162)事前の整地作業

 まもなく植樹のシーズンです。冬が寒くて長い大同では3月下旬まで大地が凍るため、植樹の適期は凍結が融けてから苗木の芽が動き始めるまでのごく短期間。植林面積は広いので、効率よく植えないといけません。
 そのための工夫が前年夏、雨の時期の整地作業です。丘陵の斜面に等高線に沿って3メートル間隔に幅60センチ、深さ25センチの溝を掘り、その土を溝の下手に盛りあげ、土手を作ります。黄土は乾くと固いのですが、水で湿ると柔らかくて作業が簡単。降った雨は溝に集まって土中に保存され、秋からの低温で蒸発が抑えられ、冬は凍ってしまいます。
 マツの苗は溝の底に1メートル間隔に植えます。これでヘクタールあたり3300本。整地のときに溝の底の土を耕してあるので手早く作業できます。そして苗を植えるころから凍結水が融けて苗の活着を助けます。黄土高原では「春の雨は油より貴重」といわれるほど春は雨がないので、前年の雨を上手に利用するわけです。
 それともうひとつ。乾燥地では南向きの日向斜面は乾燥がひどく植物が育ちにくいのです。ところが大同の山は北斜面は切り立っていて面積が狭く、すでに緑化は終わっています。これからの課題は面積が広く緑化の難しい南斜面。ところで南斜面でこのような整地をすれば、溝と土手とでできる土の壁が人工の北斜面になります。地元が生み出した優れた草の根の技術です。
 【写真】夏の雨の時期の整地作業。これによって活着率がまったくちがってくる。
 (2008年3月25日号)
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