場所も棲み分けています。

それからウミウシ。アメフラシですね。これを最初に食べた人はえらいと思います。グニュと大きくても大部分は海水ですから、そこで殺して水を抜き、小さくなったものを持ち帰って軽くゆで、それを刻んでから醤油で煮ます。

この味を表現するのはむずかしいですね。似たものがほかにありません。私がおいしそうに食べるのを、つれあいは気味悪そうにみています。
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